カカの天下123「よーよーねーちゃんお茶と桃でもどうよ」
「カカすけ。そういや君、携帯買ったんだって?」
「うん」
おはようございます、カカです。
今は登校中。いつもの交差点で合流した私たち仲良しトリオは今日も一緒に歩いてます。
「番号とアド教えなさいよ」
「わ、ダイレクトなナンパ♪」
「ナンパちゃうわっ」
「ダメだよサユカちゃん、ナンパで番号聞いたりするならまず喫茶店とかに誘わないと」
「そんな具体的なアドバイスもいらんっ、ていうかまたナンパ話か」
「や、悪いねサユカン。ケーキなんか奢ってもらっちゃえるなんて」
「言ってないっ。いい加減にしないとわたしの番号教えないわよっ」
「いいよ別に」
「……え」
あっさり返すと、サユカンは一瞬だけ寂しそうな顔をした。
「じゃサエちゃん、番号とアドレス教えて〜」
「うん、いいよ」
「あ、う……」
ああ、なんかどんどん寂しいオーラが高まってる、
「へー、サエちゃんのアドレスおもしろい」
「これ好きなの。ぬめぬめしてていいよね」
「私的にはべちょべちょって感じだけど」
「……ね、ねぇ。あの……」
おずおずと声をかけてくるサユカン……あああ、やばい。
「……ごめん、その、私にも、おしえ」
「かっわいいなぁサユカンはっ!」
なんか我慢できずに抱きついたっ!
「可愛いよねぇ」
それに便乗してサエちゃんも抱きついたっ!
「ちょ、やめっ、バカにしてるでしょあんたらっ!?」
「バカを可愛がってるんだよー」
「バカって言うなっ!!」
「最初に言ったのはサユカちゃんなのにねぇ」
「バカって言ったほうがバカって言ったほうがバカって言ったほうがバカって言ったほうがバカって言ったほうがバカって言ったほうがカバって言ったほうがバカって聞いたほうがバカって言ったほうがバカなんだよ。さぁ、どっちがバカでしょう」
「……え、えーと……ってわかるかぁっ」
そんなふうに三人でじゃれ付いていると……後ろから忍び寄る影がっ。
「こら、なーに小学生が携帯持ち歩いてんだ、生意気な」
ひょいひょいと器用に私たちから携帯電話を取り上げたのは……テンカ先生っ。
「没収」
「か、返してくださいっ、その、学校では使いませんから」
サユカンは慌てているけど、私とサエちゃんはこの担任の先生の性格をよく知っている。携帯を持っている、という理由だけで没収したりはしないのだこの人は。
その証拠に……先生は無遠慮に私ら三人の携帯の画面を見たあと、深々とため息をついた。
「ったく、つまんないなぁおめーら。誰か好きな男の写真でも待ち受けにしてる英雄はいねーのか?」
「あ、この人は後々それやる予定です」
「ちなみに相手はカカのお兄さんです」
「へっ、わ、わたし!?」
サエちゃんと二人してずびっとサユカンを指差すと、テンカ先生は満足げに頷いた。
「ん、ならよし。合格。ほれ」
ほいほい、っと携帯を投げてよこしてテンカ先生は颯爽と去っていった。
「待ちうけにしたら見せろよー」
そんな捨て台詞を残して。
「なに、あの先生……」
「フランクな感じでいいでしょ。おもしろければなんでもオッケーな人だよ」
「人気あるんだよー」
呆然とするサユカンの顔が結構かわいかった。
「じゃ、トメ兄の盗撮作戦でも練ろうか」
「まず、トメお兄さんがお風呂に入ってる間に」
「ちょ、ちょっと待ってよっ。そんなことするなんて――」
「トメ兄の裸、見たくないの?」
実はもうあるけど、いざというときのためにとっておこう。
「……………………み、みたいわけないでしょ」
「あ、今の間で想像したね」
「絶対したねー♪」
「ししししてないっ! 何を証拠にそんな」
「お尻おいしそうだった?」
「桃みたいだった……ハッ!? ち、ちが、そうじゃなくてっ」
そんな感じで騒ぎまくりながらの登校でしたとさ。