カカの天下122「風吹き誕生、激写ガール」
「で、姉。どういう風の吹き回し?」
どうも、カカです。
いきなり携帯を買ってくれると言い出した姉と、ただいま一緒に携帯ショップにいます。
「どういうって、そりゃ風の吹くまま気の向くままにだし」
「……どういう意味?」
「風が吹いて回るのに理由なんてないよ」
……ほんと、わけわかんない。
でもまぁ、姉の頭の中って何が出てくるかわからないびっくり箱みたいなもんだし、行動の理由をいちいち聞くだけ無駄か。たぶんいつもの思いつきの気まぐれでしょ。
「でさ、カカちゃんはどんな携帯ほしい?」
「んー……私、よくわかんない」
トメ兄が使ってるのは見たことあるけど、自分のは持ったことないし。
「じゃ、店員に聞いてみようか。すいませーん」
「はいはーい」
お姉が無駄にでかい声で叫ぶと、営業スマイルビームが眩しい店員さんの登場だ。
「どんな機種をお探しですか?」
「んとね、頭悪いガキでも使えるやつお願いします」
オイコラ。
「そうですね……こちらなんかどうでしょう? 主に頭のイッちゃってる老人が、いざというとき助けを呼ぶためだけに使う機種ですよ」
どんな機種なのさ。
「んー、それじゃつまんないな。なにせおしめ取れたばかりみたいなチビスケだからさ、遊べるやつのほうがいいかも」
コノヤロウ。
「ではこちらはどうでしょう。ハナタレ小僧もハナがタレなくなるほど扱い方が優しい機種ですよ」
だからどんな機種なのさ。鼻炎薬でもついてるのかその電話。
「ハナはタレないんだけど文句ばっかタレるんだなこれが。まったく誰に似たのやらねー」
自分で認めてるみたいで言いたくはないがあえて言おう。
似たとしたら間違いなくアンタだ。
「あぁ、いますよねー文句たらたら目元はタレタレ口元はデレデレなクズ客とか。客商売も楽じゃありません」
姉といい勝負の口汚さだなー店員さん。
「あんたいい口してるね。今度飲むか?」
「いいですねー」
なんか仲良くなってるしっ!?
「でさ、冗談はこのくらいにしておいて」
「えー、もっと冗談言いましょうよ」
なんつう店員だ。
「今度飲みの席でいくらでも言おうよ。それで、小学生にも使える携帯って――」
本当に冗談はきっぱりやめたそうで、この後は驚くほどぽんぽん話しが進んだ。
どうでもいいけど姉と二人だと私ツッコンでばっかりだなぁ。
そして……
「トメ兄、ただいま!」
ちょっと遅くなったけど帰宅! そしてBダーッシュ!
「激写っ!!」
「うああああ!!! 戸を閉めろおおおおお!!」
毎度おなじみ、トメ兄の裸です。これで永久保存!
「なんでおまえはここのとこ僕の風呂中に殴りこんでくるんだ!?」
「トメ兄の身体が忘れられなくて」
「変なこと言うなっ……ん、携帯? それ、僕のじゃないよな」
「うん、姉に買ってもらった」
トメ兄は不思議そうに首を傾げた。
「なんでまた」
「や、理由は教えてくれなかったけど」
「……なぁ、カカ。部屋に戻ってみ」
「なんで?」
「姉がいきなり優しくなるときは、大抵なにか壊したりしたのを誤魔化そうとするときだ」
さすが私より姉と付き合い長いだけはある……って、ええ!?
私はダッシュで自分の部屋へ戻った。そして視線を巡らす。
さして変わったところは……あ。
ああ!!
そんな……
「なんかなくなってたか?」
腰にバスタオルを巻いてトメ兄に、私は肩を落として答える。
「ない……」
「なにが?」
「トメ兄の恥ずかしい写真集……」
「……は? はぁ? はああああ? なんでそんなもんおまえが、というかあの姉それをどうするつもり、というかどんな写真だ!! うわツッコむところが多すぎる!!!」
「ああ……私のにこにこ脅迫材料が」
「にこにこできねぇよ!」
仕方ない、また作るか。
「激写!」
「バスタオルをめくるなあああああ!!」
ともかく、私は携帯をゲットした!