カカの天下121「別に雌雄は決さない」
「おっすーってあれ、カカすけは?」
「用事あるからーってすぐ帰っちゃった」
こんにちわ、サユカです。
今日もいつも通りカカすけたちと帰ろうと隣のクラスにきたのですが、サエすけしかいませんでした。
「そんな寂しそうな顔しなくてもー私がいるじゃない♪」
「へっ、いや別に寂しくはないよっ。いつも顔合わせてるじゃん!」
「そうだよねー。昼休みも給食を食べ終わったらすぐにこっちくるもんね。そんなにカカちゃんが好き?」
「……いや、別に、カカだけって、わけじゃ……ってこらこら無言で抱きついてくんなー!」
ああもう、ほんとこの二人には敵わない。
不本意ながらわたしはカカすけとサエすけにからかわれる日々を送っているんだけど……カカすけに似てきたと噂されるサエすけにも結構はっきりとした違いがある。
カカすけは過激で、おもしろい。
サエすけは、なんというか……いやらしい。
「じゃー、今日はサユカちゃんちに行こうか」
「む……まぁ、いいけど」
「ぬいぐるみ増えた?」
「なぜ知ってる!?」
「気まずそうな顔したから」
鋭い……うぅ、またからかわれる。
じゃあカカ達と付き合わなければいいって? いや、それは、それよ。
「今度はどんなぬいぐるみ?」
「……恐竜さん」
「恐竜、さん?」
「な、なによ」
「さん?」
「……なによぅ」
「さん♪」
「頭を撫でるなぁ!」
そんなこんなで帰り道。
「でさ、カカすけの用って何なんだろ」
「んとねー、お姉さんに携帯買ってもらうんだってー」
「ああ、そういえばカカすけもってなかったっけ」
「サユカちゃんは持ってるの?」
「持ってるよ。サエすけも持ってたのか」
「ダメだよサユカちゃん。ナンパしたときはすぐに相手の番号とか聞かなきゃ」
「誰が誰をナンパしたって?」
「サユカちゃんが私たちを」
「ナンパじゃないっ。ケンカしかけたんだっ」
微塵もケンカにならなかったけれどもさっ。
「まーまー。そんなのどうでもいいから番号教えてよー」
「むぅ……いいけどさ」
ぽちぽちっとな。
「じゃサユカちゃんのアドレス帳の分類は……人妻で」
「ちょと待たんかい! 誰が人妻だって?」
「トメお兄さんの」
「サエすけ、君ねぇ……ぐっじょぶ!」
「でしょ」
でも『人妻』なんて分類されるのわたしだけなんじゃないか? フォルダの無駄遣いのような……
「じゃあサエすけの分類は……えっと」
「親友?」
「うぐ」
「親友がいいなぁ」
「し……し……」
にこにこ笑いながらわたしの手元を覗き込んでくるサエすけ。
特にアドレスをフォルダに分類していない私は、ちょうど新しいフォルダを作るところだった。そのフォルダの名前を打つところで止まってるんだけど……
言われるままに『し』を入力したけど……流されるままそんな分類にしていいものか……恥ずかしい。でも……
「私たち、親友じゃないの!?」
「あーうるさいなっ! わかったよ」
ぽちっとな!
『死友』
……間違えた。
「……こわいよー。サユカちゃん」
「や、なおすなおす」
『私有』
「私、サユカちゃんのもの?」
「間違えただけだって!!」
そんな感じで騒ぎながら、最後にはちゃんと『親友』の分類で落ち着いた。
……別に嬉しいわけじゃないよっ。