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カカの天下  作者: ルシカ
120/917

カカの天下120「父の日はうまい棒」

「ちょっと寄り道していい?」


 こんにちわ、カカです。


 いつも通りにサエちゃんとサユカンのトリオで帰っている途中で、サユカンがそんなことを言い出しました。


「いいけど、どこいくの」


「商店街いきたいのよ」


「何か買うものあるのー?」


「ほら、今日って父の日じゃん。だからなんか買っておこうかと」


 父の日……ああ、だから帰りのHRで先生が『お父さんに日頃の恨みをはらしましょう』って言ってたのか。


「で、どうやって恨みはらすの?」


「……は? カカすけ、あんた何言ってんの」


「うちのクラスの先生がね、今日は父親に恨みはらす日だって」


「テンカ先生の家、仲悪いらしいからねー」


「ああ、今年から入った先生だっけ」


「愉快な先生だよー。サユカちゃんも私たちのクラスくればよかったのにね」


 うん、前の先生はやたらのんびりした先生だったけど、今回のテンカ先生は程よくテキパキ、程よくだらだらで結構いい感じだ。


「こ、こっちの先生だっていい感じよ! もう老いぼれてて、わたしら小四なのに足し算教えようとするんだから!」


「それ、いい感じにボケてるんじゃん」


「サユカちゃん、まだそんなこと習ってるから成績悪いんだねー」


「うっさいな! 最初にちゃんとツッコんでるから普通に授業受けてるわよっ」


「せ、先生にツッコんでるんだ」


 さすがトメの追っかけ。ツッコミ志望か。


「でもさ、普通に授業受けてて成績悪いなら、サユカンって普通に頭がわる――」


「でさ、あんたらも父の日のプレゼント買いなさいよっ」


 む、強引に話を戻した。


「プレゼントと言っても……私のお父さんとは、会えない状態だしなー」


 サエちゃんが呟き、サユカンが「げ」とまずいことを言ったみたいに口つぐんだ。


 あれ? お父さんと会えないって……? 


「ねえ、サエちゃん。それって」


「か、カカすけは!? お父さんに何か買ってあげないの?」


 む……? サユカンなに慌ててるんだろ。ま、いいか。


「お父さんねぇ……まぁ、何か買ってあげてもいいけど」


「そういやさ、わたしら何回もカカすけの家に行ってるけど、ご両親に会った事ないわね」


「そういえばそうだねー。トメお兄さんしか見たことないよ」


「…………」


「れ? どしたカカすけ」


「カカちゃん?」


「…………?」


 首を傾げる。


 んん?


 んんんんんん?


 あ。


「そういや私、お父さん見たことない!!!」


「「ぅおい」」


 びしっ、と二人にツッコまれた。




「トメ兄いいいいいいいいいいいいいい!!!」


「なんだ妹」


 トメ兄が仕事から帰ってきて一番、私は突進した。


「妹とびひざげり!」


「ぐはぁ! ……な、なにする」


「大変だよトメ兄!」


「僕のみぞおちのほうが大変だよ……なんでいきなり攻撃を」


「大変さを表現したかったんだよ!」


 トメ兄はなぜか口をひくひくさせた。


「へぇ……そうかそうか。この後おまえにもっと大変なことしてやるから覚悟しろ。それで何が大変なんだ」


「ねえ、私にお父さんっているの!?」


 トメ兄はきょとんとして私を見た。


「そりゃいるよ」


「どこに!?」


「どこにって、この家に住んでるじゃん」


「うそっ!? 私見たことないよ! っていうかどこに住んでるの!?」


「どこって、両親用の部屋あるだろ。開かずの部屋」


「あそこ!? でも見たこと……や、待って。んー……? 考えてみれば何年か前まで四人でこの家住んでたような……」


「ああ。僕が就職してから、両親とも「仕事頑張るー」って言って留守がちになったからな。でも母さんはともかく、父さんならわりと家にいるよ」


 ……や、でも開かずの間に住んでるって、どうやって出入りしてるの、ていうか私が見たことないって……


「お父さんって、なにしてる人?」


「忍者」


 ……は? ちょいとこのお兄さんマジな顔してナニをぱっぱらぱーなことを。


「あ、ほら。カカさー、このまえ僕にテレパシーでツッコむなとか言ってたじゃん。その声、たぶん父さんだよ」


「あれかああああああああ!!!」


 私はあまりの事実に珍しく絶叫した。


「あ、あのさ、父の日だから何か買ってあげようかと思ったんだけど」


「それはいいことだな。置手紙でも書いてテーブルに置いとけばいいよ。いつのまにか消えてるから」


 ……へー、忍者だったんだ、お父さん……


 ……あれ、じゃお母さんってなにしてる人なんだろ……いや、ダメージ受けてる今聞くのは怖いから、今度聞いてみよう。


「……なにあげたらいいと思う?」


「父さんはうまい棒好きだから、詰め合わせでも買ってやれば?」


 こうして私のプロフィールに『うまい棒忍者の娘』という項目が加わった。

 

 どんだけ〜。


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