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カカの天下  作者: ルシカ
118/917

カカの天下118「常識定食」

「トメ兄、質問」


「うぇあ!?」


 どうも、カカです。


 ふと覚えた疑問を確かめるべく、お風呂場で頭をわっしゃわっしゃ洗っているトメ兄に直撃インタビューです。


「ばか、戸を閉めろ!」


「いいじゃん別に。ここからだと前は見えないし」


 トメ兄は戸にいる私に背を向ける形で頭を洗っています。お尻は見えますぷりんぷりん。


「だからってな、おまえ人の裸を」


「なにさ、トメ兄だって私の裸さんざん見てきたでしょうが」


「一緒にお風呂はいろうって、誰かさんが毎回せがんでたからな。あれ、いつが最後だっけ。たしか――」


「わーわーわー!!」


 それが恥ずかしいことだと知った今ではその発言は激しく禁則事項だ!!


「ふ、勝った。これに懲りたらむやみに誤解を招きそうなこと言うなよ」


「うう……乙女の秘密を盾に脅される私……」


「ほんと難しい言葉しってるねおまえ」


「こないだドラマでやってた」


「あそ。なんか教育に悪そうなドラマだな」


「最近そんなんばっかだよ」


 おっと、本題を忘れるとこだった。


「でさ、トメ兄」


「そろそろ戸を閉めてほしいとこだが……なんだよ」


「今日さ、セイジ食堂でカツ定食、食べたじゃん」


 ちなみにセイジ食堂ではとんかつ定食とは言わない。なぜなら店の主人のゲンゾウ曰く、「豚肉じゃねぇから『とん』はいらねぇだろ」だそうだ。じゃあ何のお肉だと聞いても教えてくれない。おいしいからいいけど。


「僕はハンバーグ定食だったけど、それで?」


「なんでご飯も味噌汁もサラダもついてくるのに、カツとかハンバーグだけ名前が載るの。他の可哀想じゃん」


「あー……それはカツとかハンバーグとか、メインだけを載せたほうがわかりやすいからだろ」


「でも他のは? 今日のお味噌汁、カツよりもおいしかったんだよ? なんか不公平じゃん」


「メインが味噌汁に負けるのはどうかと思うが、ご飯も味噌汁も定食の中に含まれてるからいいんだよ」


「定食でみんなわかるの?」


「ああ、メインの付属品は全部、定食って言葉の中に含まれてるの。これ、常識」


「そうなのかぁ……」




 次の日。学校にて。


 友達と会ったとき、いつもなら「おはよう」のあとに「元気?」とか「宿題やってきた?」とかいろいろな会話が続くわけだけど、


「カカちゃん、おはよう」


「おはよう定食」


「…………??」


 これですべて解決してしまうわけだ。


 なんて便利。


 今日の私は一味違う。定食だけに。




「さ、自分の考え書いてねー」


 今は理科の授業。水を温めるとどういう変化があるのか、を中心にいろいろと実験する時間だ。


 ある程度実験が終わったあと、先生は今日の日付と出席番号を照らし合わせて当てる人を決める。


「じゃーカカちゃん。試しに発表してみて」


「温水定食!」


「……なんだか、ずいぶんと味気なさそうな定食ですね」




 算数の時間。


「…じゃーカカちゃん。この問題やってみて」


「計算定食!」


「……食べたら頭がよくなりそうな定食ですねー」




 体育の時間。


「……じゃー次カカちゃん跳んで」


「跳び箱定食!」


「食べれません」




 歴史の授業。


「…………じゃーカカちゃん、そのページ読んで」


「織田信長定食!」


「どんな定食なんでしょうね。カカちゃん、ちなみに次のページは――」


 と、先生の言葉を遮ってサエちゃんが手をあげた。


「先生、カカちゃんばっか当てて楽しんでません?」


「ばれたか」




 お昼休み、なぜかみんなが給食をわけてくれた。


 よほどお腹がすいてると思われたらしい。


 トメ兄、薄々感じてたけど、あんま通じてないみたいだよこの常識。


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