カカの天下112「趣味は何でしょ」
「トメ兄の趣味ってなに?」
「なんだ、いきなり」
こんちわ、トメです。
夕食時のこと。妹のカカがそんなことを聞いてきました。
「トメ兄って私たちといること多いじゃん。自分の趣味とかないのかなーと」
「そうだなぁ……ぶっちゃけ、それが趣味と言えなくもないか」
「小学生が趣味なの?」
「そういう言い方やめなさい。誤解されるから」
「小さい子が趣味なの?」
「それもだめ」
「妹が趣味なの?」
「そうじゃなくて!」
「ほんとに?」
そう言えないこともこともないかもしれないが!!
僕は自作のミートボールをもごもご頬張りながら反論する。
「おまえらのコント見るのが趣味かもなーってこと!」
「なに言ってるの。それを言うなら、私たち『と』コント『する』のが、でしょ。なにせツッコミなんだから」
「あ、じゃあ趣味はツッコミってことになるのか」
「妹に突っ込むのが趣味なの?」
「だからなぜにそういう危なげな言い方をするのだねキミは」
「何が危ないのかな」
「おまえの教育と、その他もろもろに危ない」
「そっか……妹にモロに突っ込む危ない趣味なんだね」
「なぁ、なんで着々と僕が逮捕されそうな文章が出来上がってるわけ?」
わざとやってないのが不思議なくらいにデンジャラス。
「トメ兄が逮捕になったら困るよ!」
「稼ぎがなくなるからか」
「私の評判落ちるじゃん」
「なんでおまえはそう自分のことばかり言うかね」
「じゃトメ兄は自分より私のこと優先したりする?」
「当たり前じゃないか」
「おー、ほんとに? じゃあトメ兄のミートボール一つちょうだい」
「む……まぁ、いいけど」
言ってしまった手前仕方ない……くそー、結構おいしくできたのになぁ。
「ん、ありがと。むぐむぐ……さすが妹が趣味なだけあるね」
「うぐっ、そ、そういや料理も趣味って言えるかも!」
「この程度で?」
「なんでミートボールあげたのにここまでボロクソに言われなきゃならないんだ……」
「たった一つじゃね。もう一つくれたら評価アップするかもよ」
「それは嫌だ。結構おいしくできたし」
「大したことないよ。だから一つちょうだい」
「なんだかんだ言ってカカだって気に入ったんだろ、このミートボール!」
「そんなことないよ」
「とか言いつつ箸を伸ばしてくるな!」
「む、箸を箸で叩くなんてお行儀悪いよ」
「どっちがだよ。僕は育ち盛りだからもっと食べないといけないのだ!」
「トメ兄もう大人でしょ! これ以上どこが育つのさ!?」
「心が育つんだよ!」
喚きあいながらミートボールを奪い合う僕ら。
箸と箸を剣をあわせるかのように受け、弾く。
「く、おぬし、なかなかやるな」
「うぬの剣も侮りがたし、よかろう、我が必殺技をくらえ!」
僕はびしっ! と箸をカカに突きつけた。
「カカは今月に入って体重が一キロ増えた!」
「え、ほ、ほんとに!?」
「本当だ!」
でまかせだ!
「む、むぅ……」
「というわけでこれは諦めろ」
さすがはたくましすぎても一応女の子。体重の話題を出したら一撃勝利。
ま、この後お風呂場で体重を量ったカカに「嘘つき」と文句を言われたりするのだろうけど、それはそれでまた口論を楽しむとしよう。
……あれ、やっぱ僕の趣味って、妹?