カカの天下111「今日の課題は」
「ただいまー」
トメです。
今日も今日とて妹のカカはサエちゃんやサユカちゃんと遊んでいるのでしょう。家の奥が騒がしくて僕の声は聞こえてないみたいです。
そして玄関ホワイトボードに目をやると。
『今日のトメ兄。次の三つから選びなさい』
……なんじゃこりゃ。
『A、面白い言葉を叫んでほしい』
この字は間違いなくカカだけど……
『B、お菓子を買ってきてほしい』
これ、サエちゃんっぽいな。何気に物欲的なとこが。
『C、甘い言葉を言ってほしい』
これ……サユカちゃんか? レベルたけー。
とりあえず、僕は無難にBのお菓子を買ってくることにした。
無難すぎてサエちゃん以外は不満そうだった。そのわりにしっかりお菓子は食べたけど。
「ただいまー」
翌日。あのトリオは今日も今日とて仲良く遊んでいるみたいだ。
そしてホワイトボードには。
『今日のトメ兄。次の三つから選びなさい』
今日はなんだ?
『A、その正体はロリコン。誰彼構わず抱きついてくる』
……失敬な。というか、抱きつけって言ってるのかこれ。
『B、その正体は魔法使い。手からお菓子を出せる』
遠まわしにお菓子買って来いってか。サエちゃんぽいな。
『C、その正体はデリルンリーラへめちょっけ。「るてっまこてきでがきでおにりしおはメト」と叫ぶ』
ひたすらにわけわからん。カカだな。
これ、何の呪文だ? って、これ、逆に読むと……なるほど。
僕はつかつかと歩を進め、騒がしいカカの部屋の扉を開け放った。
「るてっまこてきでがきでおにりしおはカカ!」
どうでもいいけど咄嗟にこれ言える僕ってすごーい。
「失礼なこと言うなこの不届き者!」
「どっちがだ!」
どうでもいいけどお菓子がなくてサエちゃんが残念がっていた。
「ただいまー」
さらに翌日。今日も今日とて以下略。
ホワイトボードを見る。
『今日のトメ兄』
いつまで続くのかなこれ。
『抱きつき占い。誰に抱きついたかであなたの将来が決まります』
なんつーけしからん占いだ。
『A、カカに抱きつく、将来はシスコン』
答えつきかよ。
『B、サエちゃんに抱きつく、将来はどM』
え、Mって……確かに最近はSっぽいけど、サエちゃんってもうそんなキャラなのか?
『そして喜んでお菓子を買ってくる』
そしてとことんお菓子ほしいんだなぁサエちゃん。
『C、サユカちゃんに抱きつく、将来は老後も安心』
なんでこれだけいい結果なんだろ。これ選んでほしいのか?
まぁ、なんにせよどれか選ばないとな……
え、無視するって選択? そんなのないよ。
だってそれじゃつまんないじゃん。
僕は歩を進め、カカの部屋の扉を開け放った。
すると三人は会話をやめ、期待に満ちた視線で僕を見つめる。
僕は無言でちょいちょい、と三人を手招きした。
僕の元へ集まった三人を、僕はまとめて抱きしめた。もうめんどいから全部選んでしまおうというわけだ。
「と、め……に……ぐぐぐ」
こんな馬鹿なことを考えた張本人にはちょっとキツめに絞めてやったが。
「あうあうあうあうあう」
恥ずかしがってるのか嫌がってるのか真っ赤になって困っているサユカちゃん。うむ、可哀想だが仕方ない。なにせ老後も安心なのだから。
「わはー」
そして一人楽しそうなサエちゃん。
「トメお兄さん。お菓子は?」
そして一人がめついサエちゃん。
「抱きついた料金としていただきます」
さらになんか将来は悪女になりそうなセリフを言うサエちゃん。
「はいはい……こんなこともあろうかと買ってきておいたよ」
「みんな、お礼にもっと抱きついてあげよー」
ぎゅーっとされた。
幸せな時間だった。