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カカの天下  作者: ルシカ
109/917

カカの天下109「カカ達のお祭り、番外編」

「んー、仲良くなったようで結構結構♪」


 どもっす! あたしはバナナ仮面! 名前はまだない、わけじゃないけど明かせない。


 なぜなら、なんとなくっ。


 あたしの素晴らしき占いによって恋愛成就間違いなしの二人を、はぐれてた二人と無事に合流させた。うまくいって安堵したあたしは、人波からはずれてしゃがみ込んでいる相棒に声をかける。


「おつかれっ! どうだった? 相棒」


「ぶたれたー……親にもぶたれたことないのにー……親としてぶったこともないのにー……でもたくましく育ってくれて嬉しいようなー……でもぶたれたー……」


 相棒のお祭り怪人はあたしの声が聞こえていないらしく、ぶつぶつと地面に向かって独り言を言ってる。


「ほら、ぶたれたぶたれたってブーたれてないで」


 お? あたしうまいこと言った?


「ううううー」


 ……しかし相棒のツッコミはなし。この人ツッコミ属性じゃないから仕方ないかぁ。


 あ。


 あたしの鍛え上げられた野生のカンがそれらを捉えた。


「お祭り怪人、やばい。警官だ。ずらかるよっ」


「うううう……うー? なんで警官がー? 私たち、すごく怪しいけどそれだけで何もしてませんよー?」


 今時はそれだけでも捕まるんだけど。


「いや、あんたは何もしてないだろうけど、あたしはしたのよ」


「何したんですかー?」


「盗み。あと、警官一人ボコった」


 あ。絶句した。そりゃフォローしようもないもんねっ!


「というわけで行くよっ。シュー君に捜査妨害してもらってるけど効果はいまいちみたいだから」


「え、え、そのー、それは私も共犯にー」


 なるに決まってるじゃん、あんたのためにやったんだから!


 言葉にするのが面倒くさくて、そのまま相棒の腕を掴んで走り出す!


 警官達は人の波に阻まれながらもあたし達を見つけたらしく、声を荒げて追ってくる。


 こんな怪しいお面をしてれば、見失っても周囲の人に聞き込みすれば一発で居場所がばれるもんね。


 じゃあお面をはずせばいい、という提案は却下。あたしらはこのお祭りの間、バナナ仮面とお祭り怪人になると決めたのだ。誓ったのだ。お月様のあんちくしょうに。別にお月様がそんなに偉いとは思えないけど。なにせ太陽の光あびて光ってるだけだし。もっと爆発する勢いで自分で光れよ月も。


 それに、万が一お面をはずした状態で『彼ら』に会ったとき、服装で正体がばれるかもしれない。それではせっかくの演出を台無しにしてしまう。


 だからあたしはお面をはずさない。


 その代わり、お面を増やす。


 バッグから取り出したバナナとお祭り怪人のお面を、相棒と二人で片っ端から通行人にかぶせていく。問答無用に。


「え!?」


「ぶっ!」


「ちょ」


 ありったけのお面をかぶせまくったころには、警官は誰を捕まえればいいのかわからなくなっているという寸法だ。無関係な通行人がお面をはずしても、それを持っているだけで容疑者となりうるのだから。


 あたしたちは混乱している人達に紛れ込み、うまく警官をやりすごした。




 そして、盗んだブツの元へたどり着く。


「これはー?」


「花火の砲台だよ」


 どうやって盗んだかは、話すと長くなるから省く。


「そしてここには、特製の花火弾があるのだよ! じゃっじゃーん!!」


 これぞあたしの顔の広さの勝利!


「知り合いの花火師に作ってもらったのさ」


「何か特別な花火なのー?」


「この花火は文字の形で咲くの! その文章とは――」


 その内容を言った途端、我が相棒は赤面した。や、お面してるけどわかる。


「なななななななー! そそそそそそんなのもし見られたらーっ!?」


「見せるために撃つんじゃん。ほら、もう花火の時間だよ」


 腹に響く重低音。あたし達のいるすぐ隣から次々と撃ち出される花火。


 そう、この花火に紛れて特製花火を撃つこと。これが今回の作戦の仕上げなのだっ!


「相棒、あんた、このお祭りで何したいって言った?」


「……それはー」


「いろいろ厄介な事情があるにせよ、こんな回りくどいやり方でも接点を持ちたいって言ったの、あんたでしょ?」


「……うん」


「それはつまり、この花火に込められてる文章を伝えたいってことじゃん。まんまでしょ? あんたの気持ち」


「そう、だけどー」


「じゃ、レッツゴー」


「やっぱりだめー!!」


「は?」


 あらフシギ。突き飛ばされたあたしの身体が砲台の中へ。


 あ、あの。火、点いちゃってるんですけど?


「私のこと、いろいろ考えてくれてありがとう。でも、これじゃ、ダメだよ。私が、ちゃんと自分で伝えなきゃ」


「ね、ねえ」


「まだダメだけど、いろいろ解決しなきゃならないこと多いけど、でも、でもいつか!」


「ご高説ごりっぱパチパチパチ! ついでにそこのパチパチいってる火もとめて!」


「あー、大丈夫ですよー」


「い、いくらあたしでもこれは」


「なんというかー、ビジュアル的にというかー、キャラ的にというかー、その他もろもろの事情で大丈夫ですよー」


「んな無茶な!?」


「ほらー、漫画でケガしたキャラが次のコマだと回復してたりするのと同じ理屈でー」


「ちょ、ま、まじっすかあああああああああ!!」




 夜空に咲く、大輪の花。


 その花のうちの一輪が、何かを叫んだ。


 それを聞いた者は、いない。


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