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カカの天下  作者: ルシカ
107/917

カカの天下107「カカ達のお祭り、トメ編」

「んー、とりあえず適当にまわってようか。そのうち会うだろ」


「そ、そそそそそうですねっ」


 困ったもんだ、トメです。


 みんなでお祭り楽しんでたのに……気づいたらカカとサエちゃんの二人とはぐれてしまった。


 仕方ないからサユカちゃんと二人で歩いてるんだけど……なぜだろう。この子はめっちゃ緊張してるみたいだ。


 うーん……結構何度も会ってるし、すっかり打ち解けてると思ったんだけどなぁ。僕、話しづらく思われてるのかなぁ。


「これはもうどこからどう見ても告白すべきシチュエーションでしょう。いや、いっそ暗がりに連れ込んであーれーよいではないかおだいかーんってやって押し倒してそれからセック――」


 なんか、すごいセリフを言ってる人がいる。


 思わず振り向いたけど……人の波が大きすぎて誰が言ったのかよくわからなかった。むぅ、天下の往来でそんなセリフを言う変態を見てみたかったんだけど。


 もしかしてカカの言っていた変態、お祭り怪人か。おそるべし怪人。


「こ、告白……おだいかん……」


 あら、この子も聞いちゃったのか。


「あ、あのっ」


「ん? なにサユカちゃん」


「クレープ屋さんおごってあげます!」


「へ、や、そんなものすごいもんおごってもらっても」


「じゃなくてっ、クレープおごってあげますっ」


 いま聞こえてきた変態の言葉のせいか、僕に緊張しているのか……

 

 どっちかはわからないけど、少なくとも嫌われてはいないみたいだ。ちょっとホッとした。


「ありがと。嬉しいけど、いい大人の男がおごってもらうわけにはいかないよ。ここは僕がおごってあげる」


「で、でも……」


「いいからいいから。遠慮しない」


「じゃあ遠慮なくチョコバナナクレープと普通のチョコバナナと普通のバナナとバナナポテトとバナナたこ焼きとバナナ屋台ちょうだいなっ!」


 遠慮しなさすぎ……って、これ、サユカちゃんの声じゃないな。


 サユカちゃんと首を傾げながら振り向くと……そこにはバナナのお面をかぶった人が立っていた。バナナのお面ってどんなんだと疑問に思う人もいるだろう。でも説明しようがない。がんばって想像してくれ。


「……あんた誰」


「我こそはバナナ仮面!」


「それお面」


「むぅ、さすがはツッコミ。細かいところも聞き逃さないね」


「なんで僕がツッコミだって知ってる」


 自分で言うのもなんだが。


「ん、いや、ほら。一流のボケはツッコミを見抜くっていうじゃん?」


「一流のバカだろあんた」


「違うっ。我こそは占い師!」


「バナナ仮面じゃなかったっけ」


「バナナだけど占いもするのだっ」


 なんだろう……このテンポ。どこかで嫌というほど味わいまくったような覚えが……


「ほ、ほんとに占い師? なんか、全然そんな風に見えないんだけど」


 若干怯えを隠しながら恐る恐るサユカちゃんが尋ねると、バナナ仮面は少し考えて、


「占い師ってさ、なんか怪しい感じじゃん?」


「え、ええ」


「まぁ信じてない人から見れば」


「あたし、怪しいじゃん?」


「それはもう」


「とてつもなく」


 二人して即答すると、バナナ仮面は大きく頷いた。


「そう、だから誰よりも怪しいあたしは占い師でしかありえないのだよっ!!」


「全国の由緒正しい占い師さんに謝れ」


「どうもすみません」


 素直でよろしい。


「んで、結局あんたは何がしたいの」


「もちろん占いだよっ! というわけでラブラブっぽい二人の相性をみてあげよう!」


 ラブラブ? 僕とサユカちゃんが?


 ……たしかにサユカちゃんは小四にしては背が高いけど……いくらなんでもそう見るのは無理があるのでは。


 それに、せっかく仲良くなりかけてるのにいらぬ誤解のせいで印象を悪くするのはよくない。サユカちゃんの名誉のためにも、ここはハッキリと言うべきだろう。


「や、僕らはがもっ」 


 言おうとした途端口をふさがれた。なんでや。


「……もが?」


「その先は言うな。言ったら一人のか弱い少女が傷つく気がする」


「……もぐが」


 なぜこの変なバナナがそんなことを言うのかわからない。妙なカンでも働いたのだろうか。一応占い師だし……


「とにかくっ! 二人の相性はバッチシカンカン! この上もなくうまくいく星の元に生まれてるから今後とも仲良っくするように! 余計なことを言うなよ君! では幸せに」


 言いたいことを言って、バナナ仮面はあっという間に走り去っていった。


「なんだったんだろ、あれ」


「…………」


「ん。どしたのサユカちゃん」


 サユカちゃんはなぜか……その、溶けていた。


「あ、あのトメさん!」


「な、なんでしょうか」


「てててっててててをつないでもいいですかっ」


「ててて? あ、手か。まぁ、そだな。これ以上はぐれるのも困るし」


 一人ではぐれてあんな変なのに絡まれたりしたら……保護者としてついてきたのに親御さんに申し訳がたたない。


「そ、そうじゃなくて」


「へ?」


「な、仲良く、し、しようかな、なんて」


 仲良く?


 ……ああ、占い結果でか。手を繋ぐのはたしかに仲良しっぽい。


 そんなの気にするなんてやっぱ女の子だなー。


 でもまぁ、仲良くなれるに越したことはない。これでサユカちゃんとの微妙な雰囲気が少しでも解消できるなら……


 というわけで、僕はサユカちゃんの手を握った。


「……!! あ、ああああああのお化け屋敷、おいしそうですねっ! わたし前から一度食べてみたかったんですよ!」


「はいっ!? さ、サユカちゃん落ち着いて」


「へっ、いや、わたしは落ち着いてますよっ。ちゃんと九九も逆立ちしながら言えますしっ」


 ……あれ? 


 なんか妙な雰囲気が悪化しちゃったぞ。


 なんでだ。


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