カカの天下105「カカ達のお祭り、中編」
「祭りだ!」
というわけです。トメです。
今日は僕らが住む街のお祭りです。特に大きい街ではないにしても、さすがにこの日はそこかしこに出店がひしめき、賑やかな喧騒に満ちています。
今の僕は妹のカカと一緒に、友達のサエちゃんとサユカちゃんを待っているところです。
「姉とサカイさん、残念だったね……」
「用事があるってんだから仕方ないだろ」
「あれ? 似たような会話を最近したような覚えが」
「気のせいだ」
あの二人を誘ったときのことを思い出す。なんか妙にニヤニヤしながら断ってくれた。すごく怪しかった。もしかしたら用事ってこのお祭りに関することなんじゃ……
「サエちゃんもサユカちゃんも浴衣で来るんだって。脱がすのが楽しみ」
「なぜ脱がす」
「浴衣ってそれが楽しいんじゃないの? トメ兄も我慢できなくなったら私の脱がしてもいいよ」
「僕を犯罪者にする気か!?」
「えー。よいではないかよいではないか! おやめくだされおだいかーん! ってやりたいのに……」
「……あー、それなら後でやってやるよ」
正直言おう。
それはぶっちゃけやってみたい。
「あ、二人ともー! こっちこっち!」
お、サエちゃんとサユカちゃんがきた。
「こんばんは、カカちゃん、トメお兄さん」
「こんばっ、カカすけ。と、トメさん!」
「こんばんは、二人とも浴衣可愛いねー」
「サエちゃん、サユカちゃん。脱がしていい?」
いきなりそれかい。
「うん、あとで部屋でねー」
「し、仕方ないわね……優しくしてよ?」
よいではないかお代官の話は事前にしているらしい……けど、ここだけ聞くとめっちゃアブナイ会話に聞こえるな……
「じゃ、行こうかー」
「うん、お祭り怪人楽しみだね」
「いつ現れるんですか?」
「カカすけ、用意したんでしょ?」
……あれ、なんでそんなのが現れること前提なのですか?
「やだなー、用意してないよ」
カカはけらけら笑いながら、
「まだ」
おっそろしいことを口にした。
「射的だ。一番手、カカいきます!」
「おー、頑張れー」
屋台のおっさんから銃を受け取り、いそいそと弾を詰め込む。
「サエちゃん、どれがほしい?」
「あのクマのぬいぐるみがいいなー。寝る前にキスして抱いて布団に入るの」
「わかった。とってサエちゃんにあげるね。ところでどれがほしくない?」
「あのゲルンガーって感じの人形が気持ち悪いなー」
あー、あれか。何かのキャラクターかは知らないが、程よく皮膚が溶けてるあたりがこの上もなくゲルンガーだ。
「わかった。とってサユカちゃんにあげるね」
「イヤガラセかっ!?」
「いくよ……必殺、ライフルブーメラン!」
「って銃を投げるなあああああ!!」
「痛っ!?」
「屋台のおじさんに……!」
「む、狙いが外れた……じゃあこの景品はトメ兄に」
「いらねぇよこんなおっさん!」
「ちゃんと寝るときにキスして抱いて布団に入るんだよ?」
「……ぽ。やだトメお兄さんたら、それナイス」
「じゃ、じゃあこのおじさんの代わりにわたしを、そのっ」
「おー!! サユカンがんばれー!」
なんて感じに、一つの店を見るだけでこの大騒ぎ。
色んな出店を冷やかしながら、楽しく僕ら四人はお祭りを堪能していた。
いた、んだけど。
「む? はぐれた」
「トメお兄さんとサユカちゃんいないねー」
「……あれ、あいつらどこいった」
「二人きり、ですね」
こんな感じにはぐれてしまった。
「……ちゃんす?」
その内、二人の人間がこのセリフを呟いたことを、僕は知らなかった。