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カカの天下  作者: ルシカ
102/917

カカの天下102「猫様のおなーりー」

「トメ兄、猫だよ」


「ああ、猫だな」


 トメです。


 ただいま夕飯の買い物から帰ってきたところです。カカと相変わらずのノリで雑談しながら玄関に差し掛かったとき、僕らはそれを発見しました。


 ちょこんとそれなりに成長した猫。


 捨て猫にお決まりのダンボールにはこう書かれていました。


『おまえが飼え』


 なんつう強気な捨て方だ。


「ねえ、どうするトメ兄」


「んー、飼うとなるといろいろ面倒だしな」


「じゃ、お隣の家に置いておこうか」


「おっけー」


 あれ、なんか猫がぎにゃーぎにゃー! って騒いでる。


「ねぇ、なんか猫が『ここは妹が飼いたい飼いたいと駄々をこねるシーンじゃないのか』って言ってる」


「へぇ、そうなのか。カカ、やってみ」


「やだよ。子供じゃあるまいし」


 あ、猫がしぼんだ。ていうかさっきから僕らの言ってる言葉がわかってるような反応だな。


「ちなみに名前は総理大臣だって。趣味は『君、クビね』って言うことらしいよ」


「総理大臣というよりはどっかの会社の部長みたいな趣味だな」


 あ、猫が怒った。


「これだから猫の違いがわからない人間は……って言ってる」


 猫の違いなんか模様でしかわからねぇよ。


「ふむふむ、飼い主がまったく命令を聞かなくて、気がつけばこんなところにいたんだって」


「や、どっちかというとその猫が飼い主の言うことを聞かなかったんだろ」


「これだから猫語のわからない人間は……だってさ。やれやれ、人が猫の言葉なんてわかるわけないじゃんね」


「カカはわかってるじゃん」


 カカは数秒停止したあと、目を見開いた。


「ほんとだ! 私すごい!」


「あー、すごいねすごいね」


「なに、その反応。私のリアクション違ってた?」


 僕の冷めた反応に不満らしいカカは少し考えたあと、


「じゃ、こういうのは? ひ、秘密がバレたか!?」


 秘密だったんだ、猫と話せるの。


 そりゃそうか。おおっぴらに「私は猫と話せる」なんて触れ回ってるヤツがいたらお近づきにはなりたくないし。


「秘密を知られたからにはいかしたヤツだ!」


「生かしてはおけない、だろ。いかしたヤツって誰だよ」


「私に決まってるじゃない」


「えーっと、そうですか」


「……トメ兄。反応つまらない」


 どうしろというのだ。 


「じゃあねじゃあねー」


「はいはい、そのくらいにしてその猫どうするか考えよう。なんか不貞腐れた顔してるぞ」


「ほんとだ。君クビねって言ってるよトメ兄」


「……ああそうかい。飼い主としてクビですかそうですか。さぁどこに捨てようか。川か? 海か? 肥溜めか?」


 身の危険を感じたのか、総理大臣は暴れ出した。


「うるさいよ大臣」


 キュッと一発。大臣は黙った。弱いな大臣。日本大丈夫か。


「で、コレどこに捨てる?」


「んー……」


 玄関から外へ出て、周囲を見渡す。


 ぴたりと。たまに利用している食堂に目がとまった。


「そういやあこのご主人、最近寂しそうにしてたなぁ」


「セイジ食堂のおいちゃん? ぴったりじゃん」


 セイジに総理大臣。なにこの奇跡的な組み合わせ。


「あそこに捨ててこようか」


「あ、ちょっと待って」


 カカは家に一旦入り、しばらくしてまた戻ってきた。


 ペンを取ってきたらしい。『おまえが飼え』と書かれた下に何かを書き加えているようだ。


「完成」


「なになに……]


『おまえが飼え。さもなくば食え』


「明日の日替わり定食はなんだろうね」


「肉料理だったら食べないでおこうな」


 僕ら兄妹は仲良く頷き、黙らされてぐったりしている大臣を連行した。





 翌日のセイジ食堂の日替わり定食は……『特製ハンバーグ』


 まさか、ひき肉に……?


 おそるおそる店内をのぞくと、そこにはそのハンバーグをおいしそうに頬張っている姉の姿。


「大臣食べちゃったのかな、姉」


「……さぁな」


「大臣おいしいのかな。刻んだのかな。焼いたのかな。やっぱ最近の政治って煮え切らないからやっぱ煮たのかな?」


「なぁ、カカ。真相は置いといてそのすんごい表現やめないか?」


 大臣の生死やいかに。


 あと、味やいかに。




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