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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下10「カカの天気」

 トメです。


 仕事を終えて僕が家に帰ってくると、大量のテルテル坊主が迎えてくれました。


 玄関から廊下、部屋の奥まで――能天気な笑顔がずらりと並んでいて、少し恐いです。


 セロハンテープででも貼ったんだろうけど、こんなことをする人間はうちには一人しかいませんな。


「おーい、カカー!」


 呼びながら部屋に入ると、そこにはでっかい白い布を身体に巻きつけて人間テルテル坊主になりながら、能天気な表情でテレビを見ている我が妹の姿が。


 なんじゃこりゃ。


「どうしたの、おまえ」


「あのね、トメ兄」


 ボケーっとした声で香加が言った。眠いのかな。


「明日さ、マラソンなんだ」


「……へぇ」


「だから、晴れるといいなって」


「マラソン好きなのか」


「だって走ってるだけだよ? 楽じゃん」


 そういえばこの娘は妙に体力があるんだった。ヘタすれば運動不足の僕よりも。


「天気が回復するまでテルテル坊主このままね」


「……まぁ、いいけど」


 ちなみに外は雨が降っている。


 だがしかし、翌日は見事に晴れてしまった。




 仕事を終えて僕が家に帰ってくると、再び大量のテルテル坊主が迎えてくれました。


 なぜかそれに描かれた顔は涙を流していました。ずらりと並んでいると葬式場みたいです。


 どうやらこの前のでテルテル坊主がブームになったようです。


「おーい、カカー!」


 呼びながら部屋に入ると、そこにはでっかい白い布を身体に巻きつけて人間テルテル坊主になりながら、ひたすら涙を流してテレビを見ている我が妹の姿が。


 なにがあったのだ。


「どうしたの、おまえ」


「あのね、トメ兄」


 悲しそうな声で香加が言った。


「今日さ、友達とケンカしたんだ」


「……へぇ」


「だから、悲しくて」


「自分が悪いと思ってるのか」


「だから泣いてるんだよ? 当たり前じゃん」


 だから悲しみに暮れてひたすら頑張って作ってしまったと。


「私が仲直りするまでナキナキ坊主このままね」


「……まぁ、いいけど」


 ちなみに明日は土曜日だ。つまり三日はこのまま……


 だがしかし、月曜日には見事にはずすことになった。ちゃんと謝れてよかったな。




 仕事を終えて僕が家に帰ってくると、もいっちょ大量のテルテル坊主が迎えてくれました。


 見事に描かれた怒りの形相がずらりと並んでいて、めっさ恐いです。


 まだ続くのでしょうかテルテルブーム。


「おーい、カカー!」


 呼びながら部屋に入ると、そこにはでっかい白い布を身体に巻きつけて人間テルテル坊主になりながら、テルテルよりも三倍は恐ろしい表情でテレビを見ている我が妹の姿が。


 こえぇ。


「どうしたの、おまえ」


「あのね、トメ兄」


 怒りを抑えた声で香加が言った。これが漫画なら額に青スジが十個はあるだろう。


「今日さ、悪戯でお気に入りの消しゴム壊されたんだ」


「……へぇ」


「だから、その子が呪われるといいなって」


「新しいの買わないのか」


「限定品だよ? 売ってないじゃん」


 そういえばこの前、デパートの開店セールに行ったときに記念品で消しゴムもらっていたな。妙に気に入ってると思ってたけど……


「呪いでその子が不幸になるまでノロノロ坊主このままね」


「……まぁ、いいけ――や、よくない! いつになるんだよ、はずすの!? 僕は嫌だぞ! ずーっとこんな怒りの形相したチビどもと同居するの!」


「101匹ワンちゃん飼ってる人いるんだから101匹ノロちゃんも大丈夫だよ」


「こんなえぐい顔したティッシュにそんな可愛い名前はいりませんっ」


 ちなみにカカは頑として引かなかった。


 だがしかし、翌日は見事にはずされていた。


 そしてカカは上機嫌に。


 ……えーっと、なにがあったのでしょうか……ね。



 

 皆もテルテル坊主の呪いには気をつけようね。




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