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プレゼント

作者: ハルユキ

親の転勤のため転校することになったハル。 ハルの友達は引越しするハルを送り出すために最後の日にお別れ会を開いてくれる

ある春の夜のことだ、ハルたちは海辺にある喫茶店に集まった。

親が転勤するために、ハルは明日でこの島から引っ越す。ハルはお別れが嫌で引っ越したくないと思っていたが、またどうしようもないこともわかっていた。

幼なじみのミカと親友のユズはハルのためにお別れパーティを開いてくれた。

喫茶店を借りきり、親しい人たちを数人呼んで。



 そろそろパーティは終わりを迎えようとしている。

「では最後にユズさんから、ハルへのメッセージがあります!なんとサプライズです。

ユズさん張り切っていこう。イエ―イ!」


ミカはいつも自分から場の雰囲気の盛り上げ役を買ってくれる、ハルはいまさらながら、そんな彼女に感謝した。

ミカがユズを前へ出るように促すと、ユズは頬を膨らませた。

「いっつも急だよ、ミカ」

彼女はリラックスしているみたいだが、反対にハルはサプライズで何をするんだろうかと緊張している。

ユズは長い黒髪を揺らし立ちあがると、うつむきながらハルの目の前まで来る、ハルはそれを見つめ、頭を掻きながら言った。

「面と向かってメッセージを貰うのは恥ずかしいもんだね」

「確かに恥ずかしいけどね…。でも照れたら負けだよ!ハルが学校に来た夏から、半年間色々あったよね」

「もう半年になるんだ、色々あったね」

ハルが少しだけ視線を外すと、皆がこの流れに注目しているようで、場は静かだった。

がんばれー!との囁き声に、ユズは微笑を返し、言った。

「頼まれてたポエム作れなくってごめんね」

あまりにも意外な言葉にハルの口はポカンと開く。

「え!?…あれは冗談だし!あはは」

ポエムのことは、冗談半分期待半分だった。

ユズはにやけ顔を浮かべたが、すぐ切り替えた。

「ハルが来てくれて、本当に楽しかったよ、今までありがとう。これ私からのプレゼントだから。後で一人になった時に開けてください」





それからまもなく、パーティがお開きになり、仲間と喫茶店の前で別れた。

喫茶店から家に帰ってきたハルは、ユズに言われた通り自分の部屋で、包装紙を破き小箱を開いた。 

小箱の中には、前に二人で思い出を作りに行った、旅先の写真が入っていた。雪だるまの前で二人の少女が親しげに並び、笑いながらピースしてる写真、長い髪の女の子はユズ、そしショートヘアの女の子はハルだ。

箱の底にもうひとつ、SDカードがテープで貼り付けられている。

ラベルにはDearハルとサインされていて、ノートパソコンを使ってそのSDカードを再生すると、モニターにはラヴィが映り画面からこちらへ手を振っている。ハルはそれを見て何かが起りそうだと感じ、どきどきしている。

そして音楽が流れ出し、画面のラヴィが静かに語り始める。







「旅立つハルへ、大切な仲間ハルとの思い出を綴ります


出会いは初夏のこと、ハルがこの島の学校に転校してきたんだ。


最初にあやまる。ごめんなさい、今だから言うんだけど、私はハルがなんだか女の子女の子しているように見えて、苦手だった。


私も人見知りが激しいから、最初の頃はあんまり話せずにいたね


それから季節が過ぎて、秋にクラスの席がハルの隣になり、一緒に話すようになったね。

ハルが遊びに誘ってくれて、一緒に遊ぶようになったんだ。

バスケで遊ぶことが多かったね。

もうひとつ、今だから言うけど、私バスケ嫌いだったの。

嫌いっていうかよくルールがわからなくて・・・。


でも遊んでいるうちに好きになっていったんだ、バスケのことも、ハルのことも…。


たくさん遊んでくれてありがとう


ハルが部活でレギュラーになって、ちょっと焦ったこともあったけど、私を待っていてくれてありがとう。


仲良くなった秋からは本当に楽しかった。

一緒にいろんな場所に行ったり、たくさんお話したりしたね。


Tvゲームも一緒にできて嬉しかった。


ハルは私にとって、長年連れ添った古い友人のようであり、可愛い妹のようであり、頼れる相棒で、時には恋人みたいに思ったりもしたよ。


ハル、大好きだよ。


ハルの幸せを遠い場所から祈っているね。  3月24日 fromユズ」






 映像が終わってから数分後、ハルは両親に散歩に言ってくると言い残し、家を出た。

人通りの多い道を少し外れると辺りはすぐ真っ暗になり、月明かりを頼りに歩く。

それから坂を少しばかり下ると、5分程で人気のない夜の海まで着いた。

砂浜の波打ち際に座りこみ膝を抱えて、静かに響く波音に耳を傾けていると、ハルの目からずっと我慢していたものが溢れだした。

「うっ、ユズ…」

ハルはユズの気持ちを聞けてとても嬉かった、幸せだと思った。

でも同時にいいようのない寂しさも感じていた。

ハルの頬を大粒の雫が伝い、砂浜へ次々と零れ落ちていき、そのまま泣き崩れた。

それからしばらくの間、ハルの慟哭が夜の浜辺に悲しく響いていた。



 ――どれほどそうしていただろうか、ハルの心はさっきより楽になり、流した涙の跡は乾ききって冷たくなっていた。

「あ・・・」

贈り物の礼を、まだ言ってないことに気づく。

止まらない泣き癖が格好悪く思うので、収まりがつくのにハルは5分ほど待ってみた。

そしてようやく止まったら、ユズにちゃんとお別れをする勇気が沸いてきた。



電話でユズを海辺に呼ぶと、彼女はすぐ了承してくれ、10分も経たないうちに走ってきてくれた。

「ユズ、遅い時間にごめんね」

「いいよ、どうしたの?」

不思議そうに首を傾げるユズにハルは持ち前の思い切りの良さで言った。

「さっきの見ちゃった、ユズありがとう!好きだよ」

その言葉にユズの顔は真っ赤になる。

「あ、あのね」と手をぶんぶん振って慌てたが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「見てくれたんだ、やだ、照れちゃうな。こっちこそありがとう、ハル」

「えへへ」

ユズに会えて安心したら、また感情の波が押し寄せて泣きそうになった。

目を閉じ、溜まっていた涙を袖で拭う。そして笑顔を作ろうとするがうまくいかなかった。

ハルのそんな様子に気づきユズは真顔で尋ねる。

「泣いていたの?」

ハルは少しの間を空けて、ゆっくりと震える声で言う。

「ユズのプレゼントが、嬉しかったから」

ユズはそっと近づき、ハルの前髪を愛おしそうに撫でた。

「可愛いねハル。ありがとう、泣いてくれて」 

ユズに正面から背を抱かれると、ハルの顔が大きな胸にうずまった。

あまりにも近すぎる距離にドキドキして、少しの間呼吸を忘れる。そのまま背伸びをしてユズを抱き返し、一番素直な気持ちを伝える。

「ユズ、大好き」

ユズはさらに強くハルの背を抱きしめた。

「私も大好きだよ。ハル」

暖かくて、いい香りがして、ハルは心が安らぐのを感じていた。



 ハルはこの夜の出来事をずっと忘れないと思った。

そしてユズに伝えきれなかった想いをそっと心の中で呟く。


「大好きです。わたしもずっとユズのしあわせを祈っています」と。

処女作になります。書きたいものを書きました。

拙い作品ではありますが、最後まで見て頂けたら嬉しく思います。

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