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溜息

作者: 白烏

 階段を降りると、ちょうどいつもの電車がホームに滑り込んできた。午前七時三十七分。人波を掻き分けながら、いつもの車両のいつものドアに向かう。まだ梅雨入り前の筈なのに、空は厚い雲で覆われ、今にも泣き出しそうだった。

 大学生。大学生になれば、受験地獄から逃れ、自由な時間も増える。そう思っていたのに甘かった。毎日同じことの繰り返しじゃないか。勉強、サークル、バイト、勉強……。気が付けば全て流れ作業だ。このところ毎日、そんなことを考えながら電車に乗る。

 電車に乗り、手近な吊革につかまる。目的の駅まで三十分ほどかかるが、習慣で席が空いても座らないようにしている。席のそばで立っている人を見るのが堪らなく厭だから。中年のサラリーマンや不必要に化粧の濃いOLが、席が空くと我先に座ろうとするのも、私にはどうしても醜く映ってしまう。

 いや、違う。分かっているのに。座っている私の傍らで立っている人が、私を憎み、恨むはずがない。席が空けば、座ればいいのだ。それは大袈裟に言えば人間として普通の行為であり、もちろん醜いなどと思ってはならないものなのである。むしろ、そんな感情を抱く自らを恥ずべきだろう。

 目の前を、窓枠で区切られた海が、いつの間にか顔を出した太陽の光をいたずらに跳ね返しながら過ぎ去っていく。生きる上で全く意味のない愚考を重ねているうちに、電車はすぐに大学の最寄り駅に滑り込んだ。


 ホームに降りて、それぞれの目的地に急ぐ人々の中で、しばし立ち止まる。少し白く霞んだ青空に、私は灰色の溜息をついた。

駄文ですが、お許し下さい。

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