7. 見知らぬ男たちに囲まれたお姫様
※ タイトル及び加筆修正の為、6話を分割挿入したので、7話に変更となりました。
※ 以前7話だった回は8話となります。
※ 更新が大分遅くなってしまって申し訳ありません。
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デイジー姫は、最初このもやもやしたイライラした姉たちへの感情がなんなのか、わかりませんでした。
デイジーは自分で辞書を開いて調べました。
意外と勉強家のお姫様です。
自分が気になった事はとことん調べるお姫様でした。
フムフム、どうやらこれは相手を妬む醜い心だと。
──そうか、この何ともいやな、たとえると心臓にミミズがちょろちょろ這い回ってるような気分は、嫉妬というものなんだわ。
言葉では知っていたけど、実際、嫉妬だと解ると、これほど酷く、惨めに心を落ち込ませるものなんだ、とデイジー姫は思いました。
こうして舞踏会の夜から、三日三晩部屋にこもって泣き明かしたデイジーは一大決心をしました。
──このみにくい心だけは、美しいお姉様たちに悟られたくはない!
金輪際、お姉さまたちから逃げよう!
だけど困った。
お姉さまのお輿入れはまだ当分先です。
お輿入れとは?
我が国の姫君は成人になっても、十代までは輿入れしないという決まりがありました。
決めたのは父王様です。
姫君たちをこよなく愛する父王様は、なるべく愛する娘たちを手元に置いときたくて、早婚は承知しませんでした。
おかげで姉君様たちも社交界にデビューした後も、他国へ嫁ぐ前は自由で楽しい乙女時代を満喫していました。
いわれてみれば、デイジー姫が観察すると、ローズお姉さまは、自由奔放で何人かの崇拝者を囲っていました。
リリアンお姉さまも、三人の殿方とダンスを交互に踊っていて一人には絞っていませんでした。
なのにあの夜、壁の花のように独りぼっちで立っていたのはデイジー姫ただ一人。
そう思い込んでいたのです。
デイジー姫はそんな姉君様たちに、無理やり笑顔で取り繕うことなどできません。
同時に何もやる気がおきず、人と会うのも億劫になってしまいました。
何より今は、姉君たちがいるお城から逃げ出したかったのです。
──でもデイジー、あなたってとってもおバカさんだわ。
デイジー姫はふぅっと大きなため息をつきました。
城から出たはいいけど、これからどうやって生きていこう?
デイジー姫は無性に不安になりました。
それまではただ城を出る事だけを願っていたので、お昼ご飯を食べた後は解放感でいっぱいでしたが、今は不安でなりません。
おそらく王様は私を追放しても、一人くらいお供の者を付けてくれるだろう。
少なくとも雨風しのげる寝床くらい用意してくれるだろうと高を括っていたのです。
でも王様は娘の私を身ひとつで城から追い出したのです。
──王様はよくよく私に愛想がついたのね。
このまま私は野垂れ死ぬのかしら?
そう思うと、デイジー姫の瞳にうっすらと涙がにじんでいました。
その時でした──。
「おいおい、お嬢ちゃんよ! なに独りぼっちで俯いているんだい?」
「!?」
デイジー姫は顔をあげました。
目の前に見知らぬ三人の若い男が立っています。
三人共王都民の身なりでした。
デイジー姫が滅多に話した事がない、いわゆる平民です。
「失礼な、お前たちは誰ですか?」
デイジー姫は体を固くして、とっさにいつもの口調が出てしまいました。
「はあ、お前たち?」
ひとりの髭面の若い男が太い腕をむき出しにして、大きな口を開けてにやにや笑いました。
「生意気な!」
男はそのままデイジー姫のフードを取り払います。
「キャッ!」
デイジー姫は突然、フードから顔をむき出しにされて声をあげました。
すると彼女のマロンクリームの三つ編み髪が無造作になりました。
「お、フード被ってて気づかなかった、これはこれは綺麗な栗毛じゃないか!」
「ははんアニキ、まだガキだが、なかなか別嬪だぜ!」
今度は前歯がちぐはぐに欠けたソバカスだらけの小男が、デイジー姫の三つ編みの先っちょを引っ張りました。片方のおさげ髪をひっぱられてデイジー姫は怒ります。
「なんたる無礼者! 私から離れなさい!」
デイジー姫はその男の手をびしゃりと払いのけたのです。
「なんだとこのアマ、俺たちにそんな口を聞くとはいい度胸だ!」
ソバカス小男が怒りだしました。
「はは、威勢がいいおチビちゃんだな。ガリガリに痩せてるが目鼻立ちはいい」
もう一人、ひょろっと背の高い顔に大きな傷のある大男が値踏みするようにデイジー姫を見て言いました。
「気の強い娘は好みだ、可愛いお嬢ちゃん、俺たちと遊ぼう」
傷のある大男はにやりと笑い、デイジー姫の肩肘をつかむと、無理やり抱き寄せようとしました。
「離して!」
さあ大変です。
どうやらデイジー姫は王都民のヨタ者に絡まれてしまいました。




