7. 青年ダルタニアンと初めて出会ったお姫様
※ 暴力シーンがありますのでご注意ください。
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「気の強い娘は好きだ、お嬢ちゃん俺たちと遊ぼう」
髭面の男はにやりと笑ってデイジー姫の肩肘をつかんで、彼女を抱き寄せようとしました。
「なんと!無礼者、離しなさい!」
「ははは、生意気なアマだ」
「嫌っ!」
デイジー姫は必死で抵抗しましたが、なにせ姫より頭ひとつ以上も大男の力にはかないません。
「へへ、なら俺はこっち!」
ともう一人、顔に傷のある男がデイジー姫のもう片方の腕をがっしりと掴みます。
2人の大男がデイジー姫の両脇を抱えたので、細いデイジー姫の身体はいとも簡単に引きずられてしまいました。
──嫌だ、怖い、誰か!?
デイジー姫は大男たちに両腕を掴まれて、恐怖で頭の中が真っ白になりました。
無理やりどんどん引きずられて気が遠くなりそうです。
すると突然の出来事が──。
卵ほどの大きさの石が2つ、空からビューンと飛んできて、髭面の男と顔に傷のある男の顔に見事にバシッと命中しました。
「う、痛てぇ!」
「ウギャッ!」
2人の大男は石が当たった顔を両手で押さえたので、デイジー姫の体が一瞬、宙に浮きました。
「あ!」
その拍子にデイジー姫は前のめりに転びそうになりましたが、その時、疾風の如くデイジー姫をめがけて飛び込んできた若者がいました。
既の所で、地面に叩きつけられるデイジー姫の腰を支えて抱きとめます。
「大丈夫か!」
「!?」
その若者に抱きしめられたデイジー姫は若者の顔を間近で見つめました。
若者の背はけっして大男たちほどは高くありませんが、それでも筋骨隆々とした立派な体躯をしていました。
ただ顔立ちは大人にしては若い、まだ少年らしいあどけなさが、そこかしこにありました。
薄茶の前髪が少し乱れかかりながらも、すっきりした鼻梁がとても綺麗です。
それはそれは、とてもさわやかな風貌でした。
──まあ、なんて綺麗な黒曜石みたいな瞳なんでしょう。それに私と同じマロンクリーム色の髪だわ。
デイジー姫は若者から目が離せないのか、長い睫毛をパチパチさせました。
「すまない、僕が目を離したすきに……」
「え?」
デイジーは若者の発した言葉の意味が分かりません。
すまないって?どういう意味……
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「うああ、鼻が痛ぇぇ……石が当たった!」
「いってええ。俺の大事な顔が……」
石をぶつけられた2人の男たちは、両手が血だらけになっていて大慌てです。
「アニキたち、顔から血がダラダラと……すごいぞ!」
前歯が欠けた男が真っ青になって2人に首のスカーフを手で引きちぎって渡していました。
どうやらこの男は2人の子分みたいです。
「クソ!誰だ石を投げた野郎は……あ?」
鼻から血をだしてる髭面の男が、若者の顔を見て一瞬怯みました。
「ヤバ……ダルじゃねえか!」
顔に傷のある男も若者を見て叫びました。
「そうだダルだよ。ジロルとヤン、お前ら懲りずにまた女をひっかけようとしたな!」
「あ、ダル……いや、違うんだ!」
「何が違うっていうんだ。先日も同じ事して騎士団に捕まって牢屋にぶち込まれたばかりだろう。また同じ事したら、今度こそ縛り首にするって、団長からいわれなかったか?」
若者は仁王立ちで3人の男たちの前にズンズンと大股で歩み寄りました。
「あ、いや……誤解だダル!」
「そうだよ俺たち、ちょっとこの子が具合悪かったから解放しようとしただけなんだ」
「嘘つけ!また連れ込んでアコギな事しようとしたんだろう!」
「アニキ、やばいよ。今度捕まったらただじゃすまない。逃げようぜ!」
「クソ、行くぞ!」
「ダル、覚えてろ!」
と鼻血を押さえた傷のある男と、頬が血で染まった髭面の男は捨て台詞を残して逃げて行きました。
「ふん、しょうもないゴロツキ野郎め。兄さんに行って治安を徹底してもらんとな」
といいながら、若者は紺色のチョッキのポケットから2,3個、石を取り出してそのまま地面に捨てました。
どうやらその小石で2人の男たちの顔をめがけて、見事に投げつけたようです。
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「あ……」
後ろにいたデイジー姫は、初めは呆気にとられていましたが、後姿の若者が自分に振り返ったのでドキッとしました。
デイジー姫は夕日を背にして光り輝く若者がとても眩しく見えました。
「あ、あの……見知らぬお方、私を助けてくれてありがとう」
とデイジーは精一杯の感謝をこめてお礼をいいました。
「なんの……逆に僕が貴方を見失ったばっかりに、怖い思いをさせちゃったね」
「え、どういう事?」
「あ、申し遅れたが、僕はダルタニアンと申します。王都近衛騎士団の団長の弟で、この度、貴方の警護を頼まれました」
「え、私の警護?」
「そうです。貴方は王宮のデイジー姫の侍女でアンヌ様でしょう」
「え?」
「なんでもデイジー姫がこの度お身体を悪くしなさって療養中となり、いっとき宮廷からお暇をだされたとお聞きしました。その間、僕の家、つまりバークリー家にお連れしろと、近衛騎士団の兄から依頼されましたよ」
「なんですって。私が侍女のアンヌ?」
デイジー姫は驚きました。
確かにアンヌはデイジー姫の専属侍女の名前です。
──でも、なぜ私がアンヌ?
デイジー姫は何が何やらわからず戸惑うばかりでした。
どうやら若者の説明だと、デイジー姫は侍女のアンヌだと思われているようです。
このダルタニアンという若者とこの先、デイジー姫はどんな関係になるのでしょうか。
※ 最後までお読み下さりありがとうございました。
※ 2/24、連載投稿チャレンジにぎりぎり間に合いました。
ここからは不定期で連載します。それでも週1か週2と続ける予定です。
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