3. いつも床を見て歩くお姫様
※デイジー姫の奇行はどんどんエスカレートしていきます。
※2026/9/2 追加修正済み
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『デイジー姫は夜ごと花園で呪文をする魔女』と悪噂が広まってから、デイジー姫は自分の外見にも無頓着になっていきました。
さらにますます食も細くなり、ガリガリに痩せていきます。
それまで愛らしかったデイジー姫のぷにぷにした二の腕は、ごぼうのように細くなり、髪の毛もバサバサで伸び放題です。
そのありさまをみた城の者たちは、“デイジー姫はまるで案山子だ”とヒソヒソと噂しました。
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城内の廊下でも、デイジー姫はいつだって俯きながらフラフラと歩いていました。
そのせいで向こうから来る人や、廊下の脇にある柱や置き物によくぶつかりました。
ある日のこと。
珍しく散歩をしていたデイジー姫が部屋に戻った時、彼女の体はスリ傷だらけでした。
「きゃあ~! デイジー様、どうなさったのです!!」
その姿を見た乳母が悲鳴をあげました。
デイジー姫は全身、びしょぬれでした。
おまけに顔もべったりと泥がついてて、ドレスも泥まみれ。
擦りむいた手足は、あちこちキズだらけで血がにじんでいました。
「乳母様、申し訳ありません。姫様は雨上りの中庭に出て、下ばかり見て歩くので、通りすぎる度にモノにぶつかって転んでしまいました。おまけにその拍子で泥に汚れた池まで落ちたのです。後ろでお供していた私共は、間に合わずお助けできませんでした」
「まあ、なんということでしょう……」
乳母は叫びお付のメイドたちは平に謝ります。
「おおげさねえ。ちょっと擦りむいただけよ。乳母が調合したいつもの蜂蜜薬を塗れば治るわ」
とデイジー姫のあっけらかんとした発言に、呆気にとられるメイドや乳母です。
「ああ姫様……なんとおいたわしい……」
赤子の頃からデイジー姫を見てきた乳母は、あまりの変り果てた姿に、涙がこぼれて仕方がありません。
──駄目だ。これはもう、私の手にはおえない。
乳母はとうとう匙を投げて、王妃様にこれまでの事を一部始終報告しました。
すると王妃様も何度もデイジー姫を諌めましたが、彼女はいうことを聞きません。
──駄目だ。これはもう、私の手にはおえない。
困り果てた王妃様も匙を投げて、王様に相談しようと決めました。
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一方、デイジー姫の悲惨な姿を、遠くから見つめる城の従者や官僚たち。
彼らもヒソヒソと噂し始めます。
「デイジー姫は、頭がおかしくなってしまった!」
「おいたわしや姫君。幼い頃は、わたしら下々の者にも、いつもにこやかに微笑んでくれた、あの “可愛いおちびちゃん” だったデイジー様が!」
と彼女を慕って嘆く者も少なからずいましたが、
「なんだ、あのボウボウ髪は!──みっともない。なぜ姫様は髪を切らないのだ!」
「あれではまるで畑の案山子!」
「ホントだよ、あの姿が我が国の王女だなんて。恥ずかしすぎる!」
と顔をひそめる者たちも多数いました。
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そして誰よりも一番嘆き、怒ったのは王様でした。
デイジー姫の父親といえども国王です。
姫君としての行いをしない者には、実の娘にもとても厳しいお方でした。
「三女とはいえ王国の王女ともあろうものが、行事には一切顔をださず、ひいては部屋に引きこもり、おかしな奇行をしているとはけしからん!」
王様の癇癪に慌てた王妃様と、上の二人の姉君様が王様の怒りを宥めようとしました。
「王様、どうかどうか、どうかお気をお静めくださいませ」
「そうですわ父上、デイジーはすぐ元の素直なデイジーに戻りますわ」と長女のローズ様も必死にかばいました。
「そうですわ。わたしたちもデイジーに言いますから、どうか父上、お怒りをお納めください」
と次女のリリアン姫様もローズ姫様に加勢します。
しかし、王様は姉君様たちがデイジー姫を庇っても、けして首をたてには振りませんでした。
それどころか、王様の怒りはますますエスカレートするばかり。
「ならん! 既に家臣の報告ではデイジーは何か月も部屋に引き籠ってると聞いた!」
王様の怒号は王族の部屋中に響きわたりました。
「ローズとリリアン、お前たちはデイジーを気遣ったのに、あの娘はお前たちに会いたくないというではないか!」
「「まあ、そこまで知っておいででしたの」」
お傍にいた王妃様も驚きました。
「知ってるもなにも、全て筒抜けじゃ!」
「「ああ王様、どうかお許しを……」」
普段はめったに怒らない王様でしたが、躾には誰よりも厳しい方でした。
なので、デイジー姫の奇行や我がままを黙って許すわけにはいきません。
「お前たちも末っ子だからと、デイジーを甘やかしてばかりいたのがいかんのだ! よもやあの子のためにはならん!──王女なら王女としての役目を果たさねば!」
王様は叫びました。
「よいか、デイジーは王女でもない! つまりワシの娘ではない!」
「王様……」
こうして王様は大きく指を指して、お側にいた重臣に命じます。
「明日にでも即刻、デイジーを城から追い出せ!」
「「ええ、王様!それは……」」
さすがに驚く重臣たち。
「「王様、それは流石に酷い仕打ちですわ!」」
慌てて王妃様、姉君様たちも必死にお止めました。
しかし、王様は命令を覆しませんでした。
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こうして翌朝──。
デイジー姫は使用人の服と替えの下着を二枚。
少しの食物と水。
貨幣が少々入っている巾着袋を渡されて、お供もつけず城から追い出されてしまいました。
※ デイジー姫はとうとうお城から追い出されてしましました。




