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みにくい顔だと思い込んでいるお姫様のおはなし  作者: 星野 満
第一章 王宮編

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3. いつも床を見て歩くお姫様

※デイジー姫の奇行はどんどんエスカレートしていきます。

※2026/9/2 追加修正済み

✧ ✧ ✧ ✧


 


 『デイジー姫は夜ごと花園で呪文をする魔女(まじょ)』と悪噂(デマ)が広まってから、デイジー姫は自分の外見にも無頓着(むとんちゃく)になっていきました。


 さらにますます食も細くなり、ガリガリに痩せていきます。

 

 それまで愛らしかったデイジー姫のぷにぷにした二の腕は、ご(・)ぼ(・)う(・)のように細くなり、髪の毛もバサバサで伸び放題です。


 そのありさまをみた城の者たちは、“デイジー姫はまるで案山子(かかし)だ”とヒソヒソと噂しました。

 


✧ ✧



 城内の廊下でも、デイジー姫はいつだって俯(うつむ)きながらフラフラと歩いていました。

 

 そのせいで向こうから来る人や、廊下の脇にある柱や置き物によくぶつかりました。


 ある日のこと。

 珍しく散歩をしていたデイジー姫が部屋に戻った時、彼女の体はスリ傷だらけでした。


「きゃあ~! デイジー様、どうなさったのです!!」

 

 その姿を見た乳母が悲鳴をあげました。


 デイジー姫は全身、びしょぬれでした。

 おまけに顔もべったりと泥がついてて、ドレスも泥まみれ。

 擦(す)りむいた手足は、あちこちキズだらけで血がにじんでいました。


「乳母様、申し訳ありません。姫様は雨上りの中庭に出て、下ばかり見て歩くので、通りすぎる度にモノにぶつかって転んでしまいました。おまけにその拍子で泥に汚れた池まで落ちたのです。後ろでお供していた私共は、間に合わずお助けできませんでした」


「まあ、なんということでしょう……」


 乳母は叫びお付のメイドたちは平(ひら)に謝ります。


「おおげさねえ。ちょっと擦(す)りむいただけよ。乳母が調合したいつもの蜂蜜(はちみつ)薬を塗れば治るわ」

 

 とデイジー姫のあっけらかんとした発言に、呆気(あっけ)にとられるメイドや乳母です。


「ああ姫様……なんとおいたわしい……」


 赤子の頃からデイジー姫を見てきた乳母は、あまりの変り果てた姿に、涙がこぼれて仕方がありません。 



 ──駄目だ。これはもう、私の手にはおえない。


 乳母はとうとう匙(さじ)を投げて、王妃様にこれまでの事を一部始終報告しました。

 

 すると王妃様も何度もデイジー姫を諌(いさ)めましたが、彼女はいうことを聞きません。


 ──駄目だ。これはもう、私の手にはおえない。


 困り果てた王妃様も匙を投げて、王様に相談しようと決めました。



✧ ✧


 

 一方、デイジー姫の悲惨な姿を、遠くから見つめる城の従者や官僚(かんりょう)たち。

 

 彼らもヒソヒソと噂(うわさ)し始めます。


「デイジー姫は、頭がおかしくなってしまった!」


「おいたわしや姫君。幼い頃は、わたしら下々の者にも、いつもにこやかに微笑んでくれた、あの “可愛いおちびちゃん” だったデイジー様が!」


 と彼女を慕って嘆く者も少なからずいましたが、


「なんだ、あのボウボウ髪は!──みっともない。なぜ姫様は髪を切らないのだ!」


「あれではまるで畑の案山子(かかし)!」


「ホントだよ、あの姿が我が国の王女だなんて。恥ずかしすぎる!」

と顔をひそめる者たちも多数いました。



✧ ✧ 


 そして誰よりも一番嘆き、怒ったのは王様でした。


 デイジー姫の父親といえども国王です。

 姫君としての行いをしない者には、実の娘にもとても厳しいお方でした。


「三女とはいえ王国の王女ともあろうものが、行事には一切顔をださず、ひいては部屋に引きこもり、おかしな奇行をしているとはけしからん!」


 王様の癇癪(かんしゃく)に慌てた王妃様と、上の二人の姉君様が王様の怒りを宥(なだ)めようとしました。


「王様、どうかどうか、どうかお気をお静めくださいませ」


「そうですわ父上、デイジーはすぐ元の素直なデイジーに戻りますわ」と長女のローズ様も必死にかばいました。


「そうですわ。わたしたちもデイジーに言いますから、どうか父上、お怒りをお納(おさ)めください」

 と次女のリリアン姫様もローズ姫様に加勢します。

 

 しかし、王様は姉君様たちがデイジー姫を庇(かば)っても、けして首をたてには振りませんでした。


 それどころか、王様の怒りはますますエスカレートするばかり。


「ならん! 既に家臣の報告ではデイジーは何か月も部屋に引き籠(こも)ってると聞いた!」


 王様の怒号(どごう)は王族の部屋中に響(ひび)きわたりました。


「ローズとリリアン、お前たちはデイジーを気遣ったのに、あの娘はお前たちに会いたくないというではないか!」


「「まあ、そこまで知っておいででしたの」」


 お傍にいた王妃様も驚きました。


「知ってるもなにも、全て筒抜(つつぬ)けじゃ!」


「「ああ王様、どうかお許しを……」」


 普段はめったに怒らない王様でしたが、躾(しつけ)には誰よりも厳しい方でした。


 なので、デイジー姫の奇行(きこう)や我がままを黙って許すわけにはいきません。


「お前たちも末っ子だからと、デイジーを甘やかしてばかりいたのがいかんのだ! よもやあの子のためにはならん!──王女なら王女としての役目を果たさねば!」


 王様は叫びました。


「よいか、デイジーは王女でもない! つまりワシの娘ではない!」


「王様……」

 

 こうして王様は大きく指を指して、お側にいた重臣に命じます。


「明日にでも即刻(そっこく)、デイジーを城から追い出せ!」


「「ええ、王様!それは……」」


 さすがに驚く重臣たち。


「「王様、それは流石に酷(むご)い仕打ちですわ!」」


 慌てて王妃様、姉君(あねぎみ)様たちも必死にお止めました。

 しかし、王様は命令を覆(くつがえ)しませんでした。



✧  ✧



 こうして翌朝──。

 デイジー姫は使用人の服と替えの下着を二枚。

 少しの食物と水。

 貨幣(かへい)が少々入っている巾着袋(きんちゃくぶくろ)を渡されて、お供もつけず城から追い出されてしまいました。




※ デイジー姫はとうとうお城から追い出されてしましました。

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― 新着の感想 ―
ええっ!あんなに可愛かったデイジーちゃんがそんなことに…(ToT) ついに追放まで…これからどうなっちゃうのデイジーちゃん。 でも、でも…王様もホントは心配してるんだよね?だって可愛い娘なんだもんね…
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