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エッセイ

ニオイが記憶を弄る時、ぼんやり思うこと…

作者: たかさば

 どうも、どうもどうも。

 わりかし頻繁に、身近に漂ってくる食べ物のにおいに影響されて晩ごはんのメニューを決めがちなものです。


 本日は、地球という星の上で生きとし生ける皆さんと空気を共有しているがゆえに不意に遭遇するニオイというものについて、中途半端な感じで(したた)めてみようと思います。

 ぼちぼちマニアック&微妙ではありますが、よろしければお付き合いくださいな…。


 道を歩いていて、ふと…嗅ぎ覚えのあるニオイに遭遇する事ってありませんか。

 香りというのは脳に刻み込まれるとかなんとか聞いたことがあるんですけど、確かにその通りだなと思うことがボチボチあったりしましてですね。


 あ、このニオイ知ってる…と思うと、とたんに脳内で記憶の大捜索が始まるんですよね。

 この現象、プルースト効果とかいう名前がついているらしいんですけれども。


 この…、少し遠くにゴージャスがいる感じは……、そうだ、バイト先の○○さんだ!

 この…、どこそこしょぼい感じが拭えない香りは……、ああ、昔よく通った児童館の談話室だ!

 この…、チクチク刺さるような尖がった感じは……、たぶん会社でやり合ったアイツの香水!

 この…、なんだかとってもまろくて安心感のあるにおいは……、いつもニコニコ笑っていた○○さんち!

 あ、このにおい、高校の購買部じゃん。

 あ、このにおい、夏休みに泊まったお寺のお堂じゃん。

 あ、このにおい、産婦人科の大部屋の共同トイレじゃん。

 あ、このにおい、大学の学生会室の倉庫の奥じゃん。

 このにおいは…、○○ちゃんがよくごちそうしてくれたお茶だ…。

 このにおい…、○○がカッコつけて吸ってた煙草だ…。

 このにおいは、○○先生の車のにおいだ!

 このにおい、○○さんの発表会の時に置いてあった花束と同じだ!

 このニオイは春が来たからかげるやつ、このニオイがしたからもう夏だな、秋の匂いはちょっと物悲しいからテンション上げるためにうまいもん食わねば、キンと鼻の穴に突き刺さる冷たい空気の味気なさときたら…よしこってりラーメン食いに行ったろ!


 もともとデカい頭にいろんな情報を雑多に詰め込みがちなこともありまして、ここぞとばかりに脳みそが騒ぎ出すんですよね。

 ま~、過去の記憶やら出来事やら感情の起伏やらがサプサプと思い出されまして、楽しいような、めんどくさいような。


 ニオイって、地味にめちゃめちゃ脳を活性化させるんですよ。

 過去の記憶にくっついてるエピソードなんかも一緒に思い出したりして、創作の糧になってるような面もあったり、なかったり…、いや、めっちゃあるな……。


 …記憶というのは、自身の脳内にインプットされた()()の情報のひとつじゃないですか。脳の所有者である私…人間ってのは時間の経過とともにぼちぼち変化していくけれども、記憶そのものは時を重ねていけないので、情報自体は不変なわけですよ。

 場所や建物、草花や食べ物のにおい、季節なんかならいざ知らず、人ってのは自分の知るにおいをそのままずっと纏い続けているとは限らないので…、何十年も会っていないのにそのニオイを持っていた人のかつての姿をありありと思い出せる一方、実際に記憶の中に残る人物とすれ違ったとしても同じニオイがしなければ風貌の変化に惑わされて気付くことはない…、みたいなパターンもあったりしそうで、なんだか切ない事はさておき。


 あらゆるニオイをかいでは、気さくな感じで過去を思い出している私なんですけれども…。たまに…こう、なんだかやけに…、違和感?のようなものを感じるような事もありましてですね。


 何のニオイかははっきりしないけど、知ってるニオイのような気がする…、なんとなく昔の出来事を思い出すニオイだなと思いながらぼんやり無駄に時間を過ごしてしまうみたいな。

 思い出せなくなってしまった記憶がニオイにくすぐられてひょっこり目覚めて、どうにか元の姿を取り戻そうとしているような感覚とでも言うんですかね。結局思い出せなくて、まあいっか…と、サプっと忘れちゃうんですけれども。


 なーんでこのニオイがするんだろって、不思議に思うパターンなんかも気になるんですよ。明らかに何もないのに、なんかにおう…みたいなやつですね。 


 ……何もない場所で線香のニオイがする時は【成仏した誰かが会いに来ている】的な話、聞いた事ないですか。誰もいないのに…、知ってる人のニオイがしたなあと思っていたら、後日訃報を聞いた…とかなんとか。


 似たような話を身近で耳にすると…、やけに妄想が捗るんですよね〜。

 なんとなくモヤモヤするのは、網膜に映り込まない誰かが凸してウロウロしてるから?

 もしや見えない・気付かないのをいい事にあんなことやこんなことを───!

 もうね、執筆の筆が進むのなんのって。


 視認できない相手とは…意思の疎通が叶いませんのでね。わざわざ律義に挨拶に来たのか、からかってやろうと乗り込んできたのか、恨みを晴らしに馳せ参じたのか…、一方的に推測するしかなくて多少偏った解釈になってしまうのがなんとも遺憾であります…。


 微塵も物質として存在していると思えない魂がニオイを発しているとは考えにくいのですが、なんとなく…、個人的には、脳みそにニオイが刻み込まれるように、魂にもニオイがこびりついているような気はしないでもないんですよ。

 【自発性異嗅症】なんていう病気を発症しているパターンなんかもあるようなので、100%オカルト方面に持っていくのもいささか無鉄砲過ぎるような気もしますけれども。


 まあ…似たようなニオイを感じて、勝手に思い込んで自主的に怖がってるだけなんだろうね、そうそう不可思議な事に遭遇するかいな。


 …なーんて、ヘラヘラしながら、のほほんと暮らしていたわけなんですが。


 ちょっと前…、いつものように日課のウォーキングに出かけて、いつものようにでっかい公園をひとまわりして、ちょっとベンチで休憩でもと思って腰掛けた時の事なんですけどね。


 何やら…懐かしいニオイを、感じたんですよ。


 今前を通過して行ったスロージョグチームのお姉さんたちの誰かの香りかしら…?

 この…、ちょっとお高い化粧水のニオイは…、なんか嗅ぎ覚えがあるぞ…。


 これはたしか…、昔お世話になった人…ええと名前は何だったっけ、その人の香りだ…。あの頃はいつも仕事の愚痴で盛り上がって、しょっちゅう飲みに行って、ちょっと全身むくみがちにはなったけど楽しかったんだよね…。家庭の都合でいきなり引っ越しされたからお別れの挨拶をすることができなくて、自分も職場を離れたせいでさらに縁遠くなっちゃって…。お笑いライブとかまだ行ってるんだろうか…お気に入りで一緒に応援してた芸人さん、引退したんだよね…。連絡先、携帯からスマホに乗り換えた時にミスって消しちゃったから、向こうから連絡してくれるのを待ってたんだけど時間が過ぎちゃって…今も元気にしてるのかな?お子さんも大きくなったんだろうなあ…。


 意識を20年昔に持っていき、しばし…すっかり記憶の海の端っこの方に追いやられていたエピソードを手繰り寄せ、懐かしいシーンを頭の中に広げていたらですよ。


 ブーン、ブーン……


 スマホに、見慣れない番号の…着信がありましてですね。


 私、普段は非通知や見覚えのない電話番号には出ないと決めているんです。間違い電話や怪しい勧誘の電話、即ギリなんかであることがほぼほぼだし、基本的にかかってくるような番号は全部登録済みなので。


 でも、なんだか…とっても電話が気になってしまいましてですね。

 珍しく…出てみようかなという気になったんですよ。


「もしもし……?」


 思い切って、スマホに出てみた私が聞いたのは…。



 どんな、内容だったと、思います…?

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― 新着の感想 ―
〉どんな、内容だったと、思います…?   思わせぶり、イクナイ! ……で、誰からのどんなハナシだったんでつか?wktk
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