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監禁in異世界

 #なんだろうがよ!?」


 こいつらはなんでこんな急……あれ? なんか部屋狭くない? なにこれ?

 すごい豪華だった気がするんだけど、なんか物置? なにここ?

 リースデン……?


 じゃらっ……。


 じゃら!? じゃらってなに!?

 いやこれ待って鎖じゃん!?


 コンコン、とノックの音がする。


「なに?」と俺は返すが、ドアがわずかにあけられてパンっぽいなにか(古そう、ぼそぼそしてそう、栄養なさそう)が差し込まれた。


「お目覚めですか、イエルデンさま? お食事です」とだけ言った声はリースデンでもメイド長でもない。


 ドアはすぐに締められた。


「あれ……リースデンは?」

「リースデンは解雇されました」

「なんで!?」

「イエルデンさまの教育失敗の責で領土外へ追放される予定です。いまは裁判の結果を待っています」


 ちょおおっと言ってる意味がわからないですね?


「ちょっと待って。なにが起こってるの?」

「なにが……? ……しかし……。イエルデンさま、魔法はお使いになれますか?」

「いや、教わってないけど」

「……失礼」とドアが相手入ってきたのは、見知らぬ女性だった。

「あなたは?」

「……え? ……メイド長のファーシェルです。すでに半年お世話させていただいたおりますが……」

「すまないが、状況がよくわからない。ぼくはいまいくつだ?」

「……6歳です」と半歩下がって、ファーシェルはドアに近づく。


 俺は必死に7万3千倍しようとするが、どうも5年と半分くらいのような気がするが……。

 ああ、数え歳か。わかりにくいわ。


「あと半年で7歳?」

「左様です」とドアノブに手をかけるかかけないか悩んだ様子でファーシェルは言った。

「すまないが、なんで俺がこんなところに入れられてるか、教えてくれるか?」

「覚えておいででない……?」とドアから手を離す。


(わかりやすいな、メイド長!)


「すまないが、本当に理解できないのだ」と俺はできるだけ知的に言った。


 なに、あふれる知性をほんのすこし解放するだけでいい。造作もない。


「いつもとちがってなにかこう……失礼ながら()()()の知性はあるように感じられますね」


 嫌そうにメイド長が語った俺の奇行はなかなかだった。


 まずことの発端は俺が前回地球に戻ってすぐのこと。

 イエルデン=リックリードの愚鈍な4歳誕生会は社交界の伝説らしい。

 はしゃぐ。

 話が通じない。

 そしてずっとリースデンにしがみついていたらしく、しかも目つきがいやらしい。

 品性という品性が欠落した行動をとっていたと聞いております、とファーシェルははっきり言った。


 これにより、親父は俺の廃嫡を考えたらしいが、ほかに男児が産まれなかったことがさいわいした。

 それから2年ほどはただの愚鈍な4、5歳児だったらしいのだが、6歳の誕生日、トドメの事件が起こった。


 イエルデン=リックリードの魔法拒否事件だそうだ。

 ひととおり話を聞くと単純だがひどい事件だった。


「確認だけど、全員6歳で魔法を覚えさせてもらえるということ?」

「いいえ。領主さまの御子息でなければ、その歳で魔法に触れることはありません。多額とまでは言えませんが、それなりにお金がかかりますので、たとえば農村の子どもたちが自立する前に魔法に触れることはめずらしいのです」

「なるほど。それで、俺はその魔法を授けてくれるえらい司祭を?」

「ですから、殴りました。そのときすでにマリレルは隠居間近でしたが、あまりの心痛に早めて隠居いたしました」


 とんでもねえやつ!

 俺だけど!

 っていうか、ポロジーのせいだけど! あいつが俺の性格を変な分析したせいだよ、まったく。


「まるで赤子のようだ、と司祭さまはお怒りになり、旦那さまはイエルデンさまをここで暮らさせるようお命じになりました」

「親父もなかなかの決断をする」

「殴って騒ぐまででしたら、いつものことだとおっしゃったでしょうが、そのまま泣きじゃくりながらリースデンを探し回るというじつにはしたない行動をとられたのです。リースデンはその場にはおりませんでしたので、延々泣きじゃくっておられました」

「それにしてもこれはひどくない?」と俺は鎖をじゃらつかせる。

「あなたは窓を割ってお逃げになるので、旦那さまがお命じに」


 なぜかというのはまあ、訊かないでおこう。


「ずっとリースデンを探すのです」


 言いやがった。聞いてないのに!


「ちなみにリースデンは?」

「お教えできません。お逃げになるでしょう?」


 だよねー。


「追放はいつか、って訊いてる。場所は訊いてない」

「もう3ヶ月になりますので、そろそろかと」

「親父と話したい」

「あとでお伝えしておきます」

「ありがとう。それから……あれ……ええと……。妹ってなんて名前だっけ?」


「バエリアさまです」とファーシェルはそそくさと部屋を出て、ドアを閉めてから言った。「あなたと同じく、3歳になられるのになにもしゃべられず、ほとんど寝ておいでです」


 やらかしたああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 だよねー、いや、俺も妹の名前覚えてないのはダメだなーって思ったんですけど。

 まあ、ダメだよね。わかる、わかるけどさあ……。

 中身の名前はルルカっていうんですよ、と声を大にして言いたい。

 覚えられるかよ、バエリアだかパエリアだか混乱するんだよ! 2択だったの! 本当に! 念のためだったの! 本当に!


「旦那さまには、()()()()お伝えしておきます」とファーシェルは言って、どこかへ歩いていく音がした。



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