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ハロー、おにいちゃんだよ?

【2017年7月15日 午前11時28分】


 ♮つぉるん!?」

「あ?」

「大尉、帰還しました」

「見てりゃわかるよ、おい、桐村、いくらなんでも早すぎないか? っていうかポロジーも推奨つけんなよ、自力でなんとかしろよ。無視ったら審議入るだろうが」

「20分以内の再出発を推奨します」

「だろうよ。20分ももつのか?」

「1013日程度経過します」

「これだけ短い滞在だったらオート効かないだろ」

「いちおう入れてあります。ただし、ご指摘のとおり影響は限定的です」

「相当ぼーっとした3歳になってんだろうがよ。おい、急げ、さっさとまた行け、桐村」

「えっ!? 俺ですか?」と突然話が振られた俺は答える。

「おまえ以外に行くやついねえんだよ」となぜかキレている。


 なぜかキレているこの少女。

 おそらくは俺がマッティの床に転がっていたときの仁王立ちガールだろう。たぶん。声もよく覚えてないけど。


「あの……さっきのはなんなんですか?」

「異世界だよ、異世界。おまえは行って、すぐに戻ってきやがった」

「いやあの……なんで異世界に?」

「きぼうほうの効果。異世界に行けたのは我々の技術。異世界は便宜的。実体としては別銀河の別惑星。以上。さあ、もどれ」


 無茶苦茶だ。

 無茶苦茶すぎて、無茶苦茶だ。


「いや、ほんとに待ってくださいって」

「あーもう、うっさい!」と仁王立ちガールはどこかからか明らかに銃のようなものを俺の額に押し付けた。「理解をしろ。感性の問題だ」


 バカを言え。感性なわけあるか。


「……ど、努力します」

「大尉、原生生物に対する合意なき威嚇行為は――」

「わかった。悪かった。めんどくさいから宇宙法の読み上げはやめろ。ポロジー、話を進めろ。ダルすぎて眠くなる」と武器を彼女は下げた。

「威嚇行為の中断を確認しました。大尉のご要望に合わせると原生生物の合意後、各種説明をイセカイで行うことが合理的と判断されます。したがって、当該行為の合意を得てください」

「よし、桐村。異世界へ行け。宇宙人の侵略から地球を守るために異世界で魔法を習得してこい。やれるな?」


 やれねえっつってんだよ!

 なんだこいつ、話が通じねえにもほどがあるぞ。


「ああああああああああああ!?」と仁王立ちガールは突如声をあげた。「待て、待てよポロジー。アタシ、こいつをさっき異世界飛ばしたよな?」

「はい。きぼうほうをそのように大尉が設定され、発射。のち、原生生物に着弾。即時テンセイしました。私は大尉の『あっちに行くとき追いかけて説明してやれ』という事前命令に従い、即時移動しました」

「これ、合意なし扱い?」

「もちろんです。大尉の過失になります。緊急事態ということで、ある程度の酌量はされる予定です。全ミッション終了後に懲罰委員会にかけられます」

「クソが! やっちまった!」とやはりキレている。


 こいつはたぶん、なにがあってもキレる。したがって、


(あ、お空キレイ。でもまわり結構大惨事)


 俺が思ったのはこれくらいだ。


「空眺めてんじゃねえよ。ああもう、どうしてこうもグダグダになるんだよ!」

「大尉の墜落の影響により、予定外に原生生物に生命の危機が訪れたためです。緊急事態を予見せず、きぼうほうの設定を変え忘れたことも過失です。それにより、テンセイポイントが予定外に早まり、結果現在イセカイでの原生生物のヨリシロは局面が時間経過とともに悪化しています」

「わかった。わかったってば。責めるなよ」

「責めてはいません。大尉のご質問にお答えしたまでです」


 ふう、と大きく息を吐いた。


「いいだろう、桐村宗太郎。とりあえず、向こうに行け。2年過ごしたら一旦帰ってきてもいい。それだけあれば、向こうでの行動パターンをポロジーが解析できる。10分程度ならまたこっちに滞在できるだろう。ポロジー、それで問題ないか?」

「最良と目されます。原生生物の合意、という観点をのぞけば、ですが」

「だいじょうぶ、納得した。な、桐村?」


 し

 て

 ね

 え

 って。

 おまえはさっきから行け、やれ、行け、しか言ってねえんだよ。

 いっさい交渉のフェーズが進んでねえ。


「いやー、どうなんですかね……ははは」

「ははは、じゃないんだよ。地球の危機だぞ」


 そのまえに俺が危機だろ! っていうか、俺の怪我どうなったんだよ。

 あーもう! キレてえのはこっちだよ!

 なんだよこれ、なんでだよこれ、なんなんだよこれ!


「大尉、原生生物に大きな混乱が見られます。このままでは合意困難と見受けられます。すでに当該イセカイでは1年経過しており、状況のさらなる悪化が予測されます」

「どうしたらいいんだよ! こいつものわかりが悪いんだもんだって! しょうがなくねえか!?」


 ものわかりが悪い扱いをされました、俺です。

 逃げたい、以外の感情はありません。

 謎の球体とキレやすい少女がノンデリのカタマリみたいな会話をしていますが、やはり逃げたい以外の感情がありません。


「あっ! こら! 逃げんな! 撃つぞ」

「ひっ!? いや、走りたくなったんですよ」と俺は言った。

「地球が滅ぶっつってんだよ」

「いや……あの、立ち話もなんなので……?」


 なにしろ、マッティ……いや、大きく崩れているのですでに()マッティのレベルだが、とにかくガレキでなんかこげ臭い。ちょっと火も上がっている気がする。

 まず逃げたほうがいい。


「気にするな。不時着したあとすぐにステルスした。このあたりは認識しにくい」


 いや、それほぼ魔法じゃーーーーーーん。

 でも燃えてるのは燃えてるじゃん。そんなんできるなら火を消せ、火を。


「大尉、これ以上の情報追加は原生生物の混乱を深めます。速やかな対応をお願いします」


 おまえも原生生物原生生物うるせえんだよな。


「どうしたらいいんだっつってんだよ、だからよ!」と仁王立ちガールはやはりキレる。


 カオスだった。


「大尉もイセカイに移動することを提案します」

「嫌だよ、いま転生したらこいつの妹とかになるだろ」

「その可能性は極めて高いです」

「ムリムリ」

「え、それならいいですよ」と俺は言った。


 お兄ちゃん一回やってみたかったんだよね!

 一人っ子だから兄妹に憧憬はある。


「は?」と仁王立ちガールはもはや表情をなくしている。「おまえ、ヤバいやつだな」


 おまえには言われたくねえよ。


「原生生物の条件付き合意を確認しました」

「クソ野郎が……」

「いや、え、ノリ……?」

「おまえ、ノリで人生壊すタイプだろ?」

「いや、ノリで生きてきたタイプです」と俺は明快に答えた。

「大尉、よろしいですか? 10分程度のテンセイが予定されていますので、現環境のステルス効果はギリギリ有効範囲と考えられます」

「これ、燃えたりしねえの?」と火の手の方を見て、仁王立ちガールは言った。

「付近半径3メートルに延焼防止は行ってあります」


 いや、3メートル以外は燃えるじゃんそれ。


「あーもう、わかった。時間が惜しい。いま15分くらいたったか?」

「18分経過しています。当該イセカイでは2.5年経過」

「行くぞ、おにいちゃん。あああああああああああああああああああああああムカつく!」

「ええ!? いや、ちょっと待って、すいません冗談で――」

「てめえ、いまさら冗談が通るとでも?」

「あ、はい……」

「ポロジー、転生」

「承知しました」


 その瞬間、俺の#

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