鳥 01
「ねえ、この家って広すぎない?」
「お前はなにを言ってるんだ?」
朝がきた、引っ越しをして最初の朝だ。
広すぎて社員食堂にでも使えそうなキッチンで朝食を食べているとピノが広すぎて疲れるとか言ってきた。
「もっと狭いほうがよかったかもね〜、引っ越しましょうよ」
「本当になにを言ってんのお前?」
あとで知ったんだが、この家を多目的ホールや宴会場にしてくれたのはピノの注文にアンドロイドさん達が応えてくれた結果だった。
「やっぱりお前は森で暮らせよ」
「虫がいるから嫌」
朝っぱらからカレーを食ってるピノを横目に、朝はパンと決めている俺は食パンにバターを塗る。
「このマーガリンていうの美味しいね」
食パンの両面にマーガリンをべっとりと塗りたくって食べている輝空奈は昨夜はバカでかいベッドで大の字になり熟睡していた、俺は天井が高すぎて体育館に布団をひいて寝ているような感覚になりなかなか寝つけなかったのにな。
「せっかくアンドロイドさんが建ててくれたんだから文句言うなよ」
「文句じゃなくて提案じゃんか」
大きければいいとは限らない見本のような家だからな、でも
「引っ越すつもりはないから」
「住んでれば慣れると思うよピノちゃん」
「けっこう図太いよね〜輝空奈って」
時刻は8時前、姫路テレビでは朝のニュースがやっている、どっかで新しい店がOPENしたとか、姫路の情報番組だ。
「これ美味しそうー、てぃあなオムライス食べたい」
「デミグラスソースが美味そうよね〜じゅるり」
「オムライスにはトマトケチャップだけどな」
もっぱらグルメ番組が主流なのだが、エルフ達には新鮮な文化らしくて高評だった、あとは1日中アニメを流しているアニメチャンネルとか映画チャンネルとかも好評をえている。
「最近1日中テレビを観ている引き篭もりエルフとかいるらしいわよ」
「パチンコ中毒よりはマシだろ」
こうしてまったりと朝食を食べたあと、俺達はダムガンに乗りに姫路港にある博士の工房へと行くのに左回りのモノレールに乗った。
「綺麗な街だね」
「輝空奈、右側の景色もオススメだからね!」
窓からの景色に夢中になる輝空奈とピノ
「本当に凄いね地球って・・・」
モノレールに乗りながら景色に夢中になっている輝空奈、カプセルの中で知識はつけているのだろうけど実際に自分の目で観る物は新鮮な感動をもたらしてくれるのだろうな。
「あれが姫路タワー、その横にあるのが姫路ドームよ」
「ふへえー、でっかいねえ〜何に使うのかな〜?」
「知らない」
いま姫路の街には建築物ラッシュなのだが作っても使うこともなくオブジェと化している、こうしてモノレールから見ると景色として映えるので乗り鉄達からは好評だった。
『次は姫路港、ダムガン研究所前です。』
「あーあ、もう着いちゃったよ」
「てぃあなモノレールで一周してみたい」
「また今度な」
乗っているだけで楽しい運賃無料の姫路モノレール、昭和に負の遺産と言われていた乗り物はこの時代では姫路のシンボルとなりつつあった・・・
「ふわぁ〜、本当にロボットがある」
姫路港にある巨大な格納庫にはダムガン達が立ち並んでいた。
「手前からV2.F91.ゼータ、マークII、よ」
口を開けて驚いている輝空奈にピノが説明していく
「全然わかんないや」
ポカンと口を開けて見上げる輝空奈はダムガンの1stシリーズを観始めたばかりだ、そもそも8歳の幼女に理解できるアニメではないしロボット物だからな、女の子が見るジャンルとはかけ離れているのだ。
「ダムガンは奥が深いからね!解んないところとかあったらあたしに聞きなさいな!」
「てぃあな全部わかんないや〜」
「全部か〜、そっか〜・・それはしかたないね〜・・・」
輝空奈に全部わからんと言われたピノはさすがに幼女相手にマウントをとるような醜い真似事はできずに返事を流したのだった。
そして格納庫に並ぶダムガンを眺めていると、奥のほうから博士が歩いてきた。
「福太郎くん、空を散歩するには最高の天気だね、V2の調整も完璧だから思う存分に飛んでくるといいよ」
「じゃあ軽く地球を一周してくるか、輝空奈に見せてやりたいしな」
「この前は観光だと言って敵に襲われたじゃん、まあさすがに今日は大丈夫だと思うけどね〜」
俺達がそんな事を言っていると
「これが飛ぶの?」
輝空奈がダムガンを見上げながらポツリと言った
「恐いかい?」
博士が輝空奈に優しく聞くと
「怖くはないけど、なんで人型なのかなって・・・」
『・・・・・』
誰もが一度は考える、なぜ人型なのだろう?という疑問を幼女は感じているらしい
「カッコイイからなのよ!」
「そうだな、カッコイイからだな」
「うむ、そのとおりだ」
大人の俺達の答えはカッコイイで完結だ
「うん、そうだね、すごくカッコイイね!」
幼女が気を利かせて笑ってくれた、かっこよければそれでいい、かっこよければ許される、ロボットも人もカッコイイは正義なのだ。
「とりあえず乗ろうか」
「そうね、乗ったら人型だろうがなんだろうが関係無いからね」
「それを言ったら・・・まあいいか」
そんなこんなで俺とピノと輝空奈でダムガンに乗り込んだ、輝空奈は補助シートに座らせる、ほへ〜っとコクピットの内を見渡していた。
「じゃあ行くか、福太郎、ダムガンV2、出る!」
「いっけ〜〜!」
俺の肩の上でピノが拳を突き上げる
ドシューーーーーーーーー!
いい音をさせながら俺達を乗せたダムガンV2は空へと舞い上がった
ちなみに発進するシーンはモニターに映しだされているのでコクピットの内にいる俺達も見ることができる。
「ふへえ〜、たしかにカッコイイね!」
発進する様子を見た輝空奈が褒めてくれる
「そうでしょ!これがロボットの醍醐味なのよ!!」
ロボットは浪漫、しかしそれが幼女に伝わるかは別として、今から観ていく世界の景色は輝空奈の情操教育に役にたてばいいな、と思うのであった。
いつも読んでくださりありがとうございます。
少し忙しくて書くのが遅くてすみません、これからも読んでもらえたら嬉しいです。




