あなた人間ですか?
「福太郎!福太郎!!起きてよ福太郎!!!」
「うーん、・・・ピノ?・・・」
少しずつ覚醒していく意識とともにうっすらと目が開いていくと、俺の顔を覗き込む妖精の姿があった。
「・・・」
青空が見える、背中には地面の感触。
どうやら俺は仰向けで寝ていたらしい、いや気を失っていたのか。
たしか俺は送還の儀で日本に・・・
「!!?」
俺は勢いよく上半身をおこした
ぴゃーーっと俺の顔に乗っていたピノが飛んでいく。周りを見渡しながら俺は立ち上がった。
「ここは大手前公園!」
俺が向こうの世界に召喚される前にいた最後の場所。
「姫路城だ・・・」
俺の視線の先には白く立派な城が建っている。
見間違えようが無い、あれは姫路城だ。
15年前の中学の夏休み、俺はここ姫路城の前にある大手前公園を通りすぎようとしてた時にあっちの世界に召喚されたんだ。
今回の送還の儀は召喚される前の[同じ時間、同じ場所]に帰してくれるというとんでもない高難度な儀式だったわけだが。
「成功しましたよ、師匠
日本に帰ってこれましたよ・・・」
ああここは姫路だ、兵庫県の姫路市、俺の地元だ。
俺は周りを見渡した、懐かしい街並みが見え・・
「あんな建物あったっけ??」
もう15年前の記憶だからか違和感がでてくる。ゆっくりと歩き出そうとして気づく、頭上でフワフワと浮かぶ小さな物体
「ピノ!なにお前浮いてんだ、こっちには妖精なんていないから見られると不味いって言ったろ!!」
「別にいいじゃん、だって誰もいないし」
そう言いながらピノはさらに上に飛んでいく、あいつめ!こっちに帰ってくる前にさんざん姿は隠せと言ったのに。メスガキ妖精め。
「だーれもいないよーー」
飛びまわりながらそう言うピノ。
そう、さっきから人がいないんだよ1人も。
ここは日本有数の観光地、昼なら人がたくさんいるのが普通なのに。
俺は道路のほうに歩いて行く、姫路城の前には大きな道路があって普段は多くの車が走っているんだけど。
「車が一台も走ってない、それに俺の知ってる街の景色とはやっぱり違うんだが」
俺は姫路城のほうを見る、やっぱり姫路城は姫路城だ、でも姫路の街並みがおかしい。
見たことない建物ばかりだ。
ここは姫路の中心地、姫路駅から姫路城まで一直線に太く大きな道路がのびている、姫路市民にとっては見間違えようない景色。
「俺の記憶がどうかしてしまったのか?」
不安になってきたとき、
「福太郎ーー、人がいるよー」
ピノがこっちに飛んできながら指差す方向には俺達のいる道路の反対側にある土産物屋さん。
その土産物屋の前に人が1人立っている。
女性だな。
「行ってみるか・・」
「行って話してみようよ!!」
俺の側でピノが浮いているが、もういいや、この状況は普通ではない
「ピノ、いちおう警戒しておけよ、どうなるかわからんから」
「りょーかい」
俺達は道路を横切って反対に渡っていく、ここは普通なら車がばんばん走っているのでこんなことできないんだけどな。
渡っていく途中で姫路駅の方を見るがやっぱり車なんていない。信号機はふつうに点いているのにな。
土産物屋に近づいていくと目当ての人物がこっちに気づき顔を向けてくる。
(若いな、女子大学生ぐらいか?可愛いな)
近づいた俺達を見た女性は驚いた顔をする、そりゃー妖精なんて見たら驚くよね。
と思っていたが、違った。
「まさか、そんな、、」
驚きながら俺のほうを見つめる。
妖精ではなくて俺を見て驚いてるの?
女性はさらにぶつぶつと独り言を言う
「でもこの反応は間違いありません、
ありえないことですが、ありえないことですが、今、わたしの前に存在しています、本当にありえないことですが・・・」
驚きすぎじゃないかな、俺なんかした?
「あのすみません、俺達ちょっと聞きたいことが」
俺が彼女に話しかけると、
「いえ、あの、まずはわたしのほうからひとつ質問させてもらってもいいでしょうか?」
と言ってきたので
「ええ構いませんが。」
「ありがとうございます。」
と丁寧にお辞儀をしてから俺の目を見つめて
「あなたはもしかして、人間でしょうか?」
と聞いてきた。