家
「体育館かよ・・」
これが最初の感想である
昼過ぎに完成してるであろう我が家を見に行くとアンドロイドのオサムさんが待っていた。
「どうだ坊主、これがお前の家だ」
そう言われたけども、とにかくデカい、多分これを民家だと思う人間は居ないだろうな
「ちゃんと一階建てにしておいたからな、階段なんてないぜ」
いやいや高さ10メートル以上あるんだが?
「大っきいわね!あたし達の家に相応しいわ!」
「妖精には犬小屋ぐらいの広さで良いと思うけど?」
「大妖精はね〜、重力に囚われない空間の支配者なのよ、広い空間が必要なの、でも羽の無いあんたには分からないかー、ヤダヤダ」
「それって外でいいんじゃないの?家いらないでしょ、森に帰りなさいな、妖精ってそういうもんでしょ」
「森は嫌、だって虫がいるもん」
ピノとエレムミーネのやりとりを聞き流しながら、普通の家でいいよって言わなかったかなと首をひねっていたら
「愛弟子よ、やっと来たのか」
「お父さま早くお入りになってくださいませ、凄いお家ですわよ」
師匠とフーナが玄関から顔をだして言ってきた
「あんた達は家主より先に入ってんじゃないわよ!」
ビューっとピノが家の中に入っていった、待ちなさいなとエレムミーネも続いて行く
「家主って俺だよな?」
「福太郎お兄ちゃんは苦労してるんだね」
そうだよ、俺の周りにいる女達はクセが強くて扱いづらいんだ、だから輝空奈だけは素直で普通な女の子でいてほしいよ、本当に頼むからね
「てぃあなは普通だよ」
そう言いながら輝空奈は家の中へと入っていった、結局俺は最後に入ることに、家主なのにな・・・
玄関に入ると新築の匂いがする、期間限定の香りだ。
「玄関は普通だな」
靴を脱いで廊下を見る、とんでもなく長い廊下だった、ミニ四駆でも走らせてみたくなるぐらいの直線。
「私はベルトコンベア式にして動く廊下にしようといったんだがね、採用されなかったんだ」
いつの間にか横に立っていた博士が言った
「全長105メートル、ケヤキで作った廊下だ、歩けば歩くほど味が出てくる、芸術品だ」
オサムさんが腕を組んで教えてくれる、民家に105メートルの廊下は必要なのか?
自動車でも走れそうな幅がある廊下を歩く、天井が高いから圧迫感は皆無だった
「なるべく扉はつけないで作ったからな開放感は抜群だろ?」
「天井から自然光をうまく利用してるから暗くもない、曇りや雨の日も一定の明かりを照明が上手く調整してくれるから問題もない」
「見ろ坊主、ここの座敷はホテルの宴会場をイメージにしたんだ、男なら皆んな好きだろ宴会場」
「ここは私が担当した部屋だ、洋風の宴会場を作ってみたんだ、素晴らしいだろ結婚式でも使えるぞ」
オサムさんと博士がいろいろと教えてくれるが、宴会場なんて作ってくれと頼んだ覚えはない、確かに素晴らしい出来だけどホテルニューオータニにも負けてない作りだけど、民家に宴会場は必要ありませんわ
「3人で住む予定なんですけどね・・」
「昨日の夕方の電話で、ピノ君の注文通りなんだけどね」
「そうだぞ、妖精のリクエストどおりだ」
ピーーーノ!いつのまに!!
森に帰してやろうとアホ妖精を探す
途中で広すぎて眠れないであろう寝室のベッドで熟睡しているエレムミーネや、映画館かよと言いたくなるホームシアター室で劇場版ダムガンを観ている師匠や、当たり前のようにある天然温泉で入浴をしているフーナとスターニャを見つけたが放っておいた。ピノは何処だ・・・
すると廊下の奥にゲームルームと書かれてある部屋があった、覗いてみると
「あんた、目押しもできないの?」
「うう〜、リールをみてると目が回るニャ〜」
「パチンコのほうが簡単よ、何も考えずにハンドル持ってるだけだから」
タマコとワンコにゲームを教えている大妖精がいた。
「どうだい福ちゃん、この部屋は本官が担当したんだ、スロットもパチンコも名機ばかりを選んだんだよ」
パチンカスさんが自慢げに言う
「やっぱりオシャレな家にはパチンコ台やパチスロ台を置いてあるものだからね、どうだい素晴らしいだろ?」
いらねえ!
本当にいらねえ!
「あっ揃ったニャ!」
「BARじゃん、ださー」
「けっこう面白いわねパチンコ、今度お店に行ってみようかしら」
「今度連れてってあげるわよ、天才パチンカーのあたしについてきなさいな」
「いいねー、友打ちかい?本官も混ぜてもらうよ」
楽しそうにゲームをする四人を見ながら俺は本当にこの家に住むのかと考える。
「住めば都って言うでしょ、きっと楽しくなるよ福太郎お兄ちゃん、知らないけど」
俺の横で『朝日あげ』を食べながら輝空奈が言ってきた、どこから持ってきたんだソレ?
「美味しいかい?朝日あげ」
「とっても美味しいよ」
ニコリと笑う輝空奈を見て女って図太いなと感心する
「お〜い福やん!」
アンドロイドのナナが俺に言う
「新築祝いの準備ができたやかい、宴会場に集合やとピノっち達にも言うたってくれへんかな」
なるほどさっそく無駄だと思っていた宴会場が役に立つ時がきたか
ピノやワンコ達を連れて宴会場に行く、マジで何を言ってるんだとおもうが宴会場に集合する。
そこには豪華な祝いの料理や飲み物が並んでいた
「さあ、早速ですがお買い上げ頂いた服を着てもらいましょうか」
ボッタクリ店の店長であるアンドロイドのトワに今日俺が買ったばかりの服に着替えさせられる
「似合ってるわよ、さすがわたしの旦那さまだわ」
「福太郎お兄ちゃんはエレムミーネおばちゃんの旦那さまなの?」
「違う違う、頭のおかしいストーカー女なだけよ、騙されちゃだめだからね輝空奈」
そして乾杯をする為にみんなの手に飲み物が渡る
「こ、ここ、このお酒は未成年でも飲めるように、わ、わたしが作ったお酒だから、飲んでみて普通だから」
アンドロイドの陽子さんが作った酒とな?
「やめたほうがいいよ福太郎くん、姉さんの言うことは信用してはいけない」
「ひ、ひどい、妹よ」
博士がコーラを俺に渡してくれたのでソレで
「じゃあみなさんカンパーイ」
『カンパーイ』
そして宴会が始まった
宴会場には元王様とその愛人やピノのパチンコ友達も来ている、パチ屋のアルバイトのエルフちゃんも居るぞ、みんな美味しそうに料理を食べているな
「輝空奈ちゃん、良かったね、お家が建ったよ!」
アンドロイドの新菜と
「民家と聞いていたんたんだけども、これを家といってもいいのでしょうか?」
アンドロイドの詩織も来ている
「てぃあなは家って形じゃないと思うの、家族がいるから家だと思うの、たしかに無駄に広くて持て余す未来しか見えないけど福太郎お兄ちゃん達がいるから大丈夫だよ」
美味しそうに寿司を食べながら輝空奈はニコニコと嬉しそうにしていた。
『起きて半畳、寝て一畳』とは真逆な家だが、まあ住めば慣れてくるはずだろう、知らんけど
鯛そうめんを食べながら俺はそう思うことにした。




