出会い 04
「坊主もついに屋敷を構える気になったんか」
姫路の郊外にある住宅地で中年男性風アンドロイドのオサムさん(TIN GN-036)にそう言われた、彼は建築関係のエキスパートらしい
「ねえこの場所って福太郎の家があった場所でしょ?」
「ああ、今は面影なんてないけどな」
新しくエルフ達の家が立ち並ぶ住宅街、もはやここは俺の思い出にある景色は無かった。
「どうすんだ、ここにすんのか?」
オサムさんが空き地の真ん中で腕を組んで言う
「いや別の場所にするよ、もっと広い場所がいいな」
あまり広くはない土地を見て思い出す、2階建てのあの家はこんなに小さかったのか、と
「福太郎お兄ちゃん・・」
ギュっと手を握りしめてきた輝空奈を見て俺は笑った
「どうせなら大きい家にしような、新しい思い出が沢山できるようなでっかい家にしよう」
そう言うと輝空奈は優しく笑ってくれた。
「はいはいはーい、広い土地ならフーナが良い場所を見つけたって!!皆さんわたしに付いてきなさいな!」
エレムミーネが手を挙げて言ってきたので俺は付いて行くことにする、するとオサムさんが
「坊主、この土地はどうすんだ?」
「そうだな、公園にでもしてくれたらいいよ、ここの住宅街の子供達の遊び場にでもなればいいさ」
:のちにこの場所にできた公園は勇者公園と名付けられて子供達やその家族の憩いの場になる、春になると桜が咲き花見ができるようにもなるのだった。
さて、俺達は場所を移動する為にタクシーに乗った、快適なこのリムジンのようなタクシーはなんと無料、誰がいつ使ってもタダ、自動運転で乗り心地も最高である。
だけどそのかわりにこの時代には個人で自動車を保有することはできないことになっている、そのおかげで渋滞など皆無なのだけど、大人になったら車を運転したかった俺には少し不満だったりする、まあ仕方ないかな。
クルマで移動すること10分たらずの場所についた。
「ねえここってさー、あんたらの家の近所じゃんか」
ピノが言うとエレムミーネは
「そうよわたしん家から徒歩1分かからないわね」
案内された場所はとてもよかった、姫路駅から程よく離れており、近くにはモノレールの乗り場もある、それに周りに建っている家を見るとまるで高級住宅街に建っている家ばかりだった。
「もうね一緒に住めないなら近所に居てもらったほうが良いとおもったのよね」
ここからエレムミーネ達の家が余裕で見える
「どうですかお父さま、とても広くて良い土地でしょう」
フーナが言うように広い土地だった、俺は周りを見渡す
「空が広いな」
辺りには高い建物はなく青空が気持ちよく広がる、少し離れて姫路城が見えていた。
「ここでいいな、ここにしよう」
「まあ悪くはない場所ね」
「・・・」
「輝空奈?どうかしたのか」
俺は黙って横に立っている幼女に話しかけた
「ううん、なんだか楽しいなって」
そう言って少し笑う輝空奈
「場所は決まったな、どんな屋敷がいいんだ坊主」
オサムさんが大きめのタブレットを両手で持ちながら聞いてくる
「そうだな、建てるなら大きい平屋がいいな」
「平屋って?」
「一階建ての家のことだよ、せっかく土地が余ってるんだから2階建てなんかじゃなくて広い平屋にしようぜ」
平屋という言葉を知らないピノに教えてやる
「ほう平屋か、坊主はなかなか良いセンスがあるな!」
現時点で地球の総人口はたったの一万人ちょっと、土地なんて余りまくっているのだから遠慮する必要なんてない
「平屋だったら階段を昇り降りする必要なんてないわね、わたしも一階建ての家にしてもらうんだったわ」
階段って地味に邪魔なんだよな、大きめの荷物とか運ぶのも面倒だし。
「ほんじゃあ、平屋で造るからな、明日の昼にはできてるから楽しみに待ってな坊主」
なんかワクワクしてきたぞ、なんたって自分の家が建つんだからな
「じゃあ今晩が最後のホテルじゃん」
「ああそうだな」
快適だったホテル暮らしも今日で最後か
「うちで泊まりなさいよ、宴会やりましょう」
「あんた本当に痩せる気あんの?」
「ほ、細くなってるでしょ!太ってもなかったし!」
「じゃあ体重何キロあるのか言ってみなさいな、言えるならね〜」
ギャアギャア言ってるピノとエレムミーネはほっといて
「今日は1番いい部屋に泊まるか、輝空奈も居るし大浴場がある場所にするか」
「うん楽しみだね福太郎お兄ちゃん!」
家のことはオイラに任せて遊んでこいよ、と言うオサムさんの言葉に甘えて今晩は豪華にいくことに決めたのだった。




