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出会い 02




新菜と詩織は最新式のアンドロイドだ。

人類が滅びた後に進化した機械生命体達が自重無しで設計、開発した〈プロトタイプ〉が新菜であり、その〈完成版〉が詩織である。


突き抜けた性能を持ちながらも扱いづらい新菜にバランスのとれた詩織を相棒とすることで新たなデーターを取ろうという目論見なのだが・・・



「ねえ詩織ちゃん、この娘って意識あるんじゃないかな〜」


『書写山研究所』のカプセルの中で眠っている少女を始めて見た新菜が言った。


「それは無いでしょう、バイタルサインはずっと一定値のまま少しの変化もないのですから」


研究所内の計器を診ながら詩織は答えた、この少女はずっと意識も自我も無いままに眠っているのだから


「う〜ん」


納得がイカなさそうな表情の新菜は空中に数十ものモニターを表示させると、ほんの微かな変化を探す、それは砂場の砂の中から砂金を一粒探すような作業


「やっぱりそうだよ!」


一瞬で作業を終えた新菜に躊躇はなく


「液体排出〜」


カプセルの中にある液体を排出しだす


「なにをやってるんですか!止めなさい」


詩織は液体の排出を止めようとするが、新菜の命令を上書きできない


「この子はカプセルの中でしか生きられないのですよ!今すぐ液体を元に戻しなさい!」


「大丈夫だって〜、新菜ちゃんを信じなさい〜」


駄目だコイツ、詩織はスタンガンを右手に握ると新菜に組みかかった


「だ〜から、軍用はやめて〜〜!」


「止めるのは新菜ちゃんでしょーが!」


2人が揉み合ってる間に作業は進み


『排出完了、カプセル収納します』


音声を聞いた新菜と詩織はカプセルの方を見た


透明なカプセルは収納されて残されたのは床に横たわる少女のみであった


「な、、、なんてこと・・を」


その状況を見た詩織は愕然とする


その時


「こほ、、げほっ、、」


少女が咳き込んだ


「まさか!」


詩織はすぐに少女に駆け寄り、ゆっくりと優しく背中に手をまわし抱え起こす


「けほ、けほ」


軽く咳き込みながら少女はゆっくりと目を開けた。


(馬鹿な!信じられない!!)


「・・こ、こんにちは・・・」


驚愕する詩織に少女は小さな声で挨拶をしてきた。



「ほ〜ら、大丈夫だったじゃんか〜」


背後から新菜の声がしたので振り向く、彼女の手には沢山のタオルがあった。


「お姉ちゃんが拭いてあげるねえ〜」


タオルで少女の身体を拭いてあげる新菜を見て詩織は震えた。


「な、なんで分かったの?この子に意識があるなんて、ひと目見ただけでなんで・・・」


「ん?なんでだろうね〜、でもそう感じたんだよ〜」


感じた?


少女を拭いてる新菜を見て、信じられないものを見た思いになる


「ありがとう、お姉ちゃん・・」


「どういたしまして〜、すぐに着替えさせてあげるから」


今はとにかくこの子に何か着せて上げよう、詩織は奥の部屋へ着替えを取りに行った。



少女を着替えさせるとベッドに横になるように言う


「少しここで休んでくださいね」


「うん」


ベッドに横になると少女はすぐに寝てしまった

小さな寝息が聞こえてくる

バイタルサインは健康な人間そのものだった。


「すぐに姫さまに報告しましょう」


「そうやね〜、姫さまも喜んでくれるよ」


さてどう報告しようか、ありのままに伝えるけれども、勝手な事をしたなと怒られないだろうか?


報告したら既にコチラの状況は把握されているらしく色々と手配してくれていた、とりあえずは姫路大病院で検査をしていく。




病院で大人しく検査を受ける少女は健康そのもの問題無しであった。


「まさか、こんな事になってるとはね」


MAN-ZX 009 九津(ここのつ)さんが病院に駆け付けてきて言った。


「勝手な事をしてしまってすみません九津(ここのつ)先輩」


「博士でいいよ、私もずっと監視はしてたんだが全然変化に気付かなかった、これは君達のお手柄だよ、感謝している」


正面の椅子に座ってフルーツヨーグルトを食べている少女を見ながら微笑む博士。


「それにしても新菜のほうが謎だよ」


「そうですよね・・・」


少女の横に座りコレも美味しいから食べなよ、とプリンアラモードなどを勧める新菜を見て首を傾げる博士と詩織


「ん?なにか言った?」


「いや別に、うん、そうだった名前をね」


博士は口元にクリームをつけて美味しいと笑う少女を見て言う


「名前を決めてないんだよ」


「ああ、そういえば無かったですね」


「名前、カーイイのを付けたげよ〜イエ〜イ」


でもなかなか決まらない、しっくりくるのが出てこないのだ、すると



「てぃあな」


ボソッと少女が呟く


アンドロイド達は顔を見合わせる


「てぃあな」


今度はハッキリと少女の口から『てぃあな』と聞こえてきた


「てぃあな、か、なるほど」


「いいじゃないかな〜、てぃあなで決まりだよ!」


「子供自身が自分の名前を決めるのもおかしな話ですが、まあ、悪くないでしょう、てぃあな」


そして少女の名前は決まった



輝空奈(てぃあな)



8歳である。




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