予知夢
1羽の鳥が居た
その鳥はとてもとても大食いで、あまりにも沢山食べるので餌はすぐにいなくなってしまう。
[オナカヘッタナ〜]
だからまた新しい餌場へと移動する
その鳥は広い広い宇宙を飛びながら、餌がいそうな惑星へとたどり着く、そして食い尽くす。
それの繰り返し
でもある時から餌の匂いがまったくしなくなった。
グーグーと鳴るお腹・・・
[ドウシテ?餌ガ一匹モ居ナクナッタ・・]
宇宙を漂いながら感覚を研ぎ澄ますが餌はもうこの宇宙には居なかった
この鳥は餓死なんてすることはない、ただ餌を食らうという行為は娯楽なのだ、永遠に生きられる存在にとってのただ1つだけの娯楽が餌を食うという行為なのだ。
[ココニ居ナイナラ居ル場所二行ケバイイ・・]
鳥は探す、こことは別の宇宙にいる餌を、そしてそこに鳥は現れる・・・
【王よ、鳥が一羽来るやもしれませぬ】
「鳥?ああアレか」
白髪のエルフの少年カオルは姫路城の庭園を歩きながら思い出す、鳥、あの鳥は餌の匂いに釣られて次元を超えてくる。
「この宇宙にはもはや餌などほとんど残ってはいないのにな、食い意地のはった鳥だ」
【しかし来るとなれば厄介でしょうな】
「うむ、ならば朕に考えがある、ほら来たぞ」
王の視線の先には勇者福太郎が居た。
「あ、いたいた、あの子じゃない?白い髪の男の子」
妖精がコチラに気づき飛んできた
「ねえあなた、カオルって名前じゃない?」
「うん、僕はカオルだよ、妖精のお姉ちゃん」
お、王よ・・、子供の真似事をすると耳元で側近が慄く。
「こんにちはカオル君、倒れてた俺を見つけてくれたんだって聞いたけど、君かな?」
勇者福太郎が話しかけてきた
「うん、公園で散歩してたら勇者様が倒れてたんだ!」
王はその時の状況を子供が話すように説明する、もちろんほとんどが作り話だ。
「カオル、あんたは福太郎の恩人ね!」
「ありがとうカオル君、君のおかげで元気になれたよ」
「僕は当然のことをしたまでだよ、でも秘密があるんだ」
王は悲しそうに俯く
「秘密?」
「うん、実は勇者様のことは夢で見たんだよ」
「夢?」
「僕は昔から予知夢とかいうのを見るんだ、勇者様を見つける前の日に、公園で倒れている人を見つける夢をみたんだ、だから朝起きて公園に来てたんだよ、そしたら」
「俺が倒れてたのか・・」
「うん」
「予知系の能力ってエルフには時々あるらしいよね」
「そうだな、それだろうな」
「でね、昨日も恐ろしい夢を見たんだよ!!」
『恐ろしい夢?』勇者と妖精が興味をもって聞く
「うん!鳥がね、大っきな鳥がみんなを食べてしまうんだ!!」
「鳥?」
「ものすごく大っきな鳥だよ!凶暴なんだ!」
そうアレは、デカい、我等ほどではないがな
「勇者さま、みんな食べられちゃうの?」
「食べられないわよ、福太郎がいるんだから!安心しなさいな」
「そうだな、教えてくれてありがとう、君の予知夢を信じるよ」
「うん!」
そして勇者福太郎は朕に袋1杯の『朝日あげ』を渡してきた、子供に煎餅とはどういうセンスなのだろう?
「バイバーイ!!」
手を振って別れる
【今のやり取りに意味はあるのですか?】
「どうだろうな、奴しだいだ」
ガサゴソと朝日あげを1袋取り出し食べてみた
「ほう」
美味い、サクサクと口触りよく口の中で溶けていく、程よい塩味がまた嬉しい。
「なんだ、センスはいいじゃないか」
王は自販機でお茶を買う
「食か、あの鳥の気持ちが解らぬ訳でもないな」
あと数日で現れるであろう鳥
餌を喰らうという快楽の為だけに存在している
ボリボリと塩味の煎餅を食べながら王は
「食巡りをしても面白いのかもな」
【食巡りですか?】
「お前もそろそろ顕現したらどうだ?父親役をやればいいだろう」
【それは恐れ多い・・】
「硬いなお前は」
朝日あげのように柔らかくなれよ
そう言いながら王は笑った




