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さあ帰ろう 07



王都ボーゼマルの北の大教会。

その外にある大広場で送還の儀は行われる。


送還の儀の当日

もうすぐ日も暮れようとしている時間帯、今日の儀式に関わる大勢の人々が大広場に集まっている。

その一角に福太郎とその仲間達の姿があった。


「うっわーーぁ、本当に若返ってるにゃーー!!」


今晩おこなわれる送還の儀、俺の見送りに来てくれているタマコが俺の姿を見て驚く


「私とはじめて出会ったころの福太郎そのものだわね」


エレムミーネが関心する。


「ちょっとお姉さんにその若返りの魔法をおしえてくれないかしら」


ワンコがおっとりとした口調で言うが目がマジだ。


「これは誰にでも使える魔法じゃないからな、失敗したらとんでもないことになるんだぞ」


今の俺の姿はこの世界に召喚された時の姿、13歳の中学生に若返っている。

魔法の師匠から教えてもらった奇跡の魔法によるものだ。


「そのとおりだ愛弟子よ、人体に備わる生命の樹を操作できる者などこの世界でワシと愛弟子のみよ」


そのセリフとともにこちらに歩いてくるのは俺の魔法の師匠であるテレサ・ホライシュである。

俺を愛弟子と呼び、自身をワシと呼ぶその姿はエルフの幼女、しかし中身は千年を生きる妖怪。


「しかし思い出すな、最初にエレムミーネにつれられてワシのところに来た頼りない小僧の姿」


師匠が俺の手を優しく握る。


「15年か、そんな短い時間でよくぞ・・・」


師匠の声が少し震えている


「師匠、この転送陣も師匠が自ら描いてくれたと聞いています。

どこまでも頼りきりで俺は何をお返しすればいいのか決められませんでした。」


「愛弟子よ、お前と過ごした時間は楽しかったよ、本当に面白かった。」


そう言いながらポンと俺の肩を軽く叩き


「お前も楽しかったじゃろ愛弟子よ、だったらそれでいいだろう、お返しなどと寂しいこと言うなよ、楽しかったらそれでいいんじゃよ。」


そうニカッと笑う幼女エルフに


「何度も死にそうなりましたけどね」


と、俺もニカッと笑い返した。




「テレサさま、そろそろ時間です」


エルフの魔術師が師匠を呼びにきた。

今回の儀式には大勢の人間、エルフ、獣人の高位の魔術師達が儀式に参加してくれている。

世界を救った勇者への感謝として各国が強力してくれているのだ。


「それではワシは向こうで奴らと陣を起動させる準備をしないとな、達者でな愛弟子よ!!」


手を振りながら歩いていく師匠に俺は頭を深くさげるのであった。


そうこうしているうちに日も暮れ、3つの月が重なるまであと少しとなった。

俺はギリギリまで見送りの人達と話をしていた。

すると、


「さあて、福太郎、みんなとのお別れの挨拶はすんだのかしら」


そう言いながらティアーナが俺達のところにやって来た。今までは向こうの王族専用の観覧席にいたらしい。この儀式には各国の王族や貴族が観覧にきている。ティアーナは今まで偉いさん達の席で忙しかったらしい。


「メスガキ妖精さんはうまく隠れたわねー」


「ギクリ」


と俺の背中でメスガキ妖精は焦りをみせている。姿を消しているので見えないが・・・


「まあいいわ、ピノあなたはこっちにいても一人ぼっちだものね、許してあげる」


「ごめんね、ありがとう」


ボソリと小声で応えるピノ。

その声を聞きティアーナは寂しそうに笑う。


「さて福太郎、もうすぐお別れの時間だけど」


俺達は夜空を見上げる。

月が重なり始める

向こうで師匠達が魔力を魔法陣に注ぎ始めだした。


「最後にわたくしに何か言うことあるかしら?」


ティアーナが俺の目を見ながら言ってくる。

思えばこいつとは召喚された時からの付き合いだったな、まだ5歳だった生意気な姫さまはなんだかんだと俺を助けてくれた。

何の能力も無い中防を周りの悪意から庇ってくれた。

ずっと側で助けてくれたな。


「ありがとう、君がいてくれたから、助けてくれたから俺はがんばれたよ、魔王を倒せたのも」


パチーーーーン!!


頬を殴られた


「違うでしょ」


そういいながら

パチーーーン!!!

とまた殴られた


あっけにとられているエレムミーネやタマコやワンコ。そして周り人達。


パチーン、パチーン、パチーン

続けて何度も殴られる

いや痛くはないよ、痛くはないけど

俺はティアーナの手を握り殴るのを止めさせる。

するとティアーナは俺の腹に蹴りを入れてきた。


「うぐぅ」


俺は情けない声を出しながら腹をおさえる。

痛くはないけど何でこんなことするの?


「なんで!!なんで言ってくれないの!!」


ティアーナが声を荒げる


「また今度って!!帰るのはまた今度って言ってよ!!!言いなさいよ!今回もやっぱり帰るの止めたって!!!!」


大広場にティアーナの声が響く


「帰るのなんてもっと先でいいでしょ!!

5年後でも15年後でも50年後でも!!

わたしが死んだあとでもーーー!!!」


両目からボロボロと涙を流しながら


「また今度でいいやってもう一度言ってよぉぉ」


すがるように言ってくる・・・


「うっうああーん、うあーーん」


声を出し泣き出したティアーナを後からエレムミーネが抱きしめる

見ればエレムミーネもタマコもワンコも泣いていた。


「うっうぐぅうっううう」


エレムミーネの胸に顔を埋めて泣いているティアーナを見て俺は・・


「愛弟子よ!!時間じゃ!帰るのなら早く陣の中心に移動するのじゃー!!」


師匠の声がした。

月が一つに重なっている。

俺はよろけるように魔法陣の中に移動する。


「俺はやっぱり・・・」


「福太郎、自分の気持ちを大事にして、」


背中からピノの声がした。

俺は、俺は


「俺はやっぱり帰りたい。

ごめん、ありがとう」


ゴオーーーッ


そう言った瞬間、膨大な魔力が月に一直線に伸びていく、そして俺を包みこみ転移させる、その一瞬、見えたのは泣きながら俺のほうに手をのばしたティアーナの姿だった。



(むう!)

テレサは転送されていく福太郎を見てうなった。

(今、一瞬だが何かに儀式を干渉された?)

送還の儀式はとても繊細かつ膨大な魔力の流れを計算して作ったのだ。

そこにいらない魔力が一瞬だけ加わってしまった。

(あれは魔王の魔力だった。

あのクソジジイめ、死んでまで余計なことを!!)

しかしもう転送されてしまった・・

(愛弟子よ、無事帰ってくれよ)

そう思いながら別の場所に目を向ける


「やれやれ、こう言ってはなんだが、残ってやっても良かったのではないか?愛弟子よ。」


テレサは泣いているティアーナ達を見ながら嘆息するのであった。











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