さようなら異世界 04
ブラックホールの卵なんてものを確認してしまった俺達
「本当なら今すぐ地球へ帰るべきなのだろうが・・」
「ど、同意」
博士と教授は地球への帰還を望んでいるが、なんと現在ゲートは街の大広場で作り直しているので使えないらしい
「今この街には国中からエルフが集まってきてるの、その人達を街の中心部にある大広場から地球へ移動させるつもりで作り直してるのよ」
「地球への移住は任意で、あくまで本人の意思に任せます、この世界に残りたい者を無理やり連れていくわけにはいきませんから・・・」
エレムミーネとスターニャ(エレムミーネの妹)が言うには、約七千人のエルフが今この街に避難してきているらしい、彼等にはエルフの役人や兵士が地球への移住を説明して回っている
「避難してない街の外の人達にも話をして周っているところです、その人達をいれたら地球への移住は2日間あれば済む計算ですわ」
「ふ、2日・・げ、ゲートの開設は、い、いつ?」
「テレサ様と長老さん達が準備しておりますので、すぐ終わると思います、もう完成しているかもしれませんわね」
エルフの長老達は魔法分野のエキスパートだからな
「あ、いま念話でテレサさまがゲートが完成したから大広場に来いって言ってるわ」
ナイスタイミング
エルフ達と俺はそのまま飛んでいき、博士と教授はドローンに乗って大広場へ移動した
日が暮れた夜の大広場には大勢のエルフ達が集まっている
『我が国民達よ、皆も知ってのとおりこの世界はもう長くは保たない、残念だがアストランタンは消滅する!』
大広場にある壇上で国王シュレッター3世がマイクを握り演説していた
『そんな滅びゆく我らに救いの手を差し伸べてくれた者達がいる、紹介しよう地球から来てくださった、ナナ殿、トワ殿、イトオ殿だ!』
国王と並び立っているアンドロイド3娘に注目が集まる、そのうちの1人、トワがマイクを握って語りだした
『始めましてアストランタンの皆様、私は地球という場所から来ました、地球とはこことは別の世界にある星です、そして皆様も覚えてますでしょう、地球は百年前、魔王を倒して世界を救った勇者福太郎様の生まれ故郷でもあります!!』
街中に流れるトワの演説を聞き人々はざわめく
「勇者福太郎、あの伝説の」
「もう100年も経つのねえ・・」
「わたし握手してもらった記憶あるわー」
ざわ、ざわ、ざわ、、
やめてくれ、なんで俺の名前をだすの?
広場の上空で観ているんだけど恥ずかしくて降りれないわ!
『そしてなんと!この度、彼は皆様を救う為に再度この世界へとやって来たのです!!』
いらんこと言うなよ!
『ご紹介いたしましょう!勇者福太郎様です!!』
トワが右腕を上空にいる俺に向けて伸ばす、スポットライトが俺を照らした。
「勇者・・」
「来てくださったのか、私達のために」
「助けてください勇者様」
大勢の人達の視線が俺に向いている、聞いてないぞこんな展開、打ち合わせぐらいさせろ!
よく見るとナナとイトオが降りて来いと手招きしてる、
「ぷぷっ、あの娘たちよくやるわぁー」
ピノが他人事のように笑っている
いいだろう道化になってやろう
俺はゆっくりと壇上に降りた
トワがマイクを渡してくるので睨んでやる、あとで説教だ
『あー、勇者福太郎です、百年振りにアストランタンの大地を踏みました』
おおーーーーーっ
どよめく人達、よく見ると街中に大きなモニターが現れて俺を映し出している、いつの間にこんな目立つ仕掛けをしやがったんだ、口元が笑っているぞパチンカス!
しかし言っておかなければならないこともある、そう思い国王のほうを見るとコクリと頷いていた
『およそ百年前、魔王を倒した私は故郷である地球へと帰りました』
うなずいている人々を見るに、そのへんのことは皆さん知っているようだ
『地球に帰った私は絶望を知りました、なんと私がいない間に地球人類は滅んでいたのです!1人残さず殺されていたことを知ったのです!』
どういうこと?などと聞いている人達は顔を見合わせる
『地球人類を滅亡させたのは超高次元体と呼ばれる巨大な化け物でした、奴らは魔王よりも強い!』
ザワワワワーーーーーーーーーーーーー ー
なんだって!とざわめく民衆達
『ここに来る前、私は超高次元体と闘い勝利しました、しかしそれは紙一重の勝利、次も勝てるかどうか分かりません』
静まりかえる、だが言わなければならない
『滅びゆくこの星に残るのか、強敵が現れるかもしれない地球へ移住するのかは皆さんの意思にお任せします』
そして俺はマイクを国王に渡した
『勇者福太郎の言うとおり地球にも問題がある、しかしこの星が滅びるのは確実なのは理解してほしい、それでもアストランタンに残るのならば、その意思を尊重しよう』
そして国王はマイクをナナに渡す
『今から3時間後から地球への移動を開始いたします、時間がありません早めのご決断をお願いします』
モニターに時間が表示される
『地球では皆さんが生活される為の環境は準備されています、住居や日用品もこちらが用意します、荷物は最小限にしてください、手提げ鞄ぐらいにしてください、あとこの国の通貨も必要ありません、地球では皆さん平等な暮らしをしていただきます、繰り返し言いますが時間はありません早めの行動をしてください』
そしてイトオにマイクがわたる
『地球では私共の法律や文化に従っていただきます、アストランタンと地球の文化の違いは大きいと思われます、しかし地球にも空があり山があり川があり海もあります、自然はこちらの世界と変わらないと約束しましょう』
最後にまた国王にマイクがわたる
『地球では我も皆と同じ民として暮らすことになる、特別扱いはされないそうだ、それを承知で我は地球に移住することを決めた、皆もそのことを理解して決めて欲しい、さあ時間が無いぞ、行動を始めよ、我が愛する民達よ!!』
集まっている人達が慌てて動き出す
俺は後悔しない選択をしてもらいたいなとその光景を見てた
「さ、3時間とか、悠長なこと言ってる・・」
「1秒でも早く移動を始めたいが、仕方ないか」
「うちらは先に地球へ帰って報告しとくわ、向こうで受け入れの準備もせなアカンからなー」
ナナ達がそう言うと師匠が
「うむ、ならば愛弟子も先に戻ったほうがよかろうな」
貴重な最後の地球人じゃからな、とゲートを開いてくれた
「そうだよ、先に帰ろうよ、ここに居たらヤバいって!」
急かすピノに促されゲートへ行こうとすると
「ちょ、ちょっとだけ待って!」
エレムミーネが俺の腕を掴んできた
「時間が無いのはわかってる、でも一緒に来て欲しい場所があるの!」
とても申し訳なさそうな表情をエレムミーネはしていた
「お願い、福太郎・・・」
アンドロイド娘達がエレムミーネを無言で見つめる
「どうするの福太郎・・・」
ピノが耳元で小さく呟いた
「わかった、案内してくれ」
「ありがとう、ついてきて」
ちょっと行ってきます、とアンドロイドさん達に言うと、皆さん何か言いたしそうな表情をしていたけど
「なるべく早く帰ってきてくれたまえよ、私は君が帰って来るまで待っていよう」
博士が軽く手を振りながら言うと教授は
「あ、あたしは先に帰ってる、い、妹よ気をつけて」
「うちらも先に帰るわ、福やんもピノっちも早く帰ってくるんやで」
「了解」
俺は彼女達に手を振ってエレムミーネについて行くのだった




