さようなら異世界 03
「うわわわ、本当に海の水が無くなっちゃってるよ!」
ドローンに乗って海にでたけど、これはもう海とは言えない、ただの海底だ、
「こ、これは貴重、観察しなければいけない、ふひふひ」
教授はそう言うとドローンの高度を下げて飛ぶ
「ち、地球ではありえない光景、海底がむき出し、じ、時間さえあれば隅から隅まで見て回りたい、ぐふふ」
たしかに凄い景色だ
海底だった砂や泥はもう乾いてヒビ割れている、
ときおり沈没船や岩礁があったり谷のように断層があったりと深い海の底をここまではっきりと見学できるなんて
「ねえねえ、アレ見て!でっかいのがいるよ」
俺達の進行方向の海底になにやら白くてデカいものが横たわっていた
「クラーケンだよ、でっか!でかすぎでしょー!」
「い、イカの化け物、記録しなければ、ぐふふ」
教授はクラーケンの側でドローンを停止させて観察し始める、さすがのクラーケンも海水がなければ駄目らしい、もうとっくに死んで干からび始めている
「ぜ、全長は戦艦大和より50メートル大きい、」
戦艦大和が260メートルぐらいだからプラス50メートルで300メートル超えてるのか、戦艦大和で例える必要ある?
「も、持って帰って、け、研究したい」
チラチラと俺のほうを見ているが、あんなもの無限倉庫に入れときたくないわ、腐ってるだろ
「でもでも、福太郎、あのぐらい大きかったらさー、良い心臓石がとれそうだよ」
「たしかに大きい心臓石を持ってそうだが・・・」
「し、心臓石は必要、姫様が言ってた」
そうなんだよ、こっちに来る前にアンドロイドの姫様から異世界の資源をできるだけ多く持って帰って欲しいとお願いされたんだよな
「わかったよ、でも心臓石だけだからな」
俺はドローンから飛び降りクラーケンの近くまで行く
ピノはドローンに残って教授と高みの見物をしてやがる
「はあ、解体するのは汚いから燃やすか」
右手に魔力を集中させる、なんでも燃やし尽くす巨大な炎をイメージして放つ
〚獄炎〛
俺の右手から青黒い巨大な炎がクラーケン目がけて飛んでいく
ズオオァァァーーーーーーーー
たちまち炎は300メートルをこえる巨大なクラーケンを包み込み焼きはじめた
イカ焼きの匂いが辺りに広がる
「めっちゃ美味しそうな匂いなんだけど、食べちゃダメかしら?」
「か、確実にお腹を壊すと思う」
少しするとクラーケンは炭になったので炎を消す
そして
〚大風塊〛
ブォオオオオオーーー
今度は巨大な風の塊をぶつける、炭になったクラーケンは風で吹き飛ばされて消えてしまった、
残されたのは透明な水色の心臓石だけ
それを無限倉庫に収納する
「おつかれちゃん、良い心臓石が手に入ったじゃん」
「うふ、うふふ、生で魔法見たらラノベの実写化だった件、ぐふふ、〚獄炎〛ズオオァァァ〚大風塊!〛ブォオオオオオー、もしも厨二病がコレ見たら羨ましくて血の涙を流す、永遠の厨二病、羨ましい、」
ドローンに帰ってきた俺をディスってくる教授、消し炭になりたいのだろうか?
それからというもの進む先々で心臓石を集めることになった。
〚雷炎〛 ズガシャャヤヤーー
〚円水刃〛 スパァァー
〚重消滅〛 グッシャアッ!
いろんな魔法が見てみたいと教授のリクエストがあったので、俺は毎回違うハデな魔法を使うことになった。
クラーケンより大きな鯨や、サメ、頭が多数ある海蛇、そしてゴ◯ラのような怪物など巨大生物から心臓石を回収しまくった。
大量、大量!
『なにをやってるんだ君達は?』
通信機から博士が呆れたように言う
「し、心臓石は大事だから、ひ、姫様も欲しいって」
『姉さん、時間が無いのは分かってるかい?』
「わ、わかっている、うん、わかった、す、すぐ行くから」
博士に睨まれた教授はドローンの飛ぶスピードを上げた。
『衛星では黒い球体から発せられるエネルギーでまともなデータがとれないんだ、離れた場所からでいいから分析し、、、ほ、、、』
「博士?通信きれちゃったよ」
「電波が届かないんだろ?アンテナとか無いし」
「さ、さっき打ち上げた衛星から通信している、わ、惑星の裏側でも余裕で話せる、これは異常、おかしい」
博士からの通信が途切れてから1時間ほどドローンで飛んでいると
「こ、これはヤバい、、」
そう言いながら教授はドローンを急停止させた
「たしかに、これは見るからにヤバいな」
前方の空を見ると昼の青空と黒い夜空がクッキリと別れている
「あ、あの先の大気は無くなっている、真空状態、これ以上進めない」
「ああーー!あれじゃない黒い球体!」
ピノが言う方向に黒く光る球体があった
〚千里眼!〛
俺は千里眼で黒い球体を見る
球体の周りの空間が歪んで見えた、とんでもないエネルギーを感じる、なんだコレは・・
「こ、ここからの距離は30キロ、黒い球体は直径100メートル」
モニターに映し出された黒い球体を教授はじーーっと観ていた、そしてすぐに
「か、帰ろう」
ドローンを急旋回させてスピードを上げた
全開で飛ばす
「し、信じられない、あ、あ、あんな物、存在するほうがおかしい、ありえない」
「なんなの、どうしたのさ?」
ピノが教授に聞く
教授の顔は真っ青だった、アンドロイドさん達も顔色が変わるのかと俺は呑気にも思ってしまう。
「あ、あんな状態でアレがあるのは、あ、あ、ありえないんだ」
「だから、あの黒いやつはなんなのよ!?」
「ぶ、ブラックホール・・」
ふぁ?
俺とピノは顔を見合わせる
「あれが?」
「く、口に出すのも馬鹿らしいけど、本当に馬鹿みたいだけど、」
教授はひきっつた表情で
「あ、あれは卵、ブラックホールの卵」
教授は、
ふひひ、馬鹿馬鹿しいよね、と口をひくひくさせていた




