さあ帰ろう 04
この世界には
人族
獣人族
エルフ族
と、3勢力それぞれに王国がある。
今日、俺はエルフ王国のパーティーに出席していた。
「というわけでティアーナ殿下は謹慎中だ」
「はああ、あの娘らしいわね、ふふっ」
ため息をつきながらも楽しそうに俺と会話しているのはエルフ国王の娘さん
名前をエレムミーネという。
見た目はそれは美しい若い美女。
いや、若く見えるエルフ美女だ。
金色の髪に青いドレスがよく映える。
「そういえば師匠の姿がみえないけど
どこにいるんだ?」
俺は周りを見渡す。
エルフ国特産のホタル石で造られた広く立派な会場には、たくさんのエルフの他に招待された人間の偉いさんや獣人の代表の姿が見える。
でも俺の魔法の師匠の姿が見えない。
あの人もエルフの王族なのだからここにいてもいいはずなんだが
「伯母様なら送還の儀式の準備を手伝ってるわよ」
「師匠が?」
「愛弟子の帰還に事故や失敗は許されないんだって、
先頭に立って準備してるわよ」
俺が日本に帰るための送還の儀、
召喚の儀よりも遥かに難しいと聞いてはいたが
あの師匠が指揮をとるほどとは
「一度観に行ったほうがいいか・・・」
「本番まで立入禁止らしいわよ
やめときなさいな」
そういいながら俺に寄り添い腕を組んでくる。
「今はわたしとパーティーを楽しみなさい、
ほら、踊るわよ」
そして俺はダンスの輪に連れて行かれるのであった。
パーティーが終わり、宿の部屋に帰ると、
ビッターンと顔になにか貼りついてきた。
妖精である。
「おっそーーい、今何時だとおもってるのよ!
女の子1人残したまま!!」
「残るって言ったの君だよね?」
そういいつつピノを顔から剥がす。
するとピノが俺の後にいる人物に気づく。
「エレ!!」
「久しぶりピノ、元気してたー?」
「こんな時間にエルフの姫さまが男の部屋にやってくるなんてフシダラだわー、大問題だわー。
あんたがこんなビッチだったなんて、
もう友達やめるしかないわー」
ジト目でエレムミーネを見やるピノ
するとエレムミーネは両手に持っているものをピノに見せつける
「いらないの?」
両手に持つカゴにはパーティーの料理やデザートが満載だった。
「いります、入ってください。」
じゅるりとヨダレをたらすピノ
「うむ、飲み物はあなたが準備しなさいな」
「了解でーす!!」
と、部屋に備えられてるキッチンに飛んでいった。
「おじゃましまーす、
あらいい部屋ねー、高かったでしょ?」
「この街の宿で1番高いところだ、
一度こういうところに泊まってみたかったんだよ」
俺はソファーに座る、
うおお、身体が沈み込む。
「こっちのお金はあっちじゃ使えないもんね、
じゃあ帰る前に残りのお金わたしにちょーだい」
「残念、教会に寄付します」
「なんでよー、わたしに寄付しなさいよー」
「いや、お前んち大金持ちだろ、王女さま」
冗談抜きでとんでもないお金持ちなのだこのエルフの姫さまは、
その資金力にどれだけ助けられたことか・・・
でもまあ、それだけ俺も利用されたけどね、いろいろと。
「べつに寄付しなくても、あなたのアレ、ほら反則級の魔法、無限倉庫にいれっぱなしでも困らないでしょうに」
そう言いながらエレムミーネは対面のソファーにだらしなく座る。
足を広げて座るなよ、娘さん。
飲み物を宙に浮かして運んできたピノはそれを見て、
「あんた、あたしたちの前では本当にだらしないわねー、世界3大美女の1人に選ばれてんのにー」
「周りが勝手にいいだしただけよ」
飲み物を受け取り呆れ顔でいう。
「そういえばティアーナ殿下も選ばれてたよな」
俺が言うと
「あーそれは駄目ね、いっきに嘘くさくなったわー!!世界3大美女とやらの称号。
ねーねーいくら出したらもらえるのその世界3大美女とかいうのーーー」
メスガキ妖精さん満面の笑顔ですね。
「さあね、今度聞いといてよティアーナちゃんに」
「やめとけ、握り潰されるぞピノ」
このように他愛のない話をしながら
時間は過ぎていく
あーだこーだと
つまらないことで笑ったりする。
こいつらと旅をしてたときは毎日こうだったな。
懐かしくもありそして寂しくもなる。
別れの時が近いのをあらためて感じた。
「ああ忘れないうちに、福太郎に渡すものがあったんだ」
エレムミーネはそういいながら俺に何か差し出してきた。
「ネックレス?」
それはシルバーのネックレスだった。
「わたしの手作りだよ、福太郎にあげる。」
俺はそれを受け取る。
むう、なかなか俺好みのデザイン。
こいつ分かってやがる。
おれはさっそく着けてみる。
「えーー
ちょっとチャラくなーい。
あんまり似合ってないと思うんですけどー」
俺の横でピノがイチャモンつけてきてるが
「いや!これはかなりいい。
俺は気に入ったよ。ありがとう」
「良かったー、わたしだと思ってずっと身につけててね、ダーリン」
ウィンクをしながら常時装備を提案してくるけど、
ずっとは無理だろう、
向こうに帰ったら中学生を演じないといけないからね。
学校にこんなのしていったら没収されて呼び出しくらうわ。
「あと、こんなのも持ってきたわよー」
と、エレムミーネはテーブルの上になにかを置く
「お、お前、それ」
「世界樹の実とか、マジなの?!」
それは金色の丸い果物
大きさはリンゴくらい。
世界樹はこの世に一本しかない巨大な神木。
高さ百メートルを超える世界樹は毎日一つだけ実をつける。
「苦労したわよ、見つけるの」
巨大な木のどこに実がなるのか分からない
探し出すのが難しいのだ
見つからなければその実は腐り
次の日また新しい実が1つ別のところになる。
「さあ食べましょうか」
ナイフで皮ごとザクザク切りわけるエレムミーネ。
「そんな雑に切るものか?」
「この金色の皮に価値があるからね、皮ごと食べなきゃだめよ、ほら召しあがれ」
「ちなみにどれくらいの価値があるか聞いときたいんだけど」
「知らない
お金で手に入る類いのものじゃないからねー」
「あたしは食べるわよー、あーんモグモグ」
シャクシャクと音をたて食べだすピノ
俺も食べてみる
食感は梨にちかいな
味はウマいがそんなにおおげさなものでは
「美味しいけどー、驚くほどじゃないねコレ」
メスガキ妖精さんは空気を読まない
「この実の価値は味じゃないから、
神気を感じなさいな」
おおっ
身体中の細胞に神気が染みわたってきたぞ。
また寿命が伸びたなこれは。
「長生きしなさいよ福太郎」
長寿であるエルフの友人からの想いが伝わる。
「ああ、三百年は生きる予定だよ」
そういう俺を見てエレムミーネはそれは嬉しそうに笑ってくれるのだった。
「あれれ、急にめっちゃ眠くなってきたんですけどー」
フラフラとソファーに寝そべりはじめるピノ
「たしかに、すごく眠くなってきたな・・・」
俺も眠くてしかたなくなってきた
状態異常とかに耐性あるのに変だな
「ああ世界樹の神気のせいね、我慢しないで寝ちゃいなさいな」
食べていないエレムミーネは平気そうだな
うう、だめだ目がふさがってきた
「わたしももう帰るから、おやすみなさいな」
そして俺は、深い眠りについた。
次の日
朝起きると俺はベッドに寝てた
どうやらエレムミーネがベッドに運んでくれてたみたいだ
とうぜんエレムミーネはもう帰ってここにはいないが
「俺、寝間着に着替えた記憶ないんだけど」
まあ、別に見られて恥ずかしいものじゃないけど
うーん
まっ、いいか
気にしない
気にしない