やってくる者たち 05
「ほほーう、綺麗な街じゃのう」
「こんなに正確に真っすぐで平らな道なんて見たことないわよ、あの建物なんてどうやって建てたのかしら?」
「凄いですわ!見るもの全てが新鮮ですわ!!」
ちょっと離れた場所にある喫茶店に移動する道中、エルフ3人組は、あれはなんだ?これはなんだ?と大騒ぎだった
「そんなに珍しいか?そっちの世界も俺が帰ってから100年も経ってるんだから、いろいろと発展してんだろ」
太陽石があるだろうに、アレを使えば便利で役立つ物が造れるはずだが
「う~ん、まあそこそこね、でもこんな街を見せられたらねえ〜、ちょっとねえ〜、マジかよ、って感じかな」
「これが科学か、もしもわしらの世界に魔法が無ければこういう文明の進化をしたかもしれんのう・・」
師匠の言うとおり、魔法は便利だからな、大抵のことは魔法でどうにでもなる、あっちの世界は科学より魔法の進化を優先してたからな、進化の方向性が違うんだろう
「太陽石があったじゃん、たしか魔王の領地でおっきな鉱床を見つけてたでしょうが」
ピノが太陽石のことを言うと、エルフ3人組は微妙な表情をした。
「太陽石ね、確かにすごかったわ、すごかったんだけど、ね・・・」
言葉を濁すエレムミーネ
「まあ、いくら太陽石があってもここまでの物はできないじゃろ、技術力の差が違いすぎる」
そんな話をしながら歩いてると五階建ての建物に着いた。
ここの三階に目的の喫茶店がある。
「それにしても、人がいませんね、こんなに大きな街なのにまったく人の気配がしませんわ」
エスカレーターで上がりながらフーナが気付いたことを口にする
「地球人はみんな死んでるからな」
「そうですかー、、、ふあ?今なんて?」
俺の言葉に驚くフーナ、
師匠とエレムミーネも驚いている。
「この世界、俺以外の人間は皆死んじゃってるんだよ」
そう言うとエルフ3人組が俺達に同行しているアンドロイド達を見る
「ああ、ウチらは人間やないよ、アンドロイドや、あんたらの言うとこのゴーレムみたいなもんや」
いつの間にかついてきてたナナ(077)が言う。
「ウソでしょ、でも確かに生き物特有の波動がないわ」
「ワシは気づいとったよ」
「どこから見ても人間の女性としか思えませんわ」
俺達に同行しているアンドロイドはナナとイトオ、そして博士の3人、今のところ積極的に俺達の会話にははいってこないが、様子を見てるんだろうか
「地球人が居ない・・・じゃと、それは・・・」
「テレサ様」
テレサとは師匠の名前だ
「エレよ、わかっておる、じゃがなあ・・」
エスカレーターで三階まで上がっていく、その間、師匠は目をつむり腕組みをして黙ってしまった。
目を閉じてると転びますよ?
目的の喫茶店は大きなチェーン店らしい
店の中は綺麗で広く落ちついた雰囲気をしている。
俺は洒落たコーヒー屋よりこっちのほうが好きだからよくピノと一緒に来る。
俺達一行は窓側の大きな席に座った。
女子の好きそうなスイーツ系の食べ物と飲み物を注文する、少しするとロボットが席まで運んでくれた。
「これはなんて愛らしい食べ物でしょう」
注文した物がくるまで窓の外の景色を見てはしゃいでいたフーナは、自分の前に置かれたフルーツたっぷりのケーキを見て目をキラキラさせた。
「ふむ、食べ物まで一流じやな」
師匠はクリームたっぷりのパンケーキ
「そうでしょう、そうでしょう、我が国の食べ物はあんた達の世界とは格が違うからねー、思い出に沢山食べてさっさと帰りなさいな」
苺たっぷりのショートケーキを食べているピノが自身まんまんで言う
「なんか偉そうに言ってるけど、あんたも私らの世界の生物でしょうに」
ピノをジト目で見るエレムミーネだが
「お前いつの間にそんなの頼んだんだ?」
エレの前に置かれたのは鉄板でジュージューいってるハンバーグステーキセット大盛りだった。
「だって美味しそうだったし」
こいつ、俺がトイレに行ってる間に注文を変えてやがった
「とても美味しそうな匂いですわね」
「うむ、暴力的な匂いじゃな」
「あんた、なんちゅうもんをわたしに見せるのよ」
じゅるりとヨダレを垂らす肉食妖精さん
空気を読まずに皆とは別ジャンルの食い物を頼むなんて駄目だろうに、そんなの話し合いの席で頼むもんじゃねーよ
俺はコーヒーとチーズケーキだと言うのに
本格的なコーヒーのいい匂いを鉄板で焦げてるタレの匂いでかき消してくれたエレムミーネを見ながら
コイツは100年経っても変わってないなと俺は苦笑した。




