全ての王
上位次元帯に存在する宇宙のほとんどは寿命を終えている。
その上位次元の中の1つに超高次元体の存在する宇宙があるが、その宇宙もとっくに寿命を終えていた。
星の輝きも無く
ただの暗闇が広がる
黒く
黒く
ただ黒い宇宙。
その寿命を終えた暗闇の中心に光が1つ
自ら光を放つ星らしき存在があった。
それはかってこの宇宙に存在していた星々の記録を集めたホログラムの様だ
大気も無く
水も無い
ただのかってあった記憶
映像のような星。
そこには蛍のような小さな白い光の玉が飛び回っている。
【ただいま帰りました】
すうーっ、と姿を現した3体の青い巨体、超高次元体と呼ばれる存在は、瞬く間に小さな光の玉に変化する。
この小さな光の玉こそが真の姿、
肉体などとうに捨て去った永遠の存在、
名も無いこの小さな光の玉達は全てを超越した者達。
《ごくろうさまだったね》
たったひとつだけ紫に光る光の玉
この宇宙を支配した王であった存在は
今も絶対者として君臨していた。
【なかなかに面白い宇宙でありました】
【順調に進化しており、時間を重ねれば上位にいたれる宇宙だったと思われます】
【滅ぼしましたが】
3つの白い光の玉は紫の玉に報告していく
【我は最初に滅した地球人と呼ばれる者達の文化に興味を持ちました】
【同じ種族で殺し合いを繰り返しているのが興味深い】
【滅ぼしましたが】
楽しげに語らう光の玉達
《ふむ、じゃがいくら時を重ねようとも
上位高異次元生命体の誕生はありえなかっただろう》
《滅ぼしても良い宇宙だったのだ》
紫の玉は告げる
《すぐに次の宇宙へ行ってもらうがいいか?》
【喜んで】
【すぐに参りましょう】
【全ての宇宙を滅ぼします】
そう言い残し白い玉達はまた別の宇宙に飛ぶ
《いくつの宇宙を回ろうが未だに上位高異次元生命体には出会えずか》
いつになれば我らの永遠を終わらせてくれるのだろうか、
我らだけが上位次元で存在し続ける理由とはなんだ?
他の上位次元は全て無にかえっているというのに・・・
そう思考する紫の玉に
また別の宇宙を滅ぼした者が報告にくる
[王よただいま帰りました]
《うむ、ごくろうだったな》
紫の玉、王は求めている。
自分達を超える存在を、
それを自分達の存在する次元より下位の次元に求めることしかできない現実は、とても残酷なものだった。




