パチンコは人生
俺がパチンコを打ち始めて2時間以上経過した、回転数を見てみると700回転を越えている。
もちろん大当たりなんて一回もきていない。
「5枚目」
そう言いながら5枚目の一万円札をいれる。
こんなにあっけなく1万円という大金が消費されていくのはどうなのだろう?
当時の人達はどんな気持ちで一万円札をパチンコ台にいれてたんだろう?
汗水流して働いて手に入れたお金をこんな・・・
「むなしい、、」
俺はもう打つ気持ちが失せてきてるのだが
ブブブ!!ガガガ!!
【引け!!】
ガガガ、ガガガ!!
ピロピロリー〜〜〜♫フィ〜バ〜〜ァ〜
「よっしゃ〜!!大当たり45連目!!うひゃひゃ〜」
俺の右横でピノが大当たりを爆連してるのだ、
「パチンコたっのし〜い!!」
ピノがパチンコで大当たりを引くのは分かってた事だ、こいつは運が凄く良いからだ。
妖精族でたった1人生き延びたのもその運の良さが大きかったのだろう。
俺もこいつの運には何度も助けられたものだ。
チラリと横を見るとタイミングよくピノと目が合ってしまう。
ピノは俺の台の回転数を見て
「あ〜、福太郎の台もそろそろ当たるんじゃない?だって今777回転目じゃん、縁起いいよ!たぶん」
そんなことを哀れみの目で言ってくる。
クソ!一回でいい、一回だけでも当たってくれ!!
なんとなく解ってきた、無駄なのに一万円札を入れてしまう気持ちが・・・
「少年、私ももうすぐ800回転だよ、こうなったら1000回転まで回してみようか〜」
左隣の婦人警官はそう言うがリーチのたびに台に付いている大きなボタンを連打しまくってますよね。
ただのノーマルリーチなのに・・・
ピコ〜ン!
という大きめの音が俺の台から聞こえてきたので見てみると、保留がなんか金色に変化していた。
「福太郎!金保留だよ!激アツだよソレ!やったね」
ピノが俺の台を見て興奮している。
婦人警官さんは
「・・・・」
無言、横目で俺の台をチラチラと見ながら何も言わない、さっきまでけっこう話してたよね?
ピロピロピロ〜赤文字
金扉
ガガガガガガ!!役物稼働!!!
今まで何一つ出てこなかった演出がここぞとばかりに続いて出てくる。
そしてリーチ先は星4つ半の1番熱いリーチに発展!
これは当たったな!
最後に液晶の画面に大きなレバーが現れて
【引け!】
俺は手元にあるレバーを引いた
プスン
434
えっ?
揃わなかったんだけど
「復活、は無いか〜、あ〜惜しかったね、金保留で外すとか、やっぱり赤文字がいけなかったのかな〜、うん、でもパチンコではよくあることだよ、大丈夫、こういう激アツを外したあとは近いうちにお詫びの激アツリーチがくることが多いから、諦めずに打つといいと思うよ〜少年」
俺のリーチ中、無言だった横のパチンカスさんはリーチが外れた途端に話しかけてくる。
ピノは気まずそうに目をそらして無言なのに。
「これ、本当に当時の人間はどんな気持ちで打ってたんだろ?俺はこのお金は自分のじゃないし、なによりこの世界でお金なんて全然価値が無いからいいけど・・・」
俺は6枚目の一万円札を入れながらそう言うと
「難しいな少年、大昔の人間さんはお金の為に何だってしてた、お金が人を支配していた時代さ、今みたいにお金に意味が無い時代を過ごしている私達には考えてもしょうがない事だよ」
同じく6枚目の一万円札を入れながら婦人警官は
「お金がゴミのようだ〜」
と笑っていた。
俺は思い出す、子供の頃に少ない小遣いを貯めてダムガンのプラモデルを買ってたことを、あの頃の俺には一万円札とか夢の存在で・・・
「ゴミか・・・」
手元にある一万円札の束を見ながら俺は呟いた。
結局パチンコを終えたのはピノの連チャンが終了してからだった、107回大当たりとか凄すぎるんだが?
出した玉は景品かお金と交換なんだけど
「荷物になるからどっちもいらな〜い」
ピノはそう言いながら店を出ていった。
俺と婦人警官は一度も大当たりを引けず辞めとなった。
店を出て駅前まで歩きながらイトオが
「少年は当然リベンジにいくよね〜、私は明日も行くけど、どうする?」
と聞いてきたので
「リベンジは行くけど明日はいいや」
と返事をすると
「うんうん、また行くって言ってくれただけでも私は嬉しいよ〜パチンコは人生だからね〜」
いや、違うと思う。
「あたしも福太郎が行く日にいくよ〜!」
機嫌良く飛び回っているピノのセリフを聞いて俺とイトオは顔を見合わせて
「「これは次も負けそうだ」」
と笑った。




