勝てる可能性
ダムガンのテストを行った翌日の朝、
いつものように俺とピノは駅前の広場でベンチに座っていた。
ただいつもと違うのは、
「ほうほう、今のミサイルを撃ち落としますか、完全に死角でしたよね、オートも切ってるのによくやれます、神業乙ですよ」
「凄いけどさ、少年はもっと何か言いながら操縦するべきだよ、ほら今のとこ、見える!とか、そこ!みたいなセリフを言うべきだったんじゃないかな?セリフ赤文字で激アツみたいな?駄目だ赤文字でハズしたわ昨日〜」
「いや〜よくやるわあんたら、でもな実写版ダムガンとかやるんやったらウチにも言ってくれたらよかったんに、ウチ?もちろんヒロインやろ、濡れ場とかオッケーやで〜あははっ」
いつもの大画面モニターには、昨日やったダムガンのテストの映像が流れていた、
それをなぜかトワ、イトオ、ナナといったアンドロイド女子も一緒に観てる。
俺達は呼んでいない、呼んだのは
「お前たち、真面目に見たまえよ、お前たちを呼んだのは姫さまが幹部にも見せろと言うから呼んだのだ、遊びではないのだよ」
博士のセリフに俺は驚愕する。
アンドロイドに幹部がいたこと、この3人娘が幹部だということ、特に婦人警官の格好をしたパチンカスが幹部とかやばくね?
3千人いるらしいアンドロイドさんの幹部が、毎日ブラブラしているこの3人とは・・・
「ええと思うで、このてのマシンをここまで動かせた人間さんなんて過去におらなんだやろし、実践も楽々こなせるやろな〜、ただなぁ、、、」
「魔力で補正してるんでしたか?私には解りませんが、、ロボットの動きではないですよね、ただ、、」
「少年は勇者だっけ?あの動き生身でもできんの?凄いね〜あははは、まあ、でも、、」
「「「超高次元体には勝てない」」」
3人揃ってそう言うのを博士は、う〜む、とうなり
「しかし福太郎くんは勝てると言ってるがね」
と博士が言うと3人娘は俺を無言でジ〜〜ッと見てきた
「あたしも勝てると思うよ、福太郎が言いたいこと解ってるし〜」
「ピノくんは倒す方法を知ってるのかい?」
「うん、アレの映像とかだせる?」
ピノがそう言うと博士が端末を操作してモニターに超高次元体の映像をだした。
「ほらアレの表面、薄い虹色のバリアみたいなのがあるでしょ?」
「うちにはなんも見えへんけどな」
「見えませんね」
「レインボーとか胸熱なんだけど、残念見えない」
どうやらアンドロイドさんには虹色の膜がみえないのか、
「そのようなものが見えたという記録はどこにもない、君達2人だけが見える現象だとすると、魔法関係かね?」
「う〜ん、あれは魔法とは違うけど、それに近いものだね、こっちでいうとこのバリアっていうやつ?」
ピノがバリアだって言ってるけど、ちょっと違う。
「オーストラリアとインドネシアを消滅させるほどの兵器を直撃させても傷ひとつ付かんかったんやで、いくらバリアってもな〜、限度があるやろ?」
ナナの言うとおり、世の中には限度がある。
すこし解りやすく説明するか、
「えーと、俺には〈無限倉庫〉っていう技が使えるんだけど、こうやっていつでもどこでも物を出し入れできるんだが・・」
俺は無限倉庫を起動させる、すると空中に虹色の膜が現れた、そこに手を入れると中に入っている物の情報が頭の中にでてくる。
「あっ、見えます、虹色の膜が」
「うむ、私にも見えるぞ福太郎くん」
「見えるね〜、あれでしょそれってアイテムボックスっていうやつでしょ、うっわ〜」
「異世界物の定番やな〜、ウチにも見えるわ」
どうやらアンドロイド娘達は無限倉庫を視認できるようだ、無限倉庫から手を抜き取り、取り出した物を見せながら、
「どういう訳か、無限倉庫の入口は魔力の無い人でも見れるから、もしかしたらみんなも見えるんじゃないかと思って起動させてみたんだよ」
俺が手に持っているのはスイカほどの大きさの黒い果実、表面に白い渦巻き模様がついているのが特徴だ。
「あっ、グ〜ル実じゃん、福太郎それ好きだよね、味はこっちの世界のスイカに似てるよね、見た目は全然違うけどー」
ピノがグ〜ル実の説明をしてくれた。
異世界の果物か、と博士の興味をひく
「そのグ〜ル実とやらがアレの討伐の役にたつのかい?」
「いえ、このグ〜ル実をまた無限倉庫に入れます」
俺はグ〜ル実を虹色の膜に放り込む、グ〜ル実は虹色の膜の向こう側に消えていった。
「さて、イトオさん」
「ん、なにかな少年」
俺は婦人警官のイトオに言う
「さっきのグ〜ル実に攻撃してくれるかな?」
するとイトオは
「無茶なこと言うね少年は、グ〜ル実は無限倉庫とやらの中だろ?アイテムボックスの中身を破壊しろと言うとはだいたい目標が見えないのに、、、」
そのセリフと同時にイトオは腰に付けてた拳銃を抜き無限倉庫の虹色の膜にぶっ放した。
プシューーーーーー
と、拳銃からビームが出て虹色の膜に放たれる、
見た目がリボルバー型の拳銃なのにレーザー銃だったとは、怖えよ。
「ありゃ〜駄目だこりゃ」
レーザービームは虹色の膜の向こうに飛んでいくとそこにあったパトカーに直撃、パトカーは爆発した。
「イトオ、あなたが片付けなさいよね」
トワが冷めた目でイトオを見るが、すぐにドローンが飛んできて消火している、残骸もすぐにロボット達が片付けるのだろう・・・
「傷がついたか見てみようか」
俺はまた無限倉庫からグ〜ル実を取り出す、グ〜ル実は傷ひとつない状態だった。
それをみんなに見せると、また無限倉庫にグ〜ル実を放り込む、そして
「次は俺の番だ」
そう言いながら俺は左手に剣を握る。
「その剣どっからでてきたんや?」
ナナのつっこみを聞きながら俺は虹色の膜を剣で斬りつけた、手応えあり。
左手に剣を持ったまま右手で無限倉庫の中からグ〜ル実を取り出す。
グ〜ル実は綺麗に真っ二つに切られていた。
「「「「おお〜〜〜」」」」
アンドロイド娘たちがパチパチと拍手してくれた。
俺は切れたグ〜ル実をピノに渡してやるとピノはそれを食べ始めた。
「勇者の剣に、モグモグ、、福太郎の魔力を纏わせて、、、ムシャムシャ、、切りつけたんだから、、ゴクン、、、切れて当然よ!!」
ピノが食べながら説明してくれた。
「この剣は異世界にある特殊な素材で作った代物でね、魔力をのせると次元の壁も切れる」
俺は剣をみんなに見せながら言うと、博士が
「あの虹色の膜は次元の壁なのだな、その壁の向こうに超高次元体は存在していたのか」
人類は次元の壁をまだ超えていない、その前に滅んでしまったのだから。
「次元の壁ですか、人間さんの兵器では無理ゲーという訳ですね」
「しかも人間さんにはあの虹色の膜が見えてへんかったからな」
「異世界の素材で兵器を作ったら次元の壁を超えて攻撃できんの?少年」
「無理さ、人類は魔力とやらを扱えないからね、異世界の素材で兵器を作っても強力な魔力を纏わせてないと意味がないんだろ?福太郎くん」
俺は博士の問いに頷きながら、また無限倉庫の中をまさぐり目当ての物を掴むと道路の方にソレを置いた。
ドドドン!!!
という重そうな音を立て置かれたソレは20メートルほどの巨大な岩だった。
透明で見た感じは水晶に似ているがキラキラとたくさんの金色の粒子が石の周りで輝いている。
「あ〜魔黒竜の心臓石じゃん、福太郎の剣の材料だったやつ!」
説明ありがとうピノさん。
「ほう、これが異世界の、、、」
博士が興味ぶかそうに顔を近づけて観察し始めた。
続いて他のアンドロイド娘達も石の周りに集まる。
「なんていうか不思議な石ですね」
「この金色の粒子、解析できへんのやけど何や?」
「あはははっ、心臓石とか、名前からやばくね?」
石を囲みワイワイするアンドロイドちゃん達にピノが説明し始める
「魔黒竜っていう三百メートルぐらいの怪物がいてね、そいつを福太郎とあたしで倒したのさ!!その死体から採取したのがこの心臓石なんだよ!!!」
まるで俺達2人で倒したかのような口ぶりだが、実際は師匠やティアやエレ、タマコやワンコもいたぞ。
「なるほど心臓石でダムガンの武器を作ろうというのか福太郎くん」
博士の問に俺は頷きながらベンチに座る。
石の周りでは女子5人がワイワイガヤガヤと騒いでいるがそれをほっておいてコーヒーを飲む。
そしてモニターに映されている超高次元体に言った。
(一応準備はしておくさ、お前が出てきた時のためにな・・・)
備えは必要、
なにより俺の勘がコイツはまた地球に現れると言ってるから、出ようが出まいが準備しておくに限る。
超高次元体と戦う準備を
「ゆっくり、じっくりと確実に勝てるよう準備するのさ」
俺には時間があるからな、たっぷりと暇な時間が・・・・な




