ダムガン 04
「全部撃ち落としたか」
ミサイルが飛んでこなくなったので一息つく。
コクピットのスクリーンにはこっちに向けて飛来してくるものはない。
「テスト終了ですかね博士」
俺はモニターにむかって問いかけた。
すると
『いや、これからが本番さ』
瞬間、地上でピカッと何かが光る。
ゾワリと悪寒が走るのと同時に俺は急激な回避行動をダムガンにとらせた。
紙一重で回避したのは地上から放たれたレーザービームだった。
俺は全速でダムガンを飛ばせてこの場所から離れる、ピカピカピカと地上が光だしたからだ。
「海上だ、海上にはビームの発射台はない筈!」
俺は次々と放たれるビームをかわしながら海上へと移動した。ビームは淡路島、小豆島、四国から飛んでくる。
距離が空いたおかげで回避しやすくなった。
しかしその考えは甘かった。
姫路の南の海域に存在する【家島諸島】
そこには広大な採石場や大小のたくさんの島々があるのだがそれら全てが秘密の防衛基地になっていたのだ。
もちろん俺はそんなこと知らない。
そしてそこから飛んでくる無数のビームたち、回避するのが精一杯だった。
『それらの基地は来たるべき時に備えたものだ、なので破壊するのは禁止とするよ』
「り、了解!!」
ふざけるなと言いたいが辞めておく。
『10分だ、10分間耐えたまえ』
これを10分?
面白いじゃないか、
四方八方から飛んでくるビームを避けながらも俺は笑っていた。
高まる集中力、
そして忘れていた闘争本能、いや抑えていたのか、それらが開放されていく。
全身にチカラが溢れてくる。
俺の意思に従って動くダムガンはいつの間にか残像を生み出すほどの早さで動く。
それを工房から見ている博士は驚く。
「残像?あんな機能はついていないハズなのだが、そもそもあの速度で動ける機体ではないはず・・」
「魔力よ、福太郎の魔力がダムガンを包み込んでいるのよ!」
「なるほど魔力か、私には見えもしないし感じもしないが、ふむ」
「今の福太郎はダムガンよ!ダムガンは福太郎よ!」
「何を言いたいかは分かるよ、魔力でダムガンと一体化してるんだね、それであの動きができるのなら君達の可能性は私が思っていたより高い」
「当然でしょ、福太郎は世界を救った勇者なんだからね!!」
嬉しそうに笑うピノを見ながら博士は思う
なら今度はこの世界を、と。
「あと3分」
ビームを避けながら俺はビームを打つ。
打ったビームは飛んでくるビームに当たり相殺する。
ビームを避け、ビームを撃ち落とす、そんなこと不可能なのは俺も分かっている。
だができる、できてしまう。
異世界での戦闘、いや死闘で得たものはSFだと思っていたこんなムチャな戦闘でも役にたっている。
「無駄じゃなかったな」
もはやビームを交わすことなど俺にとっては簡単な作業だった。
見てかわしている訳ではないのだから。
相手の攻撃を見てかわしていたら、とっくの昔に異世界で死んでいる。
理屈が通じない相手を倒すには常識で当たるのは無駄なのだと俺は知っている。
アニメでは交わしていただろ?
「我ながら酷い思考の持ち主だな俺は」
残り30秒。
残り20秒。
残り10秒、
そのタイミングで
ドドドドドドドドドーーーー!!!
いきなり宇宙からビームの雨が降ってきた。
「このタイミングで、やってくれますね博士!」
俺は降ってくるビームの雨を避けるが、
ガガッ
ビームの一本が右肩を掠めた。
残り1秒のことだった。
まあ、このテストに勝ち負けなんてないんだけどね。
クソ・・・・




