ダムガン 02
昼食を食べた俺達は無人タクシーに乗り込む
目的地は博士のいる工房だ。
工房までは10分ほどで着くのだが、この無人タクシーの乗り心地が良すぎる。
本当に走ってるのか疑うほど静かで身体に何も感じないのだ、
「くかー、ぐーー・・・」
俺の隣でピノは速攻で寝ていた。
(俺も10分だけ休むか・・・)
すぐに着くのは分かってるけど少しだけ脳を休ませるために俺は目を閉じた。
・・・・・・
ハッ!!と目を覚ます。
完全に眠っていたみたいだ。
「おはよう」
声がするほうを見てみるとタクシーの前の席で何かの端末をいじっている博士がいた。
いつの間に乗ってきたのだろう?
「すんません、寝てしまって・・・」
「ん、ああ、気にすることないさ、ほんの一時間ほどだからね」
「起こしてもらってもよかったんですよ」
「ふふっ、君達人間にとって昼寝は悪いことではないからね、私としても状態の良いキミと仕事をしたほうがいいのさ」
そう言いながらタクシーから降りる博士。
俺も寝ているピノをつまみ上げてタクシーから降りる。
周りは工場や倉庫といった建物が建ち並んでいる。
そして少し離れた所には港があり巨大な貨物船が繋がれていた。
「あの船は今しがた月から来たとこだよ」
あの大きな船は普通に宇宙からいろんな物資を運んでいる、そう考えたらこの時代の技術は凄まじい。
それにしても、俺につままれたままでまだ寝ているこの妖精の図太さもなかなかに凄いと思う。
「見たまえ」
博士が指差す方向には目的の工房があるのだが、その工房の前には・・・
「ピノ、起きろ」
俺は摘んでいるピノを軽く振り回す。
「ぴゃわわわー、なにすんのさ!!」
「やっと起きたか、見ろよアレ」
目を覚ましたピノに目的のモノを見ろと促す。
「まったく何だっていうのよ、んん??ああ!!ダ、ダムガン!!!」
そう、俺達の見てる方向には1/1実物大のダムガンが立っていた。
シリーズ一作目の初代ダムガンだ。
「すすす、すご〜い!本物よ、本物のダムガンだよ!!!」
興奮しながらダムガンに向かって飛んでいくピノ、
俺もダムガンを観察しながら歩いていく。
か、かっこいい。
今から2週間前、駅前でピノとダムガンを観てたらアンドロイドのトワとナナがやってきた。
そして一緒にダムガンを観ながら話をしてたとき、なにげなく俺が、
「これだけ科学力が発達してるんだからダムガンも作れるんじゃね?」
と聞いたら
「できますよ、たぶんアニメよりも高性能なのが」
「作りたいんだったら、そっち方面の技術に特化した奴がおるから紹介したるわ〜」
ていうことで紹介されたのが博士だ。
そして、
「ふむ、本物のダムガンかい?10日ほどあれば作れると思うが、君の要望しだいで変わってくるな」
10日間?
たったの10日で巨大ロボットができるのか・・・
そして作ることになり製作中にちょくちょく見に行ったんだが凄いね未来の技術。
作業用のメカが凄いのなんの、博士が指示をだすだけでトンデモナイ早さで作られていく初代ダムガン。
作り始めて3日で形ができてたよ。
まあ、そこから俺もいろいろ注文をつけて本当に10日で完成してしまった。
「では福太郎くん、さっそくで悪いが乗り込んでもらえるかい?」
博士が手元の端末を操作するとダムガンのコクピットハッチが開く。
全長20メートルほどのダムガンのコクピットの位置は地上から13メートルぐらいだ。
「了解」
俺はコクピットに向かってフワッと飛び上がっていく、それを見て博士が
「あっ、乗り込むための乗降エレベーターがついてるんだが、、、まあいいか・・・飛行魔法とかいうやつだね、便利なものだ」
「ねえ博士さん、福太郎パイロットスーツとか着なくていいの?」
「ああ、緊急のときにスーツなんて着ている時間なんてないだろう?それを考えてアレのコクピットは作ったからね、大丈夫さ」
「へーーーっ」
「ところでピノくん、君は乗らないのかね?」
「あたしはダムガンが動くのをこの眼で見たいから今回はパスだよ」
「ふむ、では一緒にダムガンが動くのを観るとしようか」
「ワクワク、ワクワク」
俺はハッチに着地してコクピットの中を見る。
広い!人の3人ぐらいは余裕で乗り込める。
アニメと違いペダルやレバーという物は付いていない、あるのは柔らかそうな大きいシートとその前にモニターがあるだけた。
「よし、やるか」
シートに座ると身体が沈み込み身体の重さが消えた。
そして肘置きにおいた両腕をやわらかい空気の塊のようなものが包み込む、両足も同じようなもので包まれると周りのスクリーンがパッ、パッと光だし外の景色を映し出した。
「これは壮観だな」
コクピットに映し出される景色はダムガンの見ている景色なのだ、俺は今、ダムガンになっている。
地上にはキャッキャ、キャッキャとはしゃいでいるピノと眠そうな目でこっちを見上げている博士が居る。
「よし!」
俺は右腕を振る意思をダムガンに伝える
するとブンブン、とダムガンの右腕が振られた。
「こっちに手を振ったよ〜、やっほ〜」
嬉しそうに手を振り返すピノが見える。
どうやらちゃんと動いてるようだ。
「次は・・・」
歩く意思をダムガンに伝えてみるとダムガンは歩きだした。
よし!ちゃんと俺の思ったとおりに動いてくれる。
俺はダムガンを動かし工房の横にある広い空き地に移動した。
「どうだね感触は?」
目の前のモニターに映っている博士が聞いてくる。
「最高ですね、思ったとおりに動いてくれますよ」
「それは上々、では本番といこうか?」
「了解です」
「ではこの場所まで移動してくれたまえ」
ピコーンと右のスクリーンに目的地が表示された。
そこはここから南にある瀬戸内の海上だった。