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500年後の世界 04



「な〜んにもないね〜」


「そうだな、何もないな・・・」


いま俺とピノは何もない空き地にいる。

ここは俺の実家があった場所なんだが綺麗に整地されて雑草一本、瓦礫一つ無い。

周りを見渡しても住宅街だった面影も無い。


「この辺りはな、最近開拓した地域でな、住宅街を再現するか検討中なんだが、人類が滅んでるのに家を建てても無駄じゃないかと、意味がないと、そういう意見が多いので今は保留中なんだわ。」


そう教えてくれてるのは土木建築担当の一人だという男性型アンドロイド TIN GN-036 のオサムさん、見た目は建築関係の中年男性風、電子タバコを咥えてる。


「この周りって建物とか残ってなかったんですか?」

 

「残ってなかったなー、瓦礫はあったが、雑草や木で森になっとったよ。開拓する時も 森を開拓するようなもんだったな」


「この辺なんですよ、俺の家があったの」


俺は足元の乾いた土を触りながらため息をついた。


「そうか・・建てようとおもえば半日もあれば建つがな、お前さんの望む家を建てたるよ」


電子タバコをふかしながらオサムさんが言ってくれる


「今は、まだいいです」


「・・・そうかい、まぁ決まったら言いにこい、建てたるから」


そう言い残してオサムさんは別の現場に行ってしまった。


パタパタパタと妖精が俺の肩に降りてきて座る。


「ねえ福太郎、これからどうするのさ?」


人類滅亡、人類文化再生計画、超高次元体、西暦2500年、

そういった話を一通り聞いたんだけど、まだピンとこない。


「とりあえず駅前に帰るか、焦って行動する必要なんてないからな」


「そうだね晩御飯も食べなきゃだしね〜」


気がつけば日は傾き、長い一日が終わろうとしていた。






「また夜がくる・・・」


さっきまで青く輝いていた地球も夜が来ればただの黒い影の惑星に変わる。

それでも昔は人工的に作られた無数の灯りにより幻想的な夜の地球の姿を魅せてくれていた。

しかし今では夜の地上を照らす明かりはなく

寂しい夜の闇に支配された世界を見せつけているだけだ。

これが本来の夜の地球の姿ではあるのだが・・・


「ここから見る夜の地球はあまりにも冷たい」


月面にある宇宙港。

各惑星から採掘されて運ばれてきた資源を保管し、地球へと運ぶための重要な巨大施設。

そこに彼女はいる。

長い黒髪は腰の辺りまであり、

若く美しい姿はまるで伝説にある[かぐや姫]と言ってもいい。


MAN-AAA-001 初姫(はつひめ)


最初に造られた人型アンドロイドである彼女は月面都市にあった歴史博物館で機能を凍結され展示されていた。

ある日 彼女は目覚める、破壊され尽くされた月面都市の瓦礫の中で。

そして知る、人類がいないことを、

120年自分が眠っていたことを。


そして彼女はすぐに行動する

ゆっくりと確実に丁寧に必要なシステムを復旧させていく

膨大な時間がかかったが、優秀な彼女はついに地球へと帰還した。


時に西暦2450年


地球で彼女を待っていたのは 緑の大地と動物達の楽園だった。

もはや人の生きた証はほとんど残っておらず、

新しい地球の歴史は大自然と動物たちが作っていくのだと知る。

世界を見て回った彼女は地球には もはや自分たちの居場所はないと感じ取り 月へと帰る決心をする。


だが見つけてしまった。

最後の最後で見つけてしまったのだ。


地球上で唯一残っていた建造物。

白く美しかった姿は汚れ、屋根も壁もところどころ剥がれ落ちている。

しかしその古い城は建っていた。


150年間放置され、超高次元体の来襲にも耐え、

人類の科学を注ぎ込まれて生み出されたものがすべて消滅してるなか、

この姫路城はまだ建っていたのだ。


とても長い時間、姫路城を見つめていた彼女は決心する。


地球は もはや人間のものではない。

だが 人が生きていた証は残してあげよう。


この周りだけでいい

姫路城があるこの土地だけでも人のために残してやろうと。


そして50年の時が過ぎた


西暦2500年の現在、夜の地球にぽつんと明かりが灯った。

世界で唯一の街、姫路に人工の明かりが光るのを見て彼女は微笑むのであった。



「初姫さま、地球へ降りる貨物船の準備ができました」 


そう報告してきたのはスーツを着た、デキる美人秘書風のアンドロイド

MAN-ZX-015 市子(いちこ)だった。


「そう、では予定どおり播磨灘に着水後、姫路港で荷揚げでいいわ」


「初姫さまは乗艦なされないのですか?」


「あたしは当分様子見するわ」


そう言うと初姫の近くに1枚のモニターが現れる。

そこには姫路の駅前の店でラーメンを食べている福太郎の姿が映されていた。


「いまの彼には時間が必要だから」


そう、今はまだ会わなくてもいいだろう。

姫路には優秀な部下達がいる、彼らに任せておこう。


「確認する時間が必要なのよ、あたしにもね」


これからいろんな事がおきるでしょう。

これからきっと忙しくなるでしょう。


だから少し準備が必要なのよ


初姫は笑いながら夜の地球を眺めるのだった。







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