500年後の世界 03
「人類文化再生計画?なにさそれ?」
ピノが首をかしげている。
「滅んだ人類の文化を再生する計画です。」
名前のまんまだな
「200年前に人間さんもろともこの世界はメッチャクチャにされてな、なーんも残っとらんかったんよ。もちろんここいらへんもなーんも残っとらんかったわ」
そう言いながら外を見るナナさん、店の外には姫路城が見える。
「それじゃあ姫路城も・・・」
第二次世界大戦すら生き残った我らが姫路城もさすがに人類滅亡するような事態には耐えられなかったか。
「いや、それがな姫路城は別、残っとったんよ。」
「世界中の建築物や遺跡が全て消えさっていたのに、姫路城だけが唯一残っていたのです」
「さすがに無傷ではなかったけどな、形が残ってただけでも奇跡やで、ホンマなんやろなあの城」
姫路城が凄すぎる件
「でもさ、なんでこの世界って滅亡しちゃったのさ、あたしはそれが知りたいんだけど、興味がでてきたから教えてよ、福太郎も知りたいでしょ?」
当然知りたい
「そうですね、では観てもらいましょう。」
トワがそう言うとテーブルの上にパッと大きめの画面が出てきた、その画面の中には巨大な未来都市が広がっている。
「これは西暦2299年7月01日の東京です」
凄すぎる、見たことないような高い建物が山のように建ち並んでいる、空には車のような乗り物が飛び交い、さらに巨大な空中都市が浮かんでいた。
「空中に人が住んでいるのか?」
「この時代の東京の人口は7千万人を超えていました、なので地上や地下では収まりきらなかった人間が空中に住んでいたのです」
そうまでして東京に住む意味があるのか疑問だが、凄すぎるのには変わりない。
「日本はな人口減少で1億人きった時代もあったけど、23世紀に入って世界中の人口が爆発的に増えてな、日本もこの頃は2億人近くおったんよ〜」
「2億人とかウソでしょ?想像できないんだけど!」
ピノがポトリと口からポテトチップスを落としながら驚愕している。
「この時代、人間さんにとってはこの世の天国みたいやったからな、色んな問題が全部解決して寿命で死ぬぐらいしかなかったんやから増える一方や」
「人類にとってもっとも繁栄して幸福な時代だったと記録に残っています」
たしかに写しだされている映像の中の人達はとても幸せそうに暮らしていた。
「働かなくても飢えることなく、欲しいものが手に入ったらしいです」
「学校とか行かなくていいのか」
「学校なんて大昔に無くなっとるよ、寝ている間に脳が勝手に学習してくれるんやから、み〜んな平等な知識やモラルをもっとたんよ」
そんな世の中で人はなにをしてたんだろう?
たしかに幸せではあるが・・・・
そんなことを考えてたら画面が一時停止になった
「さてさて、ここから人類が滅亡する映像が出てくるんやけど、見なくても言葉で教えてもええんやで」
「地上波では放送できない映像です」
見ますよ、見れるなら見たほうがいい。
「福太郎が見るならあたしも見るけど?」
ピノが俺に気をつかってくれる。
「見るさ当然、再生してくれ」
そう言うと映像が再開された
東京の街を映していたカメラの映像が何かを見付けたのか東京のはるか上空を映しだす。
最初はただの青空だった、しかし徐々にソレは形を現しだした。
それは青い色をしていた、8本の腕があり大きく両手を広げていた。
人の形をしたソレはうつ伏せで地上を見つめていた。
「でっか!!!」
ピノが驚く
「その青いのは全長3千メートルあります」
ソレの影で地上の人達はソレに気づいた。しかしまだ危機感はない。きっと敵などとは思っていないのだろう。
ソレの頭部には3つの大きな目玉と小さな口があった。その口がニヤリと笑う。
そしてソレから光の糸が東京に降り注いだ、太い糸、細い糸、赤い糸、青い糸、黒い糸、それらの糸は人や建物を貫く、その糸は降り止むことを知らない。
「これは実際の映像なのか?あっ」
カメラが破壊されたのか映像が途切れる、しかしすぐに別の映像に切り替わった。
さっきよりも遠目の映像だ。その映像は5分ほど続き、青い巨大なソレが攻撃をやめて空に消えていくところで終わる。
終わる直前、東京は綺麗に消滅していた。
空中都市も何もかも残ってはいなかった。
「東京にソレが現れたんと同時にな世界中で同じようなものが現れて大都市を消滅させたんよ」
「この日からソレらが人類を根こそぎ一人残らず殺していったの、地下に隠れようが海底に隠れようが、宇宙にいようが関係なかった。火星も水星も木星も人類が存在する場所に現れた」
映像は続いていく、アメリカ、中国、ヨーロッパ、そして宇宙、青いソレは容赦なく人類を殺していく。
もちろん人間も無抵抗ではなかった、ミサイルやレーザービーム、見たことないような兵器で青いソレを攻撃するが
「ねえコイツ、傷一つ付いてないんだけど・・」
ピノが気味が悪そうにに見ていると
ピカッと眩しいぐらいに画面が光る
「この時代の人類最強の兵器です、この地点でオーストラリアや周りの国には人間は残ってませんでした」
オーストラリア上空に現れたソレに使われた人類最強の兵器はオーストラリアを消し飛ばしながら破壊のチカラを開放していく、そしてその兵器は一発ではなく次々と撃ち込まれていく太陽が地上で生まれ世界を光で満たした。
「この攻撃によってなオーストラリアとインドネシアは完全に消滅して今では海しかないよ、さらに巨大な津波が発生してな、もう地獄そのもの」
「そしてコレです、衛星のカメラです」
次に映し出された映像には無傷で両手を広げて笑うソレが映されていた。
「なんなのコイツ、恐怖を通り越して笑っちゃうんだけど」
ピノは顔を青ざめながらコーラを飲む。
「ソレが現れて3日で人類は滅びました」
「人間さんが滅んでから200年の間、一回も現れらんとこみると、狙いは地球やなくて人間さんやったんは解ってんやけどな〜」
ケホケホとコーラを飲んだピノが咳き込んでいる。
炭酸にむせたのだろう。そして
「あのさ、さっきからこの青いのをソレとかコレとか言ってるけどさ、コイツは何者なのさー!」
それな、なんなんだよこの青いの。
「正体はまったくの不明です、目的は人類の滅亡でしょうが、どこから来たのか何者なのかまったく解明できませんでした、それは現在もです」
たった3日でこんなことをされたら何も解らないで滅ぼされて当たり前だろう、次元が違いすぎる。
「でもな〜人間さんが滅亡するまえに名前だけはつけとったんよ。ソレの名称」
ナナさんが画面に写しだされているソレを指差して言う。
「で、なんて名称なんだ?」
俺が聞くと
アンドロイドの二人は声をそろえて言った。
『名称《超高次元体》』
ああ、悲しいことに人類も次元が違いすぎることに気づいていたんだな・・・・