さあ帰ろう 01
ここは魔国とよばれる地
人とは相容れない者たちの国、だった。
それが
辺り一面が大きなクレーターと焼け焦げた瓦礫、まるで核兵器がなん発も撃ち込まれたかのような有様。
魔王とよばれた者と召喚された勇者の闘いは、この地を地獄のような有様に変えたのだ。
「小僧よ、15年前にきさまを仕留め損なったせいで、ワシの国は壊滅じゃな、くくくっ」
暗い笑いをする黒く大きな4本腕の人型は大地にひざをつき、ちからなく勇者を見上げる。
「15年か、魔王。
俺もあのときはまだ14才の小僧だったのだが、もうすぐ30才のオジサンになるよ。」
右手を魔王に向けながら語りかえす黒髪の男、召喚されし勇者。
本当はこのまま座りこみたい衝動を抑えながら両足で立っている。
ムリをしてるのだ。
足の震えをおさえながら立っているのだ。
(いやいやいや、強すぎだろこの爺さん、俺はけっこう自信あったんだぞ。
もしかしたら楽勝じゃないかと思っていたんだよ。
それぐらい強くなったんだよ
それなのに丸3日も戦わされてさー、
ギリギリ勝てたみたいなもんだよこんなの。)
しかし悟られてはいけないこれからトドメの一撃を放つのだから。
右腕に残ったすべてのチカラを収束させる。
剣では殺せない
この爺さんは塵にするするしかない
純粋なチカラの固まりをぶつけて
消滅させるしかないのだ。
そんな勇者の心中を知るのか知らないか
魔王は最後の言葉を紡ぐ
「15年とは長いものなのだな人間にとっては、、
なるほど、
時の流れを軽くみたワシらが負けたのも当然の流れか。
いいだろう
滅ぶとしよう
トドメを刺すがいい小僧」
ああ、やっと終わりだ
心の底から思う。
これで日本に帰れる。
その想いとともに右手から放たれるチカラの固まりは魔王を包み込む。
【小僧よ、ワシもタダでは死なんよ
ちょっとした贈り物をそなたに送るとしよう
ふふ、ふ、、】
ふいに頭に響いた声に反応して後に飛び、宝剣を取り出し構える。
さっきまでいた場所を睨みつけるがそこには、
ただサラサラと
魔王だったものが黒いチリとなり消えていく光景だけがあった。
とくに身体に変化はない、
ただ死ぬほど疲れているだけ。
(おどろかせやがって、
お前からの贈り物なんているかよ)
力を抜き顔をあげると
黒い雲の隙間から青空がみえる。
「おわったーーーっ」
召喚されて苦節15年
それが長いか短いか、
とりあえず
今、やっと魔王をたおせたのであった。