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どうでもいい話 脱力エッセー  作者: カキヒト・シラズ


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明治政府と万世一系

初出:令和6年5月30日


 以前、フェースブックで明治維新とフランス革命はちがうという書き込みを目にした。

 確かに明治維新とフランス革命でちがう点を探せばいくらでも出てくるが、小生は逆に両者の共通点に目がいってしまう。

 明治政府は革命政権であり、革命政権は自己の正当性を過剰に主張する。革命政権はテロ組織と紙一重であり、人民に正当な政府であると洗脳すべく、プロパガンダ工作に余念がない。これはフランス革命政権と同様だ。

 「勝てば官軍負ければ賊軍」はくしくも西郷隆盛の言葉だ。

 テロ組織も武力で政府を転覆させれば正当な政権、武力で負ければただのテロ組織。そこには正義はない。正義が勝つのでなく、勝った方が正義を名乗り、人民をプロパガンダで洗脳するだけ。これが西郷が言わんとしたところだろう。

 明治維新の成功で西郷は正当な政権を手にし、その後、西南戦争の敗北で自害した西郷は大久保利通からテロリスト認定された。

 ところでフランス革命政権は憲法で民主主義を謳っており、これを自分たち政権の正当性としている。一方、明治政府は天皇の万世一系を自分たち政権の正当性としている。

 つまりフランス革命政権の正当性を否定するには民主主義というイデオロギーを論破しなくてはならない。民主主義が正義でなければ彼らの正当性は保てない。

 同様に明治政府は万世一系の歴史が嘘だったら正当性が保てない。そこで御用学者を駆使して必死に万世一系の歴史観を主張しているのだ。

 第二次大戦後、大日本帝国は消滅し、憲法も変わったが、今日でもなお日本政府は万世一系の歴史観にこだわっているように思える。


 昔、NHKで邪馬台国特集の番組があった。

 邪馬台国は近畿にあったと主張する学者たちと九州にあったと主張する学者たちが二つのテーブルに分かれ、論争するという内容だったが、最後に纏向遺跡が紹介され、近畿説有利という感じで番組が終わった。

 この番組を見て気づいたのだが、邪馬台国論争は近畿説と九州説の対立だけでなく、もう一つ、邪馬台国が大和朝廷と同一か、別物かといった対立があるようなのだ。

 万世一系を主張するなら邪馬台国が大和朝廷と同じ政権でなければならない。一方、両者が別物とすると万世一系の歴史観が崩れる。

 気のせいかもしれないが、NHK番組では”別物説”が政治的圧力でタブー視されているような印象を受けた。


 ケヴィン・フォン・ウォルフレンの著作だったと思うが、米国や韓国では高校の歴史の教科書に日本の大和朝廷は5世紀から始まったという記述があるという。

 5世紀以前の大和朝廷はどうだったか。それは”神話”の世界であり、”歴史学”で扱うべき領域ではない。これが外国の教科書の見解だ。

 ところが日本の教科書では曖昧だが、5世紀以前から大和朝廷があるような万世一系の歴史観を支持しているような記載になっている。

 一方、日本の歴史の教科書では中国の一番古い王朝は殷王朝だと記述しており、それ以前の王朝は”神話”の世界だとしている。

 ところが私が中国返還以前、英国領の香港に旅行したとき、博物館に寄った。すると博物館の年表では殷王朝より以前の夏王朝から歴史が始まっていた。中国の歴史の教科書では夏王朝から勉強するのだろう。

 歴史教育で中国の夏王朝を認めないなら5世紀以前の大和朝廷は認めず、5世紀以前の大和朝廷を認めるなら夏王朝も認めるのが公平ではないか。

 香港旅行でそんな感想を持った。


 歴史をつきつめると万世一系説を貫くのはきつい。

 だが今の日本の政治はどうすべきか、あるいは天皇制はどうすべきかといった議論は、歴史の万世一系説と分離して議論すべきだろう。

 やみくもに万世一系説をごり押しして日本政府の正当性を人民にプロパガンダで押し付けようとするのは大人げない。

 かつてGHQのマッカーサーは日本人の成人の精神年齢は10歳程度の子供だと評したという。同じ敗戦国でもドイツ人の成人は大人だった。

 マッカーサーが果たして日本人のどのような点を幼稚に思えたのか定かでないが、”万世一系説のごり押し”は確かに子供じみている。最近、そんなふうに考えた。


(つづく)

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