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どうでもいい話 脱力エッセー  作者: カキヒト・シラズ


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シリーズ世界文学最高峰③ 「戦争と平和」の主人公は誰か?

初出:令和6年3月11日


 

 シリーズ世界文学最高峰第三弾はレフ・トルストイ「戦争と平和」である。

 ところで「戦争と平和」の感想や解説ならネットにいくらでも転がっている。まっとうな感想文を読みたい向きはそちらをお読みただきたい。以下に続くのはまっとうではない、小生の自己流トンデモ感想文だ。


 「戦争と平和」は登場人物500名以上とされるが、しばしば誰がこの作品の主人公か、評論家の間で議論になるようだ。


①ピエール=のび太

 「戦争と平和」の主人公は誰か。

 普通に考えるとピエールだ。ピエールがモスクワに来るところから物語が始まり、全編中、一番登場回数や登場時間が多いのがピエールだからだ。

 それにしろ、なぜピエール以外の人物が主人公と考える人がいるのか。理由としてはピエールがとんでもないダメンズだからである。

 アニメのキャラクターで言えば、ピエールはドラえもんの「のび太」といった感じ。ドジで間抜けでさえない男なのだ。とても主人公のキャラクターとは言い難い。

 新潮文庫の解説には「戦争と平和」は作者の自伝的小説であると書いてある。つまりピエールのモデルは作者自身なのだ。

 だとすると文豪トルストイ大先生は若いころ、こんなダメンズだったのか、とツッコミを入れたら怒られるだろうか。

 

②アンドレイ公爵=シャア

 そこへいくと、アンドレイ公爵は完璧な主人公キャラであり、ヒーローキャラだ。

 イケメンにして容姿端麗、頭脳明晰、勇猛果敢、スポーツ万能。

 アニメのキャラクターで言えば、機動戦士ガンダムの「シャア」に近い。

 アンドレイ公爵が登場する部分は読んでいて”血沸き肉躍る”エキサイティングな感覚に浸れる。

 ところが彼は物語の前半で戦死してしまう。

 今の時代に「戦争と平和」を書いていたら、作者は編集者に書き直しを命ぜられ、アンドレイ公爵を物語の最後で殺すか、結局死なないかのどちらかになったのではないか。そんなふうに夢想している。

 

③ナターシャ=ハイジ

 さて、小説を読まず、映画だけ観た人は同作の主人公がナターシャだと思っている人もいるようだがこれはまちがい。

 ナターシャはアニメのキャラクターで言えばアルプスの少女ハイジの「ハイジ」そのもの。天真爛漫なキャラで人物の魅力度では主役を務める資格は十分ある。

 だから映画では主役かもしれないが、ナターシャは小説ではあくまでサイドストーリーの主人公であって、物語全編の主役と称するには登場回数や登場時間が少なすぎる。

 ただし全編のヒロイン役であることは確かだ。


④ドーロホフ=岩鬼

 主役ではないが、全編読了後、登場人物500人中、最も強烈なインパクトを残すキャラがこの男。

 アニメで言えば、ドカベンの「岩鬼」だろうか。

 西洋文学の枠をはみ出し、水滸伝に出てくる梁山泊の豪傑に近い。

 フランスとロシアが戦争していときに、ロシア軍に所属するドーロホフは休戦中、フランス兵になりすまし、フランス軍の陣地に忍び込んで同軍の陣中料理を食らう。ロシア軍のそれよりうまそうだったからだ。

 食事を終えるとまたロシア軍に戻り、ほどなくして両軍は戦闘再開。ドーロホフはロシア兵として戦いを再開する。

 個人的にはこういうトンデモキャラが大好きだ。

 

⑤ソーニャ=自分?

 個人的に記憶に残ったキャラクターが薄幸の女性、ソーニャ。

 物語の最初の方ではニコライというイケメンの彼氏がいたが、結局、ニコライはブスの女性(アンドレイ公爵の妹だったかな?)と結婚してしまう。

 悪いことは何もしていない純情な女性なのに、生涯独身にして貧乏(だったかな?)。

 トルストイ大先生は「こういう運命の人もいるものだ」と冷たい一文でソーニャを描写しているが、何かしら釈然としないものを感じた。


 若いころ、自分はソーニャのような惨めな人間ではない、こんな惨めな人生は送らないと心に誓ったものだがどうだろう。

 還暦に近づいた自分。考えてみれば後世に残るような仕事をしたわけではなし。人生の時間を無為に消費してしまった感がある。

 登場人物500人中、自分に一番近いキャラはソーニャではないか。最近、そんな「トホホ」な感慨に浸っている。


(つづく)


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