「ask an engineer」を知ってるか?
初出:令和6年2月29日
昭和のテレビと令和のネット動画の違いは何か。
昭和のテレビはみんなが見ている番組を流行に乗り遅れまいと必死で無理して見る媒体だったと思う。
ところが令和のネット動画はその真逆。自分だけが知っているマイナーな番組を見つけるのがネット動画の醍醐味ではないだろうか。
ミクシーニュースではヒカキンなどアクセス数の高いユーチューバーがよく紹介されるが、これは時代を逆行する行為ではないかと思うことがある。
マスコミがわれわれに見るべき番組を教示するのが昭和のテレビ。われわれ個々人が自分が見たい番組をネット界から発掘するのが令和のネット動画。
だからミクシーニュースで他人が見ている動画をわれわれに見させようとするのはおかしい。
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ユーストリームをご存じだろうか。
かつてソフトバンクの子会社だったころはニコニコ動画同様、無料で見たり、アップロードできた。
それがIBMに買収されてからは、全ユーザーが有料になったのでユーザーをやめた。
これはまだユーストリームが無料だったころの話だ。
2010年代初頭だったと思うが、ユーストリームで毎週、日曜日に配信される「ask an engineer」という番組をよく見ていた。
ニューヨークのエイダフルート社から生配信。
同社の若き(当時)美人社長、リーモア・フライドが相棒の若い男性(名前は失念)と出演する番組だ。
当初、相棒の男性はフライドの旦那だと思っていたが、どうやら違うことが途中からわかってきた。男性は主に番組の撮影や編集を担当していたようだ。
エイダフルート社は電子工作グッズを販売している会社で、同社製品を宣伝するのが番組の目的なのは明らかだが、エレクトロニクスの蘊蓄も解説することがある。
全編、英語なのでよくわからず、見ていると途中で寝てしまうこともよくあった。
それでもよく見続けたのは、番組の最後に必ず飼い猫の黒猫「モスフェット」を登場させたからだ。
この”モスフェット”というのは番組の視聴者なら一発でわかる用語だが、半導体の一種で電源回路で整流用に使うトランジスタのことだ。
動画のコメント欄に「この猫はRoHS対応か?」と書き込んだ人がいる。米国にも2ちゃんねらーみたいなやつがいる、と思えた瞬間だ。
解説すると、ちょうど2010年代初頭、半導体業界では世界的にRoHS対応の規制が始まったころだ。
共晶ハンダから鉛フリーハンダに切り替えるなど、環境問題に配慮して有害物質を電子機器の部材に使用しないことが業界で推奨され、行政が一部規制を開始した。これがRoHS対応の概略だ。
業界関係者しかわからないギャグだが、だからこそ笑える。
ところでこの「ask an engineer」を見ていた人はいるだろうか。
感想など書いていただけるとありがたい。
(つづく)




