帰路
街の中心に位置する大聖堂の周りには大きな広場がある。 広場の中心には石碑が置いてあったが、オフィエルが襲撃して来た時に何者かによって落書きされ、破壊されてしまっていた。
バハドゥルの民衆は横倒しになった石碑を踏みつけながら、奥に聳える大聖堂を正面にして続々と広場へ集まって来ていた。
大聖堂の破壊された門扉の手前には、急遽建造されたと思われる鉄骨の演壇が組まれており、周りには小さなスピーカーが幾つか置かれていた。 何の変哲もない二つ目のスピーカーであったが、このスピーカーは音波と共にマナスを飛ばし、空気中に浮遊する特定の粒子と結合して遠くまで音を響かせるという高性能なスピーカーであった。
演壇にはヘルートとペロートが立っており、ペロートの小さな頭の上には器械のカラス『シュヴァルツ』がチョコンと両足を揃えて留まっていた。
――ヘルペロ夫婦はライコウを首長にする為、ライコウの要望通りにバハドゥルの全ての市民をライコウの言いなりになるよう“洗脳”した。 市民を洗脳する事などペロートが操る『シュテルン粒子』という粒子のお陰で造作も無い事であったのだ。
街全体に粒子を飛散させ、ライコウがいかに素晴らしいゼルナーであるかを民衆に刷り込ませるプロパガンダを展開したヘルペロ夫婦。 シビュラの協力もあって、あっと言う間に民衆は二人に洗脳され、ライコウを首長にしてバハドゥル・サルダールを復興させようと、誰もが希望に満ちた街の未来に目を輝かせていた。
このように、ペロートが発生させるシュテルン粒子は、器械の判断を狂わせる特殊な粒子であった。 だが、シュテルン粒子は数日もすれば消滅するので、ペロートが民衆を洗脳させる為にはシュテルン粒子を飛散し続けなければならなかった。 シビュラと敵対関係であった時は、シビュラが発生さる『インターセプト』という妨害電波によってシュテルン粒子は悉く消滅してしまい、民衆を洗脳させる事など不可能であったが、シビュラが味方となった今はインターセプトで妨害される事もなかったので、ペロートは思う存分シュテルン粒子を町中にバラ撒く事が出来たのである――。
民衆は熱狂の渦に包まれており、地鳴りのような歓声が壇上のヘルペロ夫妻を包んでいた……。
「――かぁぁ! ウルセーな!」
市民の歓声に耳を塞ぐヘルートの横では、ペロートがワナワナと震えながら後ろを振り向いて、何やら手招きをしていた。
――ライコウの登場を期待する民衆は益々興奮し、地底の空気を震わせんばかりにライコウの名を叫ぶ――
まず、ペロートが手招きをした先からシビュラとアセナが登場した。 そして、二人の後ろにはセヴァー、さらにセヴァーの後ろからファルサとシャヤが恐る恐る付いてきていた……。
彼らがペロートに呼ばれるまま横並びに壇上へと立つと、広場を埋め尽くした民衆から地鳴りのような歓声が贈られた。
そして――
いよいよ、民衆の興奮が最高潮に達した時、青いマントを背中に付けた白銀の騎士――ライコウがマルアハ『アラトロン』を従えて、颯爽と壇上に現れた――。
「キャァァー!! ライコウ様ぁぁ――!!」
「――MVP! MVP――!」
「我らが救世主――!」
「よっ、大統領――!」
称賛の声に交じって、意味不明な言動も垣間見える民衆の歓声に、ライコウは被っていた兜をゆっくり脱ぎ、悠然と手を上げて応えた。
「ウォォォォ――!!」
小麦色の肌とサラサラした金髪、整った鼻立ちの少年がその素顔を見せ、青い杏眼の瞳で民衆を眺める姿に、猛然とした大歓声の波が演壇へ押し寄せた。
「……ライコウ、何だか皆、目が血走っているわね……」
民衆が熱狂している様子に、イナ・フォグは不思議がって首を傾げている。 イナ・フォグの声はライコウのデバイスから直接響き、喧噪の中でもライコウの耳に届いた。
「ま、まぁの……。 ヘルペロの奴ら、うまくやってくれたのは良いが、ちょっとやり過ぎたんじゃなかろうか……?」
ライコウは自分の名を叫び続ける民衆に引き気味になって体を反らすと、黒頭巾を被った子供忍者の横顔に目を遣った。
『……ライコウのアンちゃん! そう、恥ずかしがんな! 民衆はアンちゃんの言葉を期待してんぜ!』
ヘルートはライコウがこちらを見ている事に気づいていたようで、デバイスからライコウに言葉を送った。
民衆はライコウの第一声を、今か今かと待ちかねている――。
(うーん、期待してると言われても……)
ライコウは第一声をどんな言葉にするか迷っており、もう少し考えを纏めてから登場すれば良かったと後悔していた……。
『――ほら、ペロ! ライコウのアンちゃんにマイクを渡してやりな!』
ヘルートはマイクを持っているペロートにデバイスで指示を送った。 ところが、ペロートはデバイスからの音声が全く聞こえていないのか、手に持ったマイクを両手で握りしめてワナワナと震えながら「フフフ……」と不気味な笑みを浮かべていた……。
「ま、まさか……ペロの奴……」
ヘルートの脳裏に恐ろしい光景がよぎった時、大勢の民衆を前にして感極まったペロートが、いきなり手に持っていたマイクを口元に寄せ、民衆に向かって声を張り上げた!
「――みんなー!! ペロの為に集まってくれてアリガトー! これから、いーっぱいペロの歌声を聞かせてあげるから、みんな、たっぷり楽しんでね♡」
「――ハァァ!?」
「――ば、馬鹿――!!」
あまりの民衆の興奮に刺激されたのか、ペロートが大きく息を吸い込み歌を歌い出そうとした瞬間――血相を変えたヘルートが一瞬でペロートを取り押さえた!
「――テメェら、ペロートに歌を歌わせるな!!」
アセナとシビュラもペロートの行動に泡を食って、ヘルートと一緒に彼女を取り押さえにかかる――。 ファルサとセヴァーはヘルート達が何をそんなに必死になっているのか分からなかったが、取り敢えずヘルートの言われるままにペロートの足を抑えようとした。 ところが、マイクを離さんと暴れ狂うペロートにあっけなく蹴とばされ、二人揃って壇上から転げ落ちて行った……。
突然大混乱に陥った壇上で唖然としているライコウとイナ・フォグ……。 ヘルート達はそんな二人に見向きもせず、嫌がるペロートから必死にマイクを奪い取ろうと格闘している……。 民衆もしばらくは壇上の混乱に呆気に取られていたが、やがて堪忍袋のを緒が切れて憤懣の渦が巻き起こった。
「ふざけんな、テメェら!!」
「早く、ライコウに喋らせろ!!」
壇上の茶番に激怒した大衆が罵詈雑言を浴びせ、遂には壇上に向かって鉄管や工具を投げつけだした……。
「――どわぁぁ、モノを投げるな! フォグ、一旦後ろへ下がるぞ!」
――激怒した群衆によって壇上にモノが投げ入れられ、大混乱に陥った式典……。 このままでは収拾がつかないので、取り敢えず壇上に居た者は退却し、再度仕切り直しをする事になった。 そのおかげでライコウは民衆に話す言葉をゆっくり考える時間ができた。 そして、時間を置いたことでペロートの御乱心で激怒していた民衆はしだいに冷静になって行った――。
民衆が落ち着いた頃を見計らい、再び壇上へ現れたライコウ達――。 改めて盛大な拍手で迎えられたライコウは、何事もなかったかのようにライコウの傍へトコトコと歩み寄って来たペロートからマイクを渡された……。
「じゃ、ライコウさん、お願いね♡」
手に持っていたマイクをライコウに渡しながら、茶目っ気のあるウィンクをするペロート。
「……ったく、何が『お願いね♡』じゃ……」
ペロートのせいで、一旦式典を中断せざるを得なかった事に不満気な様子を見せるライコウ。 散々待たされた民衆は、ライコウの第一声を首を長くして待っている……。 ライコウもそんな民衆の期待を肌で感じたのか、壇上に横並びに立っている皆よりも一歩前に出て、右手に持ったマイクを口に当てた――。
――
――式典は熱狂と混乱の中で終了した。 民衆は何だかキツネにつままれたような違和感を覚えながら帰路に就いていた。
「うーん、何か違う気がするが……ライコウ様がそう言うなら、まあ、そういう事なんだろう……」
ヘルペロ夫妻によって「ライコウの命令に従う」という洗脳を受けた市民は、訳の分からない事を口走って無理やり自分を納得させて、ライコウが演説で述べた命令に従ったのであった――。
――さて、式典が終わった後、一同はファルサの屋敷で新たな首長の誕生を祝うパーティーの準備を行っていた。
「いやー、さすがはヘルペロ夫婦じゃ! お主らのお陰で民衆は何の疑いも無く、ワシのいう事を聞いてくれたわい!」
ヘルートの肩に腕を回し「ガハハハ――!」と陽気な声を出すライコウ。 対するヘルートは、ザンバラの黒髪を不機嫌そうに逆立てながら、何も言わずにハシバミ色の瞳でライコウの横顔をジトッと睨んでいた。
二人の後ろにはアセナとペロートがテーブルを並べていた。 アセナは今回のライコウの演説にご満悦な様子であり、ペロートに「お前達には色々と苦労をかけたな!」などと、ホワイトガソリンの入った洋酒を飲みながら、すでに顔を赤くして目を細めていた。
「――まぁ、仕方ないわ。 まさか、ライコウさんがあんな事言うなんて思ってもみなかったから――ねぇ、ヘルート?」
ペロートが諦めたような口ぶりでヘルートの背中へ声を掛けた。
「――チッ! ライコウのアンちゃんに一杯食わされたぜ! だが、俺はよ、こうなっちまったからにはファルサが不憫でならねぇんだよ」
ライコウに肩を抱かれたヘルートは迷惑そうにライコウの肩をどかして、ペロートの声に応える。 そして、目の前で重そうなテーブルを持ち上げようとしている作業用機械に手を貸して、ヒョイと片手でテーブルを持ち上げた。 すると、テーブルを持ち上げようとしていた鳥の巣箱のような頭をした作業用機械は、巣箱から顔を出している文鳥型の機械と一緒に『ピコ、ピコ……』と礼でも言っているかのように音を出しながら、テーブルを抱えてスタスタ歩くヘルートの後ろを付いて行った。
ヘルートがテーブルを運んだ先には、ディー・ディー、ジャーベ、ネマの三人がアミと一緒に次々と運ばれてくるテーブルを一列に並べていた。 三人は楽しそうにお喋りをしながらテーブルを並べており、遅々として進まぬ作業をアミに咎められていた。
――エントランスホールでは着々とパーティーの準備が進められていた。 しかし、この屋敷の当主であるファルサの姿が見えなかった――
「そう言えば、ファルサ様は何処へ行ったのかしら?」
ディー・ディーがチカチカライトを点滅させて、ファルサの姿が見えない事を心配する。
「ファルサはシャヤの部屋でイジけているの」
ディー・ディーの心配をよそにアミが泰然とディー・ディーに答えると、ジャーベとネマはお互い顔を見合わせ「大丈夫かなぁ?」と心配そうに二階へ続く階段へ目を遣った。
「――大丈夫。 さっき、セヴァーがアラトロンと一緒に二階へ行ったのを見たの。 たぶん、ファルサを強引に連れて来るんじゃない?」
アミの答えに三人はますます心配になって、並べたテーブルにクロスを敷く作業を止めて二階へ顔を向けた。
「ファルサ様、アラトロン様に何かされるんじゃないかしら……?」
三人は一様にファルサがイナ・フォグに如何わしい事をされるのではないかと心配した。
「馬鹿な事言わないの! 貴方達は早くパーティの準備をするの!」
アミは三人の頭を順番に『ポカ、ポカ、ポカ』と叩き、クロスが敷かれた長テーブルに大皿を並べだした。
――
屋敷の二階――ピンク色の絨毯が敷かれた可愛らしい部屋の中央には、座卓の前で項垂れるファルサと、ファルサを励ますように彼の背中を優しく撫でるシャヤの姿があった……。 ドアの脇にはイナ・フォグとセヴァーが壁にもたれながら立っており、二人の様子を見つめていた。
「うぅ……なんで俺が首長なんかに……」
顔を伏せるファルサをセヴァーが励ました。
「ファルサよ、そう嘆くな……。 私の立場も少しは考えたらどうだ? ライコウ様は貴様がまだ半人前だと感じたから故、フルとの戦いに貴様を帯同させたくなかったのだ……。
かくいう、この私も貴様と同じ……」
セヴァーはイナ・フォグが見つめる前で両手を握って鋭い目を閉じると、鋼鉄の歯を悔しそうにかみしめた……
……
ライコウは演壇で、オフィエルとの激闘をまるでジャーベのように荘厳な叙事詩として紡ぎ上げ、民衆に向かって語り出した。 ライコウの奏でる物語に一喜一憂する市民は、やがてライコウの話に引き込まれ、ヘルペロの“洗脳”も相まっていよいよライコウをバハドゥルの英雄として称賛した。
『万歳、万歳――!!』と大歓声が沸き上がる中で、すっかり民衆の信頼を得たライコウは自分の命令の全てが、バハドゥル・サルダールを輝かしい未来へ導くであろうと予言した。 もはや、市民の中で誰もライコウの言葉に疑いを持つ者はいなかった。
『――それでは、お主らにワシが首長として最初の命令を下す――!』
今までの喧騒がウソのように『……シ……ン……』と静まり返った広場にライコウの声が響いた。
『ワシは本日をもって首長を引退し、ファルサを新たな首長に任命する! そして、ファルサの側近としてセヴァー、アミを任命する!』
『……』
『『……へっ……?』』
あまりの唐突な言葉に全ての者が金縛りにあったかのように固まってしまった……。
『なんじゃ、お主ら! ワシの命令が聞けぬというのか!?』
いつの間にか背中に背負った大剣を左手で抜いていたライコウは、剣を掲げ紫電の稲光を放つ――。
すると、民衆は『オォォ――!!』とライコウの力に畏れてその場にひれ伏すと『ライコウ様のご命令はマザーのご命令!』などと叫び、ライコウの命令に従ったのであった……
……
「……あの後、ライコウ様はオフィエルが再び襲撃してくる可能性を懸念し、私とファルサがこの街を護ってもらわねば困るからという理由でファルサを首長に任命したと釈明した。 しかし、そんな理由など詭弁に過ぎん! ライコウ様は、我々がフルと戦うに足らぬ実力だという烙印を押されたからこそ、我々を町に留まらせようとしただけなのだ!」
震える声で怒りを堪えるセヴァーに、ファルサは憔悴した顔を向けた。 すると、二人の様子を見かねてイナ・フォグが口を挟む――
「――アナタ達、いい加減しみったれた事ばかり言ってないで、ライコウの言う事を素直に従いなさい」
一見生意気な少女にしか見えないイナ・フォグに向かって、ファルサが口答えせんとばかりにキッと睨む――ところが、黒いドレスを身に纏うイナ・フォグの赤い瞳は底知れぬ恐ろしさを内包しているような輝きを称えており、ファルサはその瞳を見据えると身震いをして再び顔を伏せた……。
セヴァーはファルサのキノコが生えそうな淀んだ姿を見てさらに気を落ち込ませ、遂にはガックリと床に膝を落とした。
「……ふっ、ふっ、ふっ……ファルサよ、この惨めな私を笑うがいい……。 貴様に散々偉そうな事を言っていたくせにこの体たらくと来たものだ……。 私は自分が強いゼルナーだと勘違いしていた愚か者に過ぎないのだ……」
セヴァーが諦めたように自分にそう言い聞かす。 すると、イナ・フォグが呆れた表情でセヴァーの肩をポンと叩いて、口を添えた。
「……そう卑屈にならなくても、アナタ達は他のゼルナーと比べて充分強度があるわ。 もっと自信を持ちなさい。 ……まあ、もっとも、今のアナタ達がフルと戦えばあっという間に破壊されてしまうでしょうけど」
イナ・フォグの言葉はセヴァーにとって何の慰めにもなっていなかった……。 それもそのはず、イナ・フォグは別にファルサとセヴァーを慰める為にこの場にいる訳ではなかった。
「――そんな事より、もういい加減、話は済んだでしょ。 何時までもウジウジしてないで、アナタ達は早くこの場から消えなさい。 私は“この子”に用があるの」
イナ・フォグの視線の先には、胡坐をかいて項垂れているファルサの隣で心配そうにファルサを覗き込むシャヤの姿があった……。
「うぅ……シャヤ……」
悄然とした様子でシャヤの顔を見るファルサに、シャヤはボンヤリと青いライトを光らせながらコクリと頷いた。
「おい、ファルサ! アラトロン様のご命令だ! 後の話はライコウ様とするから、早くこっちへ来い!」
セヴァーはイナ・フォグの言葉に従ってスクッと立ち上がると、ファルサに退出を促した。 そして、イナ・フォグに一礼をすると、そそくさと部屋から出て行った……。
シャヤをイナ・フォグと二人きりにさせる事が心配なファルサは、再びシャヤの顔を黙って見つめる。 対するシャヤもファルサが何を言いたいのか良く解っており、ファルサに心配かけまいと優しくファルサを説得した。
「ファルサ様……ワタシハ大丈夫デス……。 アラトロン様ハ、レヴェドミタイナ怖イ方デハアリマセン。 アラトロン様ノ御用ガオ済ニナッタラ、ファルサ様ノ傍ヘ、スグ参リマスカラ」
シャヤの首には、長いワイヤー状の腕をした小さな球体型作業用機械が巻き付いていた。 その球体にメイド服を着せただけのネクトも、シャヤの言葉に『ピピピ……』と音を出して同意しているようだった。
――こうして、ライコウの策略にまんまと嵌ったセヴァーとファルサは、憮然とした表情を崩さずに、シャヤの部屋を出て一階で楽しそうに騒いでいるライコウの許へ向かって行った――。
――
イナ・フォグはシャヤと二人きりになると、何やら含みのある笑顔を浮かべ、シャヤの傍へ近づいた――。 シャヤは座布団の上に座っており、正面には背の低い小さなテーブルが置いてあった。 イナ・フォグはてっきりシャヤとテーブルを挟んで向かい合って座ると思いきや、シャヤの目の前で彼女を見下ろし何やらブツブツと呟いた……。 すると、ドレスの中から無数の小さな蛇が這い出てきて、一斉にシャヤに襲い掛かった――!
「――キャッ!」
思わず叫ぶシャヤにイナ・フォグは「心配しないで……」と言って、優しく微笑んだ。 イナ・フォグの服から飛び出した小蛇は円らな瞳を瞬かせながらシャヤの金属製の身体に次々と噛みついて行く……。
「……ア、アァ……」
シャヤは小蛇に噛みつかれると、グッタリとして横へ倒れてしまい――すぐに「スゥ、スゥ……」と気持ちよさそうな寝息を立てて、眠ってしまった……。
――イナ・フォグは自白を促すスキルを使用して、シャヤを眠らせた。 彼女はシャヤから一体何を聞こうとしているのか――?
「シャヤ、アナタはアザリアの事を知っているわね?」
イナ・フォグは気持ちよさそうに顔全体にピンク色のライトを滲ませるシャヤに向かって問いかける。 イナ・フォグはアザリアの素性についてシャヤに聞きたいことがあったのだ。 しかし、シャヤはイナ・フォグに期待外れな返答をした……。
「……言えません」
シャヤの声は、先ほどまでの滑舌の悪い機械音声ではなく、人間のような流暢な発音であり、可愛らしい女性の声色に変わっていた。
「……? 言えないというのはどういう事なの? あそこにある写真はアザリアの写真じゃないの?」
イナ・フォグが顔を向けた先には、アンティーク調の棚が置かれており、その棚の上にアザリアによく似た人物の写真が収まったフォトフレームが飾られていた。
「……機密保持規約に違反する為、言えません」
「――やっぱり、そうね」
イナ・フォグはシャヤの答えで、写真に映っている人物がアザリアであると確信した。 シャヤはイナ・フォグのスキルによって、ウソを付く事が出来ない。 したがって、知っている事は自分の意思に関係なく洗いざらい話すはずである。 ところが『機密保持規約』なる制約で知っている事を話せない。 つまり、アザリアについて問うと機密保持規約に違反するという事は、シャヤがアザリアの素性について詳しい事を知っているという事である。 そして、写真に映る人物がアザリアかどうかを「言えない」という回答は、写真の女性がアザリアであるという証左にもなる。 シャヤはイナ・フォグのスキルによってウソを付く事が出来ないので、写真の人物がアザリアでなければ「アザリアではない」とはっきり否定するはずだからだ。
「……アナタ、一体何者なの?」
イナ・フォグは努めて冷静を装って、シャヤに質問を続けた。
「私はファルサ様を愛するネクトです」
「……」
またもや期待外れのシャヤの答えに、イナ・フォグは質問を変えた。
「……アナタがネクトになる前は……誰だったの?」
「誰でもありません……」
「……? 誰でもないって言う事は無いでしょう。 じゃあ、何でアナタはアザリアの事を知っているの?」
「……アザリアについては何も言えません」
イナ・フォグの誘導尋問に引っ掛からなかったシャヤ。 しかし、その口ぶりからシャヤがアザリアの情報を記録している事は間違いなかった。
「――むぅ。 その何も言えない機密事項を何でアナタが記録しているの?」
「……私は“モノ”だったからです……」
イナ・フォグはシャヤの意味不明な答えに困惑した。
「……モノ? 意思の無い物質という事?」
イナ・フォグが問いかけると、シャヤはコクリと頷いた。
「……でも、何でモノだったからってアザリアの事を知っているの? 意味が分からないわ」
「アザリアについては何も言えません……」
しつこく誘導尋問をするイナ・フォグに泰然と答えるシャヤ。
「あー、もう、わかったわ! じゃあ、質問を変えるけど、何でアナタがモノだったからって、機密事項を保持している理由になるの?」
誘導尋問に引っ掛からないシャヤに不愉快な様子を見せるイナ・フォグ。 すると、シャヤはイナ・フォグの問いに、再び不可思議な答えを返した。
「その理由は所有物だったからです」
「アザリアの?」
「――違います」
――イナ・フォグは、これまでのシャヤとの問答から分かった点を頭の中で整理した。
まず、シャヤはアザリアについて詳細な情報を知っているが、その情報にはプロテクトが掛けられており、どうやっても開示する事が出来ないという点。 つぎに、棚に飾ってある写真はアザリアであるという点。 そして、シャヤが「誰かの所有物」であったからアザリアの事を知っているという意味不明な事実――。
イナ・フォグはその三点の情報を整理し、恐らくシャヤはアザリアのごく身近にいた者が所有していたモノであったのだろうと推測した。 人形だったのか、それとも、機械だったのか……? シャヤがかつてどんなモノであったのかは分からないが、その『ごく身近にいた者』が一体誰なのかが分かれば、アザリアの正体に近づけるかも知れない……。
「それじゃ、アナタは一体誰の所有物だったの?」
もし、シャヤがアザリアについての質問だけにプロテクトを張っているなら、この質問には答えられるだろうとイナ・フォグは予想した。
イナ・フォグの予想通り、シャヤは彼女の質問に答えを返した。
「……ミコ……」
「――なっ――!?」
イナ・フォグは赤い瞳を目いっぱい開かせて驚愕した。 そして、シャヤの答えで、シャヤが一体何者であったのか理解した。
(ま、まさか、この子が……? でも、そうだとしたら、アザリアとアイツが気づくはず……)
イナ・フォグはぷっくりとした赤い唇に手を当てて、困惑した様子で憶測を巡らせた。
(……いや、すでにアイツ等はシャヤの素性に気付いているんだわ。 つまり、この子はアレではなく、ミコサマが所有していた別の物だという事――)
イナ・フォグは自分の憶測に合点がいったと見えて、少し落ち着いた様子を見せた。 そして、相変わらずピンク色のライトを浮かび上がらせながら気持ちよさそうに眠っているシャヤの顔を摩った。
(この子はかつてミコサマの所有物だったけど、例のモノでは無い。 アザリアについて詳しい情報を持っているだけで、他には”何の情報も持っていない”と考えるのが妥当ね……。 その考えであれば、何故この子が今まで放っておかれたのかが理解できるわ。 アザリアの事なんて、アザリア自身はもちろん、アイツも詳しいでしょうからね。 今更この子のプロテクトを外してアザリアの素性など知る必要も無い訳だわ……)
イナ・フォグはそう考えながらシャヤを抱きかかえると、そのまま隅にあるカプセルベッドへ移動した。 シャヤの首にはメイド服を着た球体のネクトが「ピピピ……」と心配そうにシャヤの首に巻き付いていた。
――結局、イナ・フォグはアザリアについての詳しい情報を知る事が出来なかった。 だが、シャヤがかつてミコという者の所有物であった事が分かっただけでも十分な収穫であった。 イナ・フォグはこれ以上シャヤに質問を重ねても期待する答えを得られないだろうと考え、シャヤをそのままベッドに寝かした。 そして、シャヤの部屋を出てライコウがいる一階へと降りて行った――。
――
イナ・フォグは何故、アザリアの素性を知ろうとしていたのか?
彼女はもともとアザリアと面識があった。 だが、アザリアが一体何者なのかは、自分の記憶の奥深くで霧に包まれて忘れてしまっていた……。 ただ、アザリアが自分にとって何となく恐ろしい存在である事だけは覚えていたので、アザリアと会う事を極力避けていた。
つまり、イナ・フォグはアザリアの素性を知ろうとしていたというより、かつて自分が恐怖したアザリアを再び思い出そうとしていたのだ。
イナ・フォグがアザリアを恐れていた理由――それは、イナ・フォグの存在を脅かす呪術をアザリアが使用出来るからであった。
ライコウとミヨシがダルヴァザの上空にある地上への出入口までオフィエルを誘導した時、アザリアはポッカリ開いた出入口の大穴から、巨大な逆鉾を地底へ落した。 その偉大な槍はオフィエルのアストラル体を貫き、あっと言う間にオフィエルを無力化させ、オフィエルは逃亡した。
イナ・フォグはその顛末をミヨシから聞いた時「……アザリアですって!?」と吃驚し、化け物でも目撃したかのように怯えた表情を浮かべ、身を震わせた。
対するアザリアも、何故か不明だがイナ・フォグと会う事を避けているようだった。 イナ・フォグが『ダカツの霧沼』で隠遁していた時は二人が出会う機会など皆無であったが、イナ・フォグがライコウと行動を共にするようになってからは、アザリアはイナ・フォグの行動を監視するようなり、なるべくイナ・フォグ達が進む方向を避けていた。 (その時、アザリアにはあるジレンマがあった事は付け加えなければならない……)
アザリアが巨大な槍を地底へ落とした後に忽然と姿を消した理由も、イナ・フォグがバハドゥルへ迫って来ていた事に気が付いたからであった……。
――イナ・フォグはミヨシの話を聞いた後、恐る恐るダルヴァザへと歩を進めた。 すると、霧が立ち込めるダルヴァザの方から徐々に巨大な槍が姿を現した。 柄を深く地底にめり込ませ、天に向かって鋭い切っ先を光らせている大槍はイナ・フォグの身を竦ませ、嘔吐する程気分を悪くさせた。
「いっ、一体……あの槍は……?」
凝視するだけで自身にこれ程影響を与えるモノなどかつて経験した事が無かったイナ・フォグは、自分が何故アザリアを忌避していたのか、はっきり分かったような気がした。
「うぅ……もう、これ以上は近寄らない方が良いわ……」
こうしてイナ・フォグが引き返そうとした時、たまたま、彼女と同じくこの槍を調査しに来ていたセンと鉢合わせした。 耐え難い悪寒と怯懦に苛まれて酷くイラ立っていたイナ・フォグはセンを見つけるや、ひっ捕らえて尋問にかけた。
センはこの神々しい逆さまの槍が、アザリアが放ったものである事を知っていた。 アザリアについての記憶を一切忘れてしまっているイナ・フォグは、センにアザリアの事を聞こうとしたが、センは頑なに「マザーの許可が無いと話す事が出来ない」と拒否した為、理不尽にもセンを拷問にかけたのだった。
結局、センはイナ・フォグの拷問に耐えながら気を失ってしまい、イナ・フォグはアザリアについて何一つ思い出せないまま、ダルヴァザを離れた。 その後、ようやく気分が落ち着いたイナ・フォグはライコウを探して管理棟跡地へ向かったのである。
イナ・フォグはライコウを抱きしめると、何故かあの恐ろしい槍を前にしても身の震えを抑える事が出来た。 イナ・フォグがライコウに甘える仕草を見せていたのも、アザリアによって放たれたあの恐ろしい槍の恐怖を忘れる為だったようだ。
――さて、不幸にもイナ・フォグによって“辱め”を受けたセンは、その後、意識を取り戻して大聖堂へ向かい、マザーにイナ・フォグの横暴を訴えた。 センはマザーに向かってひとしきりイナ・フォグを誹った後、バハドゥルから撤退したいと申し出た。
『……ダメですわ』
センの申し出はマザーの無慈悲な一言によってアッサリと棄却された……。 こうして、センはガックリと肩を落としながら、再びバハドゥルの治安を維持する為の任務に就いたのであった……。
――
イナ・フォグが一階へ戻ると、ファルサが駆け寄って来た。
「フォグさーん、シャヤわぁ?」
顔を赤くしながら馴れ馴れしい態度でイナ・フォグに近寄るファルサ。 オイルの匂いをプンプンさせて、どうやら酷く酔っぱらっているようだった。 ファルサの後ろでは、ライコウと一緒に談笑しているセヴァーの姿があった……。
「……シャヤは眠っているわ。 少し経てば目が覚めて下へ降りて来るでしょう……それよりも、アナタ、随分お酒臭いわね……」
イナ・フォグは酔っ払いが大嫌いである。 特に酔った勢いで気が大きくなって調子に乗る者はイナ・フォグの制裁の対象になる。 調子付いてイナ・フォグに馴れ馴れしい呼び方をするファルサに対して、彼女は赤い瞳に侮蔑を乗せてファルサを睨み、顔を顰めた。 本来なら、この場でファルサに仕置きをして懲らしめるつもりであったが、やたらと上機嫌なファルサとセヴァーを見て不審に思い、ファルサを無視してライコウの傍へと向かった。
「おおっ、これは、これはアラトロン様、ご機嫌麗しゅう!」
セヴァーはイナ・フォグを見るや、フラフラになった体を直立させてピッと敬礼をするが、大分酔っぱらっているようで、体が斜めに傾いていた……。
「……ライコウ、彼らは一体どうしちゃったの?」
イナ・フォグはセヴァーを無視し、ライコウに顔を向けて呆れた様子を見せた。
「いや、まあ……二人はワシの頼みを素直に受け入れてくれてのぅ。 このバハドゥル・サルダールに留まって、街の再興に尽力すると決心してくれたんじゃ」
ライコウも、まさか、二人がここまで酔っぱらうとは思っていなかったようで、お互い肩を組みながら仲良く『バハドゥル・サルダール賛歌』を謳うファルサとセヴァーを眺めて苦笑いを浮かべた。
「ふぅん……。 ライコウ、アナタは酔っていないの?」
「……も、もちろん、ワシは酔ってなどおらん!」 (お主に何されるか分からんから……)
ライコウはイナ・フォグが酔っ払いに対して、有無を言わさず過激な制裁を加える事を痛いほど分かっていた……。 したがって、最近では酒をチビッと飲んでも、イナ・フォグの冷然とした顔が目に浮かび、酒に酔うことなど到底出来なかったのだ……。
「ふぅん……」
イナ・フォグは酔っぱらっている器械達をジトッとした目で見つめている。 ライコウはせっかく盛り上がって来たパーティーでイナ・フォグに暴れられては困ると思ったのか、矢庭にイナ・フォグの手を取って、屋敷のエントランスに向かって歩き出した――。
「ちょっ、ちょっと、ライコウ! 何処へ行くの――!?」
「――この通り、屋敷の中は騒がしいからのぅ! ファルサとセヴァーをどうやって説得したのかは、屋敷の外でゆっくり説明するから――」
「……確かに、ここは五月蠅いし、酔っ払いが多くてキライだわ」
イナ・フォグはライコウに手を引っ張られながら、煩わしそうな声で周囲を見渡す――しかし、言葉とは裏腹にその雪のような白く美しい顔に暖かな微笑みを浮かべていた。
――夕刻から行われたパーティーは大いに盛り上がっていた。 同盟メンバーや元管理者であったゼルナー達も出席しており、大きな屋敷は数百人の来場者で埋め尽くされていた。 立派な長テーブルが置かれ、その上に幾つもの金属が盛り付けられたオードブルや、オイル、ガソリンやらの酒が並べられた立食式のパーティーは、食べ物を奪い合う同盟メンバーや、ひたすら金属を食い散らかすゼルナー、騒がしく歌うファルサとセヴァーに調子を合わせ、二人を囲んで踊る仲間達など、皆一様に楽しそうな様子であった。
アミはディー・ディー達と一緒にファルサのヘタクソな歌声を聞きながら腹を抱えて笑っており、彼女達の横ではヘルートとアセナ、シビュラが慌てた様子でペロートの口を抑え、羽交い絞めにしていた……。 ペロートはどうやら感極まって自分も歌を唄おうとしていたらしく、三人が必死になってペロートに歌を唄わせまいと彼女を取り押さえていたようだった。
さらに、今までのバハドゥルでは想像も出来なかった光景――作業用機械達もまた、器械達に交じってパーティーに参加しており、テーブルに並べられたオードブルをつまんでいた。 もちろん、彼らには感情がなく、パーティーに参加した器械達に促されてオードブルを機械的につまんでいただけであった。 だが、彼らのそんな様子を見る者は、何故かココロの奥底がジンワリと暖かくなるような気がした。 それは、作業用機械達が幸福を感じている証拠なのか、それとも、彼らを見る者がココロに秘める慈愛の証なのかは分からなかった。 しかし、器械達のココロに感じたこの言いようのない心地良さは、いずれ全世界の器械達の思いを一つにさせる力となる事は、まだ誰も気づいていなかった――。
――
イナ・フォグはライコウに手を引かれ、屋敷の外へ出た。 街の照明はすっかり消え、夜の帳が町全体に降りていた。 遠くでは微かに明かりが灯っており、止まったままの点々とした灯りからドリルのような音が響いて来ていた。 恐らく、土を掘削して何かを掘り出しているのだろう。 街の中心を走る大通りは、車両のライトがまばらに光っていた。 通りを走る車両は殆どが残土や“ガラ”を運ぶ大型車両のようだった。
――ライコウの演説のお陰で、民衆は復興に協力的になっていた。 街の輝かしい未来を夢見た市民は希望にあふれており、昼夜問わず街を再興するべく復興工事に参加していたのであった――
ライコウはイナ・フォグの手を握りながら、顔を上げた。 オフィエルによって地底都市の照明は半数が破壊され、上空は殆ど真っ暗闇であった……。
「アイナの方が空は綺麗じゃったのぅ……」
ライコウはいつかイナ・フォグと一緒に同じように空を見上げていた事を思い出した。 イナ・フォグはライコウの手を放すと、ライコウの腕を取り身体に寄せた。
「……あの時、確かアナタ――『ウソによって誰かを掬えるなら、自分がウソによる咎を負う』と言っていたわね。 アナタは民衆にそうしたように、ファルサとセヴァーにもそうやって、自分が咎を負ったんでしょう?」
ライコウはイナ・フォグの指摘通り、ファルサとセヴァーがバハドゥルに留まらざるを得ないような尤もらしいウソを付いたのである。
「ま、まぁの……」
ライコウが恥ずかしそうにイナ・フォグにどんなウソをついたのかを説明した。 イナ・フォグは「よく、まぁ、そんなクチからデマカセがペラペラと……」とライコウがでっちあげた八百万のウソに感心した……。
ファルサとセヴァーはライコウのウソにすっかり騙されて、街の再興の為に全力を尽くすとライコウに約束したのであった。
「あの二人はまるで兄弟のようじゃのぅ――良いコンビじゃ。 だからこそ、まだ二人を死なせたくはなかった」
ライコウはそう言うと、腕を取るイナ・フォグの手を解いた。 イナ・フォグは不満そうな顔でライコウの顔を見上げる――すると、今度はライコウがイナ・フォグの肩を抱き寄せた。
「フルとの戦いは、恐らく多くの仲間が死ぬだろう……。 その覚悟が無ければフルを破壊する事は出来ない。 でも、本当は――ヒツジ、アセナ、コヨミ、カヨミ、ラヴィ、ミヨシ――戦いに参加する全員に生き延びて欲しいと願っている。
もちろん、フォグ――お主もじゃ」
イナ・フォグは満足そうに眼を閉じて、ライコウに身を預ける。
「ふふっ、私は大丈夫……。 アナタとヒツジが無事である限り、私が消える事はないわ」
ライコウとイナ・フォグはちょうどヒツジの名を口にした時、同じタイミングでヒツジの事が心配になった。
「ライコウ、私はあまり長くここには居たくないわ……。 ディ・リターへ残したヒツジの事が心配なの……」
確かにイナ・フォグはヒツジを心配していた。 だが、それだけでなく、あの悍ましい巨大な槍から出来るだけ遠くへ離れたかったという理由もあった……。
「そうじゃのぅ――。 ワシもちょうどヒツジの事を心配していたところじゃ。 これ以上、長居すると、また『やっぱり、首長になってくれ』なんて言われる可能性もあるしのぅ」
ライコウはそう言うと、自分の胸に頭を預ける瞳を閉じたイナ・フォグの横顔を見つめた。 ライコウの顔は何だか難しい顔をしていたが、イナ・フォグは眼を閉じていたのでライコウの様子が分からなかった……。
――ライコウがイナ・フォグを屋敷の外へ連れ出した理由は、ファルサとセヴァーについたウソをイナ・フォグに詳らかにする為ではなかった。 もちろん、酒嫌いのイナ・フォグが折角盛り上がっているパーティーに水をさす危険があったからという理由もあったが、それよりも、誰もいない場所でイナ・フォグと二人きりになりたかったのだ。
何故、ライコウはイナ・フォグと二人きりになりたかったのか?
当然、イナ・フォグと二人きりになってイチャイチャしたかった……訳ではない。 ライコウはイナ・フォグにアザリアの事を聞きたかったのだ。
……だが、ライコウは身体を寄せるイナ・フォグの安心しきった姿を見て、何故だがアザリアの事を聞くことに後ろめたさを感じた。 ライコウがアザリアの事を彼女に聞く事を躊躇する理由――それは、ライコウがアザリアと会った時と同じような胸の高鳴りをイナ・フォグに対して感じていたからであった。
(俺はアザリアよりも……フォグが……)
ライコウは自分でも何故そう思うのか分からなかった。 だが、イナ・フォグの横顔を見ると、何故だか胸が高鳴って彼女の傍にいたいと思ってしまう。 そして、もし、自分がアザリアの名を口に出そうものなら、イナ・フォグが自分の傍から離れてしまうかも知れないと恐怖したのである。
対するイナ・フォグもまた、アザリアの名前すら触れる事はなかった。 本当はアザリアと出会ってしまったライコウに「アザリアについてどう思っているのか」問いただしてみたかったのだが、ライコウはイナ・フォグに対していつもと変わらず優しかったので、イナ・フォグは「わざわざ、火中の栗を拾う必要もない」と自分からアザリアについて言及する事を避けたのであった――。
二人のそんなココロの中は、もちろんお互い知るはずもなく、ライコウとイナ・フォグは今ヒツジが何をしているのかを予想し合って、お互い笑っていた……。
――
夜半過ぎまで続いた宴は終わり、その翌々日に再び大聖堂前の演壇に立ったファルサとセヴァー。 二人を挟んでヘルートとペロートが並んでおり、前に立つ四人の後ろにはアミ、ディー・ディー、ネマ、シャヤが控えていた。 さらに後ろには作業用機械達が輪になって座っており、何やら楽しそうにお喋りをしているようだった――。
(初めまして、ミナサン、僕はライコウ様に助けられたロボットです)
四角い顔をした作業用機械が格子窓のような口から『ガー、ガー』と音を出した。
(――ロボット君、はじめまして! 僕達は前にいるシャヤさんに助けられたんだ! 僕の頭の中で休んでいる文鳥君と、僕の恋人のキューちゃんもね)
鳥の巣箱のような頭をした作業用機械はピカピカとランプと光らせて、四角い顔のロボットの音に応えた。 彼の巣箱の中には文鳥型の作業用機械が『チュン、チュン』と楽しそうに声を上げて、巣箱からひょっこりと顔を出している。 そして、彼の両腕にはメイド服を着た小さな球体型の作業用機械がしっかりと抱かれていた。
(僕たちはこれからも、ずっと一緒さ――!)
(――ずっと――)
――大歓声が響き渡る中、ファルサは自身が新たな首長となった事を民衆に宣言し、バハドゥル・サルダールを全出力を用いて復興させることを市民に誓った。
盛大な拍手と、新首長誕生を祝う歓呼に包まれる中、ファルサは後ろを振り向いた――。
「シャヤ、これから君は首長の妻になるんだ」
ファルサはそう言ってシャヤに微笑む。
「はい、ファルサ様――嬉しゅうございます。 私達はこれからもずっと一緒です」
美しい声を奏でるシャヤは、ファルサの笑顔に桜色に輝く顔を返した。 幸せそうなシャヤの隣には、アミ、ディー・ディー、ネマが二人の様子を見ながら微笑んでいる姿があった。
「――ハハハ! ファルサ、これからが大変だぞ! 俺は必ず、もっと性能を上げてライコウ様を超えて見せる! 貴様は首長をしながら、俺の厳しい訓練に付いて行かなければならんのだ!」
前に下ろした黒髪を靡かせながら、高揚した様子でファルサに鋭い瞳を向けるセヴァー。 長い髪を後ろに纏め、腰に巻く赤い帯に短剣を携えたファルサは「望むところだ――!!」とセヴァーに言葉を返し、スッと短剣を抜いて天へ突きあげた――。
――ファルサが天に掲げた短剣は、瞬く間に嵐を纏い大剣へと変わり、上空へつむじ風を舞い上がらせる――
『――ウォォ――!!』
興奮の坩堝と化した大聖堂の広場――新たなバハドゥル・サルダールの未来を期待する民衆は、止むことなくファルサの名を叫び、共にバハドゥルを偉大ならしめん事をライコウとマザーに誓ったのであった。
――それから、四日後――
バハドゥルから数百キロ離れた地上の荒野では、大型の戦車の後ろから二台の四輪駆動車が付いてきており、後輪から赤茶けた砂煙を立てていた――。
「もう、もう、モウ――!! 何で自分が貴方達に付いて行かなければならないんでありますか!?」
戦車の上から聞きなれない言葉遣いの女性の声が響き渡って来た。
「……アナタ、いい加減ウルサイわ……。 三秒以内に口を閉じないと、また例のお仕置きをするわよ……」
「ひっ! そ、それだけは――!」
イナ・フォグの脅しに身を縮こまらして怯える女性――彼女は両耳の下あたりまで伸ばした赤い髪をした小さな頭を両手で抱え、ブルブルと恐ろしい記憶を消そうと腐心している様子である。
――女性はおヘソが見える丈の短いタイトな白シャツを着ており、背中には大きな機械の翼を付けていた。 機械の翼は羽のような金属が幾重にも重ねられており、隙間からは赤いランプや青いランプが点滅していた。
腰には黒い革のような柔らかいベルトが巻かれており、数本の細い金属チェーンがぶら下がっていた。 ベルトの下は、まるでスカートのように太い七分丈の黒パンツを履いており、足元には白いスニーカーのような靴を履いていた。
また、彼女の左耳には大きな無線装置のようなパットが装着されていた。 ピンと伸びたアンテナからは何かの電波を受信しているようで、時々アンテナの先から赤い光を放っていた。
彼女の特徴はその人間臭い服装でも、背中に接続されている機械式の翼でもなかった。
大きな胸が誇張されたきつめの半袖シャツから出ている両腕――少し日に焼けたような浅黒い両腕には、左右にそれぞれ五つの銀色の腕輪が通っていた。 一見金属製に見える鈍い光沢をした軽そうな腕輪は表面に細やかな植物紋様が彫られており、腕から数センチ程度宙に浮いている以外は何の変哲も無い腕輪のようだった。
だが、この腕輪には二つの不可思議な特徴があった。
腕輪は女性がいくら腕を動かしても一定の距離を保ったまま宙に浮き、決して腕から離れる事は無かった。 そして、一見腕を動かすのに邪魔に見えるこの腕輪は、両手で物を抱えたり、両腕を組んだりする時に、まるでホログラムのように物体を透過したのである。
これらの特徴から、腕輪は金属では無いどころか物質でもなく、腕輪のように見える虚像であると推測出来た。 だが、女性が一体どうやって虚像を創り出しているのかは不明であり、また、何故このような虚像を腕の周りに纏っているのかも分からなかった――。
イナ・フォグは両手で頭を抱えて首を振っている女性にまるで同情する様子も見せず、女性がここへ連れて来られた事は、自らの行いが招いた結果であると断罪した。
「……アナタが悪いのよ。 バハドゥルの民はアナタのような乱暴者は、街に居てほしくないと言っているの」
「――なっ!? 何を言っているんであります! 自分の事を棚に上げて、よくも、そうシャアシャアと――! 大体、貴方は――」
顔を上げ、イナ・フォグに向かって顔を赤くして怒る女性。 少しつり上がった目をさらにつり上がらせて長いまつ毛を靡かせながら、ハート形の唇をした口からありったけの避難をイナ・フォグに浴びせる――。 しかし、イナ・フォグがジロリと赤い瞳を光らせると「――ひっ!」と一言顔をしかめて黙り込み、目を伏せた。 そして、何やらブツブツと戦車の背中向かって悪態をつき出した……。
「――まぁ、まぁ、センよ。 マザーがお主の実力を見込んでフルを討伐して欲しいと願い、お主をワシ等に帯同させたのじゃ。 お主だって、マザーの為にフルを自分の手で討伐したいじゃろう?」
――女性はマザーがバハドゥルへ派遣したゼルナー『セン』であった。 センはそもそも、バハドゥルの治安を維持する為にマザーから派遣されたが、融通の利かない性格の為、ちょっとした悪事も容赦なく罰を与える事で市民の反感を買っていた。
ファルサが新たな首長となった翌日、イナ・フォグがディ・リターへ戻る事を知ったセンは、大喜びで街の治安維持に全力を注いだ。 ところが、センが治安維持に努力をすればするほど、ファルサの下へ市民から「センを追放して欲しい」というクレームが殺到したのであった。
もちろん、マザーの側近であるゼルナーなので、ファルサが勝手にセンを追放する訳にはいかなかった。 そこで、ファルサはヘルペロ夫妻とセヴァーを連れてマザーと謁見し、センはバハドゥルの民衆には馴染まない事を訴え、センをバハドゥルから追放したのであった……。
マザーはセンをバハドゥルから追放した後、センの妹であるゼルナー『サン』をバハドゥルへ派遣する事にした。 そして、行き場を無くしたセンに、ライコウ達と行動を共にするよう命じたのであった――。
「うぅ、自分はマザーのご命令通り、悪事を働く者を厳しく罰しただけであります……。 それなのに、何故、自分があんなにも市民に嫌われないと……ううぅ……」
ライコウの問いを無視して項垂れるセン……。 よっぽど、バハドゥルの民に嫌われたのが堪えたのだろう。
冷然とした態度でセンを見つめるイナ・フォグとは対照的に、ライコウはセンが可哀そうに思え、センの傍へ歩み寄った。
「なに、少なくともワシ等はお主の事を嫌ってはおらん。 お主は立派に勤めを果たしたが、ちょっとバハドゥルの街とは肌合いが悪かっただけじゃ」
ライコウはそう言って、機械の翼をパタパタ動かしているセンの背中をポンと叩いた。
「うぅ、貴方、やっぱり良いヒトでありますね……」
センは潤んだ瞳をライコウに向けて微笑んだ。 すると、イナ・フォグは「全く……。 ライコウ、あまりコイツを甘やかしちゃダメよ。 すぐ調子に乗るんだから」と呆れた様子でライコウに忠告した。
センはイナ・フォグの暴言を「フンッ――!」と一瞥して受け流し、スクッと立ち上がると戦車の後ろを走っている二台のジープに目を遣った。
『それにしてもアセナ、シビュラ――貴方達は元気そうでありますね』
デバイス経由で二人に言葉を送るセン。 アセナは『ああっ、お前もな――』と無難な返事を返すが、シビュラは『……別に私は元気ではないみたい』と天邪鬼な返事を投げた。
『そうでありますか……。 まだ、シビュラはあの時の事を引き摺って……』
シビュラは冗談で言葉を返したつもりだったが、生真面目なセンはシビュラの返事をまともに受け取り、シビュラが過去の深い悲しみから未だ立ち直っていないのだと胸を痛めた。
『……まったく、貴方は相変わらず冗談が通じないみたい。 私は元気――アラトロンにこっぴどくシバかれた貴方よりもね』
シビュラの言葉がセンのデバイスに届くと、センは『なんだ、冗談だったのでありますか!』と言って「アハハ……」と頭を掻いて恥ずかしがった。
『……って、それはそうと、アセナ――貴方の隣にいるそのカエルは一体何者なんでありますか?』
アセナが運転するジープの助手席には、例の派手などてらを着たジャーベがチョコンと座っていた……。
『……ああ、彼はファルサ君の友達さ。 なんでも、世界中を旅したいという夢があって、我々と一緒にディ・リターへ行きたいと言うものだから、ライコウ殿が同行を許可したんだ』
――もともと、ジャーベはライコウ達とディ・リターへ行く予定では無かった。 ジャーベがどうしてもディ・リターへ行きたいと駄々をこねたので仕方なくライコウが同行させたのだ……。 ファルサ達はもちろんジャーベがディ・リターへ行くことに反対した。 それでも荷物を纏めてバハドゥルから出ようとするジャーベを、アミは自身の身体を纏うケーブルダクトで拘束した。 だが、ジャーベの決心は揺るがず繰り返しライコウに頼み込み、結果的にライコウがジャーベの熱意に絆されてファルサ達を説得したのであった――。
『ふぅん、そうでありますか……。 しかし、ゼルナーでも無い器械がフルと戦うなんて無謀であります』
『……いや、なにも彼はフルと戦う為に一緒について行く訳じゃない。 まあ、戦闘に参加しないまでも戦いの準備では多少手伝ってもらうがな』
センはアセナの話を聞きながら、興味深そうにキョロキョロと景色を眺めているジャーベを不満気に見つめていた。
『……うーん、か弱い一般器械が一緒となると、結局、自分が彼を護らなくてはならないのであります。 貴方はそれでいいでしょうけど、自分の負担が増すのであります』
『おい、おい……何でそうなるんだ? その理屈だと、お前はジャーベ君だけでなく、戦闘に参加するディ・リターの一般兵も護らなきゃならんではないか……』
アセナが呆れたように言葉を返すと、センは平然と『――当然であります』と言い返し、話を続けた。
『自分はマザーから一般市民を護るように命令された身であります。 バハドゥルの市民だろうが、ディ・リターの兵士だろうが、ゼルナーで無い限りは一般市民に変わりは無いのであります』
センの言葉にアセナは頭を掻いて「お前なぁ……」とセンの極端な考えに苛立ちを見せた。
『……アセナ、センの言う事をまともに受けていては、貴方の身が持たない。 彼女のやりたいようにやらせれば、その内、自分から考えを変えていくから放っておくのが良いみたい』
シビュラが二人の会話に割り込んで、アセナを窘める。 アセナも「……ああ、すまない。久しぶり会ったからコイツの性格を忘れていたよ」とセンとの会話を止め、車のアクセルを吹かした。
三人の会話はライコウもデバイス越しで聞いていた。
(センはやはり良い子なんだな。 しかし、真面目過ぎるせいか、皆に誤解されているようだ。
……まあ、しばらく俺達と共に過ごせば、多少は柔軟な考えを持つようにもなるだろう。 だが、その時は、恐らくアイツの傍へは、もう戻らないだろうがな……)
ライコウはセンの真面目過ぎる性格は、センがマザーの傍でずっと仕えていたからだと考えた。
――ライコウが腕を組んでセンの後ろ姿を見つめていると――
『アッ――!! ライコウ様、何かこの先に大きなクレーターが幾つもあるという警告が出てますよ!』
ミヨシが戦車の運転席からライコウのデバイスへ無線を入れた。
「――なぬ? クレーターじゃと?」
『うん、そんなの行きには無かったはずなんですが……。 メチャクチャ大きなクレーターが幾つも……』
ミヨシの指摘通り、ライコウ一行がバハドゥルへ向かった際は、そんなクレーターなどは一つも無かった。 ライコウは首を傾げてミヨシに指示を送る――。
「ぬぅ、何だかよく分からんが、そんなモノがあるんだったら、この先は真っすぐ進めん。 ミヨシ、ルートを再検索して最適な迂回ルートを探すんじゃ!」
『――ハイな!』
ミヨシは軽快な調子で了解し、戦車は大きく旋回して横へと移動を開始した。 イナ・フォグは戦車が予想外の動きをしたので、少し戸惑った様子で「あら? 何処か立ち寄るのかしら?」と首を傾げていた。
――
……イナ・フォグは全く気付いていなかった。 まるで複数の隕石が大量に降り注いだようかのように、大地に永劫の爪痕を残したこの恐ろしいクレーターが、実はイナ・フォグ自身が造ったものであった事を……
……
彼女はバハドゥルにオフィエルが出現した際、ライコウを助けに行こうと焦眉の急でバハドゥルへ飛んだ。 ところが、バハドゥルへ向かっている途中、ベトールと遭遇して大規模な戦闘へ発展したのであった。
以前、イナ・フォグによって一方的に攻撃されたベトールは、イナ・フォグが再び我が物顔で“自分だけの空”を飛び回っている事に我慢がならなかった。 『今回ばかりは許すまじ』とイナ・フォグを発見すると、全力でイナ・フォグに戦いを挑んだのである。
先手を取られたイナ・フォグは、ライコウの事を心配するあまり、戦闘に集中できずに徐々に劣勢になっていった。
――劣勢になる――
それは、イナ・フォグのマナスが徐々に体内から失われていき、イナ・フォグ自身が押さえ込んでいた凶悪な力が鎖を引きちぎり、イナ・フォグのココロを侵食する事を意味していた……。
……
『……プルサ・デ・ヌーラ……』
赤いドレスへと変化した黒髪のイナ・フォグが、ボロボロになったベトールに向かって呪詛を吐く――
「ギャアァァァ――!!」
ベトールの絶叫がイナ・フォグの頭に響いてくると、イナ・フォグはしばらくの間、意識を失ってしまった……。
……
イナ・フォグが気付くと、ベトールはどこかへ消え去っており、地上に幾つもの巨大なクレーターが出来ていた……。
「こ、これは……? う、うぅ……一体……」
イナ・フォグの身体に耐え難い苦痛と疲労感が襲って来た。
「はぁ、はぁ……くっ……こんな、こと……私は……ライコウを助ける為に……」
イナ・フォグは目の前で起きたことなどどうでも良かった。 とにかく、ライコウを助けたい一心で、ボロボロになった黒い翼を羽ばたかせながら、再びフラフラとバハドゥルへ向かったのであった……。
――
イナ・フォグの内に秘める力――それは、彼女が身を削って制御している恐ろしい力である。 彼女の体内にあるマナスが枯渇する時、その凶悪な力が目を覚ます。 そして、この世界に破滅と混乱をもたらすのだ。
その忌むべき力の源は一体何なのか?
その力の正体を知る者――それは、この世界でただ一人――『W・W=ラヴィニア』であった。
彼女は知っての通り、もともとは人間であった。 その後、器械として転生し、幾千年の時を経てライコウと出会い、行動を共にしていた。
ラヴィは一体どうやって器械として転生する事が出来たのか? そして、何故、器械として転生を繰り返しているのか?
その理由は、ラヴィの言葉からいずれ知ることになるだろう……。 ラヴィがその重い口を開くとき、あるいはライコウの過去も明るみになるかもしれない。 そして、ライコウと一緒に旅をするヒツジの『目的』も……。




