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器械騎士と蛇女  作者: ティーケー
夢想の共有
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真素の器

 ティルナング大陸とルードラド大陸を繋ぐ岩の山脈こと『アスール山脈』。 標高8000メートルを超えるこの星屈指の高さを誇る岩山が南北へ連なっている巨大な山脈である。

 この岩山を登る者は4000メートルを超えたあたりで、必ず『ベトール』に襲撃される。ベトールに襲われたら最後――どんなゼルナーも単独で撃破する事は不可能だ。 ベトールに襲撃された器械(きかい)は無慈悲に破壊され、無残にも食い尽くされてしまうのである。

 地底都市『ナ・リディリ』はそのアスール山脈の地下に存在している。 ベトールの襲撃を避け、岩山を越えることなくルードラド大陸へ移動することが出来る重要な拠点である。

アラトロンに会う為にはこのナ・リディリを必ず通過しなければならなかった。


 ライコウとヒツジ、そしてエンドルの三人は『鉄の樹海』を出て、そのナ・リディリへの出入口を目指していた。 三人のいる場所は、すでに地図上ではかなり北に位置しており、ひんやりとした風がライコウの背に着けている青いマントを煽った。

 樹海からナ・リディリへの出入口までは、(ほとんど)ど障害物もなく一本の道で繋がっていた。 それもそのはず、ナ・リディリにはこれまで多くのゼルナー達がアラトロンを説得しようと、『テヴェル古戦場』の抜け、鉄の樹海から洞窟まで往来していたからだ。

 テヴェル古戦場を抜ける為にはそれなりの武装をしなければ、いくらゼルナーと言えど、たちまちショル・アボル達の餌食となってしまう。 だが、テヴェル古戦場を越えさえすれば気温が一気に下がるので、寒さに弱いショル・アボル達の生息数が激減する。 もちろん、世界的にみれば寒さに強い個体もそれなりにいるが、ここティルナング大陸には寒さに強い個体は殆どおらず、アスール山脈を越えた先――『ダカツの霧沼(むしょう)』があるルードラド大陸に至っては、アラトロンがいるせいか、全くと言ってよいほどショル・アボルを見かける事はなかった。


 ルードラド大陸にあるダカツの霧沼は大陸の半分を占める広大な毒の沼地である。 常に毒霧が発生しており、生物はおろか、器械もこの毒霧を浴び続けると危険である。 もちろん、(さび)腐食(ふしょく)といった部分での危険もある。 だが、この毒の最も危険な被害は器械を器械たらしめる装置『アニマ』が腐食してしまう事であった。


 この毒の沼地のどこかにアラトロンは潜んでいるのだが、アラトロンを無視して毒の沼地をずんずんと進むと、大陸の最北端まで行くことが出来る。 だが、この最北端にたどりついた者は誰もいない。 冒険家気取りで最北端へ目指そうとしたゼルナーは全員例外なく毒の沼地に出現する蛇やサソリなどに食われて破壊されてしまうか、毒の沼地の霧に(まみ)れて忽然(こつぜん)と姿を消してしまう。


 ダカツの霧沼の先には何があるのか――。


 もちろん、マザーは全て知っている。 だが、器械達が参照できる地上の地図にはこのエリアは何もない雪原(せつげん)が広がっているエリアとなっているのだ。 ところが、十数年前、『アイナ』という地底都市にいたゼルナーが、マザーのデータベースにハッキングしたと主張して各大陸の都市を巻き込んだ騒動になった事があった。 アイナのゼルナーは「このエリアは地図上では隠蔽(いんぺい)されているが、実は人間様がこの地でまだ生存されており、人間様に会った器械は未来永劫(みらいえいごう)の幸福が約束される」などという戯言(ざれごと)をほざき、その話が尾ひれを付けて、ルードラド大陸の最北端には『器械達の理想郷がある』などと(うわさ)さされるようになった。

 このゼルナーはその後、『狂言(きょうげん)流布(るふ)』ということで警察に逮捕された。 そして、この戯言は『完全なデタラメ』であり、ダカツの霧沼の先には何も存在しないとマザーが公表したのであったが、器械達はこの『アイナの嘘つきアル』という異名(いみょう)を持つゼルナーの話に夢を抱き、アラトロンを説得するという大義だけでなく、ダカツの霧沼の先を行く為にゼルナーになりたいと思う器械もいたほどであった。

 そんな理由もあって、マザーからアラトロンの説得を命じられたゼルナー達は、マザーの命令だけが目的ではなく、自らの(よこしま)な欲望も抱きつつ、毒の沼地へせっせと侵攻していたのだが、アラトロンの説得は困難を極め、沼地から先には誰もたどり着けないといった状態が100年も続いたため、いつしか器械達は沼地を越える事を(あきら)め、マザーの命令も聞かずに、一日中酒場で飲んだ暮れているという残念な状況になってしまい、それに(ともな)って、宿場街(しゅくばまち)として(にぎ)わっていたナ・リディリも、徐々にその賑わいが色あせてしまったのである。


 ――


 ライコウ達三人は、ティルナング大陸の最北端であるナ・リディリへの入口がある洞窟まで来ていた。

 デバイスで洞窟の大きさは把握していたが、実際目にすると想像以上に大きく見えた。 体長100メートルくらいの怪獣ナマズが口を目いっぱい大きく広げたような形をした広大な入口は、戦車や乗用車を引きつれた軍隊でも問題なく入れるほどの幅と高さがあった。 エンドルの話では、戦車や戦闘機などの兵器を運べるようにする為に徐々に穴を広げていったということだが、洞窟というよりも、むしろ『要塞』とか『基地』とか言った方が良いような外観であった。

 洞窟の入り口とその周辺は堅固(けんこ)な金属で補強されており、そこかしこにショル・アボルの侵入を防ぐためであろうレーザーや機銃、監視カメラが設置されていた。 そして、洞窟の手前には小さな監視塔や兵舎(へいしゃ)が建てられており、数人のゼルナーが常駐して、周辺の状況を監視していた。 


 本来なら洞窟の中へ入る為には、兵舎と並行して建てられている管理棟へ行き、通行許可を得る必要があった。 エンドルも当然、その手続きを踏もうと管理棟へ行くために、ライコウとヒツジを誘導しようとしたが、三人が洞窟の入り口前へ到着するや否や、管理棟からゼルナーが数人出て来て、ヒツジの前に立ってキビキビとした動きで敬礼をし「三人を洞窟の中へと案内する」と言った。


 「……アンタ達、一体何者なのん?」


 エンドルは(いぶか)しんだ目で、ライコウとヒツジを見た。


 「ちょっとマザーに頼んで面倒な手続きをしないようにしてもらったんだよ」


 ヒツジは平然と瞳を白く光らせながらエンドルに答えた。 ライコウは、何故、ヒツジがそこまでマザーに影響力を持っているのかなど一ミリも疑問に思っていない様子で「ほう! ヒツジ、お主は偉いのぅ」と、ニコニコしながらヒツジの頭をガシガシと撫で込んだ。


 エンドルは、ヒツジがライコウに頭を撫でられながら、瞳がピンク色に点滅している様子を横目で見て、怪訝(けげん)な顔に益々(ますます)眉をひそませて考えた。


 (マザーに何かを指示できる器械がいるなんて、聞いたこともないわん……。 私達はマザーにとって従者のようなものだからん……。 私はマザーに会ったことなんてないから、マザーが実際どんな器械か分からないけど……噂に聞けば、とんでもないバケモノだっていうじゃないん。

 ……だったら、もしかして、この子も……?)


 ――そう考えながら、ヒツジを見ていると何だか()()として、手に持っていた杖をヒツジの前へ落としてしまった。 それに気が付いたヒツジが杖をゆっくり拾おうとすると、エンドルは慌てて杖を奪うように拾った。


 「えっ、えへへ……。 お構いなくん! アナタはこの先何にもしなくて良いのですのよん! 何かあったら全部私達がしますからん」


 エンドルは何だか急にたどたどしい言葉を使って、作り笑いを浮かべた。

 その姿を見たライコウはヒツジの白い瞳を見ながら、(あき)れた様子でエンドルを諭した。


 「あのなぁ……。 ヒツジがマザーとトモダチだろうが、何だろうがどうでも良いではないか。ワシらはヒツジの仲間なんじゃ。 別にヒツジが何者であろうと、お主の仲間であるヒツジに変わりはないじゃろう。 だから、変な事を気にせずに仲間として接していれば良いのじゃ」

 

 ……ライコウはそう言うが、もし、ヒツジがマザーと昵懇(じっこん)であれば、ヒツジの仲間は他の器械より遥かに優遇されると期待するのが普通であるし、逆に、ヒツジに下手な事をしたらマザーからキツイお仕置きを食らうなんていう心配も考えられる。 ライコウの言うような『どうでも良い事』では無いはずだ。

 だが、エンドルはそこまでの事を考えていた訳ではなく、単にマザーのようなバケモノとヒツジが同じタイプの器械なのかと恐れただけであったので、ライコウの説諭(せつゆ)を疑問に思う事も無かった。


 「まぁ、アンタに言われるとなんか腹立つけど……。 言われてみれば確かにそうねん。 ヒツジがマザーと何の関係があるかなんて、今は知る必要ないからねん……」


 エンドルはそうは言ったものの、やはり、ヒツジとマザーとの関係は気になった。 だが、さすがにヒツジがバケモノだとは思えない……。

 エンドルが再びヒツジの顔を見ると、ヒツジは白い瞳を点滅させて、丸い頭をテカテカと光らせていた。


 (こんな子が、マザーのようなバケモノに変身するなんて……考えた私がバカだったわん)


 すでに噂話を鵜呑(うの)みにして、マザーがバケモノであると断定していたエンドルは、ヒツジがバケモノにでも変身できるのかと恐れたが、ヒツジ自身の様子や、ライコウが平然とヒツジと旅しているところを見ても、『そんな事はあり得ない』と自己完結してしまった。 


 ――エンドルは意外と単純な性格である。 ヒツジとマザーの関係が、自分の身の振り方にどれだけ影響するのか全く考えもしなかった。 ライコウがエンドルの事を気に入ったのも、こういった損得勘定(そんとくかんじょう)を持たない純粋な性格を見抜いたからであろう。 だが、そんなエンドルと言えども、ヒツジとマザーの関係は好奇心として興味はあった。

 

 「……あの、そろそろご案内を……」


 三人を待ちくたびれた様子で待っていたゼルナーの一人が恐る恐るヒツジに声を掛けた。


 「――おお、そうじゃった! こ奴がくだらん事を言い出すから、お主らを待たせてしまった……。 すまんかったのぅ」


 声を掛けられたヒツジの代わりにライコウがゼルナー達を待たせてしまった事を詫びて、三人は洞窟の中へと案内された。


 ――


 洞窟は、明らかに人工的に造られたものであった。

 道路が整備され、壁や天井は一面に特殊な黒光りした金属でコーティングされており、至る所に何かを計測するセンサーまでついていた。 道路の両端には2、3メートルくらいの幅の移動式の青色に光る床が設置されており、徒歩で行くものはその移動する床を使って、およそ10キロ以上先にある奥へと進むのであった。


 ――移動する床に乗っている間、エンドルはヒツジに次々と質問を重ねていた。


 「――ねぇ、ヒツジん。 マザーってさ、どんな姿をしているのん?」


 「……うーん。 どんなって……。 まあ、なんか見た事の無い生き物の姿をしているなぁ。 遥か昔に海の中にいた生き物だって聞いているけど……データベースには記録されてない生き物だね」


 エンドルの質問にヒツジが答えると、エンドルはすぐにまた次の質問をヒツジにぶつける――


 「――それで、アンタとはどんな関係があるのん?」


 「……『関係』ったって、別に深い関わりがある訳じゃないさ。 まあ、これはマザーから『言っちゃいけないって』言われてるからボクも口には出せないけど、ボクはマザーに造られた器械じゃないからね」


 『言っちゃいけない』と言われているのに、あっさり口を滑らせるヒツジ……。 エンドルはヒツジの言葉を聞いて、飛び上がって驚いた。


 「えぇぇ!? じゃ、アンタって、もしかして……」


 エンドルがヒツジに次々と質問を浴びせている中、不機嫌そうにエンドルを横目で見ていたライコウが、たまりかねてエンドルの肩をつかんだ。


 「――おい! お主、もういい加減にせんか! ヒツジの過去をほじくり返して何になるというんじゃ。 大体、お主は『ゼルナー』になるんじゃろ? ゼルナーになれば、(おの)ずとマザーに会う事が出来る。 お主が今気にする事ではないじゃろう」


 そして、ライコウはヒツジの顔に目を()った。 ヒツジの瞳はうっすらと灰色がかった瞳へと変わっていた。


 「……ほれ、ヒツジが疲れているではないか。 お主がくだらん事を聞き続けたせいで……」


 ライコウはそう言うと、ヒツジを優しく抱き上げた。 ヒツジはやはり疲れていたようで、うっすらとピンク色の瞳へと変化しながら、そのままライコウに抱かれて眠ってしまった……。


 「うぅ……。 私とした事が、ついん……。 ごめんなさいん……」


 エンドルがヒツジの様子を見て、悄然(しょうぜん)としながら謝ると、ライコウは微笑(ほほえ)みながらエンドルを慰めた。


 「ははっ、お主は本当に素直な奴じゃのぅ。 まあ、ヒツジの様子を見て、不思議に思わん奴はおらんじゃて、お主が好奇心から色々聞きたがるのは仕方ない事じゃ。 見たところ、お主はヒツジとマザーの関係を利用しようと企んでいる訳でもなさそうだしの。

じゃが、マザーとの関係を聞くくらいならまだしも、いくら好奇心からとは言え、器械の過去をほじくり返すのは感心出来ないのぅ。 お主がヒツジの過去を聞いたところでヒツジの過去が変わる訳でもないし、お主がヒツジの過去を変えられる訳でもないじゃろ」


 「――じゃ、アンタはヒツジの過去を知って――?」 


 「――知らん」


 エンドルがライコウの言葉を遮って聞こうとすると、ライコウはエンドルの言葉を待たずに否定した。


 ライコウの返事にエンドルは「――はぁん?」と言って、驚いた様子を見せるが、ライコウは泰然(たいぜん)としてその理由を語りだした。


 「ワシがヒツジの過去を知ったところで、ワシのヒツジに対する思いは変わらないから知る必要もないんじゃ。

 ――ワシは製造された時からヒツジと共にいた。 ヒツジはワシにとって家族同然じゃ。 (おのれ)がいなかった時の家族の過去を知ったところで、今そこにいる家族に対する愛情が変わるわけでもあるまい――」


 すると、ライコウの次の言葉にエンドルの瞳は瞠若(どうじゃく)した。


 「――お主だって、相棒の過去の所有者など知りたくもないし、知っても意味無いと思っているはずじゃろ?

 それは、相棒と共にいなかった時の過去なんかより、相棒と共に過ごした時間だけが、お主にとって一番大切じゃから……」


 ここまで話すとライコウは少し間を置いた。 そして、再び話を始めた時、ライコウはいつもと違い、粛然(しゅくぜん)とした様子であった。


 「……知っても幸せになれない事は知らなくても良いし、知る必要もない。 コイツが今幸せであれば、それで良い」


 ライコウはヒツジの過去を知っていた。 ヒツジの身に降りかかった悲しい事件の断片を……。 ヒツジはライコウに自分の過去を語らない。 ライコウもまたヒツジの過去を聞くことは無い。


 ライコウはヒツジが今幸せであれば、それで良いと思っている。 そして、この先、ヒツジにはずっと幸せであって欲しいと願っている。

 ヒツジが過去を思い出す事で不幸になるのであれば、そんな過去などヒツジに思い出して欲しくもない。 ヒツジのメモリから永久に消去される事を願っているのである。


 「……確かにそうねん。 ゴメンねん、変な事聞いちゃって……」


 「――うむ。 そもそも、ヒツジが過去の事を触れて欲しい、知ってほしいのであれば、本人がもうとっくに話しておる。 本人の口から話さない限りは、ワシらが知る必要はない。

 じゃが、器械によっては話したくても話せない者もおる。 その場合、話をさせてやった方が本人のココロが軽くなる場合もあるかもしれん」


 すると、ライコウは一転して悪戯(いたずら)っぽくエンドルに笑顔を見せ言葉を続けた。


 「――じゃが、その場合でもお主のような下品な聞き方ではダメだのぅ。 本人が話したいと思うような聞き方をせにゃ。 メシにありつこうとするショル・アボルのようながっついた聞き方では、本人も話したがらんじゃろ」


 そう言うと、ライコウは「ガハハ」と笑った。 ヒツジはその笑い声でライコウの胸の中でユサユサと揺れた。

 

 「――全く、アンタ結構良い事言うと思ったら、すぐ器械(ヒト)茶化(ちゃか)すのねん。 やっぱ、アンタの事は嫌いだわん」


 エンドルがそう言ってふくれっ面を見せると、ライコウは「――ガハハ! 嫌いでも良いわ。 ワシはお主の事は嫌いではないから、お主等に協力するぞ!」と言って、バンバンとエンドルの肩を叩いた。

 

 エンドルは迷惑そうにライコウの顔を見ると、叩かれた肩をパッパと手で払った。 そして、ライコウに顔を見られないよう、(うつむ)きながら微笑(ほほえ)んだ。


 ――


 洞窟の最奥へ進むと、巨大な地底湖が広がっていた。 幅三キロはある広大な地底湖である。

 奥にはゼルナーが二体立っており、地底湖と地上の(みぎわ)には交番のような赤いパトランプのついた小屋が建っていた。


 「ここでお待ちになっていれば、底からエレベータが浮上してきますのでナ・リディリに入れます」


 ゼルナーの一人が三人に告げた。


 ヒツジはまだライコウの胸に抱かれてスヤスヤと眠っている――。 しばらくすると、底から地響きが聞こえてきて、大きな水しぶきを上げながら小さなゴンドラが姿を現した。

 

 「――さっ、さっ、どうぞお入りください!」


 ゴンドラの入り口が開くと二人のゼルナーが入り口の前に立ち、中へと案内した。


 ――ゴンドラ内は整然としていた。 タイル張りの床の真ん中に置いてある小さな四角いテーブルが一台置いてあり、その上にはネジやクギといった『お菓子』が入った小箱が置いてあった。 恐らく『これでも食べて到着するのを待て』という事だろう……。

 エンドルの話では、軍隊がナ・リディリに入る場合は乗り物が入れるほどの巨大なコンテナが稼働(かどう)するのだという。 地底湖の底は全面機械式の出入り口になっているそうで、ナ・リディリに入る者達の規模によって、使用するゴンドラを変えているのだそうだ。

 

 ライコウはヒツジを抱いたままイスに座り、テーブルの上のお菓子を食べながら、エンドルの話に耳を(かたむ)けていた。 すると、小部屋内に『ピロピロピロ』と軽快なチャイムが鳴り響いた。


 「――さぁ、到着したわん」


 エンドルがそう言って、ゴンドラの出入り口を開けた。

 すると、華やかな小部屋の様子とは打って変わって、無機質な駐車場のような場所に出た。


 ――


 まるで地下駐車場のようなコンクリートに囲まれた巨大な広場に出た三人。

 エンドルはもちろんこの場所を良く知っていたようで、迷わず滑走路のような長い道路をズカズカと奥へと進んで行った。


 「――ちょっと、何してんのよん! 早く来てん!」


 エンドルの呼びかけに、ライコウが周りを見た。 周囲にはピカピカに磨かれた戦車やトラック、()びついた戦闘機などが駐車されており、しかも、その数は数百台にも及ぶ膨大(ぼうだい)な数であった。 そんな数の乗り物が駐車できるほど、この場所は広大であり、奥まで続く道路も十数キロにも及ぶ長い道路であった。


 「まったく……『鉄の樹海』から入り口まで長いこと歩いたのに……剣呑(けんのん)じゃのぅ」


 ライコウがボヤくと、ヒツジの目が覚めたようで、緑色の光を瞳に称えながら「……ふぁ……着いたみたいだね」と言って、ライコウの胸から降りた。

 そして、ライコウと手を(つな)ぎ、二人はエンドルについて行った。


 ――この駐車場のような巨大な構造物の奥に進むと、コンクリートのような床からタイル張りの床へと変わった。 二人分くらいの大きさのガラスのような透明なタイルが、美しく整然と並べられている。 この場所は、都市のかなり高い位置にあったようだ――透明のタイルから下を(のぞ)くと、地上には平面状の黒い巨大な機械が赤色の光をゆっくりと点滅させていた。

 そして、三人がそのまま透明なタイルを先に進むと、ついに床の端にたどり着いた。 ところが、床の端は断崖絶壁(だんがいぜっぺき)の行き止まりであり、下を(なが)める三人の目にキラキラした白い街並みが目に映った。


 「キレイな街並みじゃが……なんだか、少し寒いのぅ……」


 奥へと吹き込む風がライコウ達の体を吹き付けている。 ライコウがデバイスを起動させて気温を調べると『マイナス13度』と表示されており、街が白く光っているのも、街全体が雪で覆われているせいかと思わせた。

 

 「――うへぇ! どうりで寒いはずじゃ!」


 器械(きかい)は人間と同じく、五感が備わっている。 暑さや寒さも人間と同じく感じる事が出来るのだが、そもそも五感とは人体の異常や変化を知らせるための信号のようなものなので、器械の五感は人間に比べると鈍い。 暑さも器械内部の中央処理装置がオーバーヒートするくらいの温度でなければ感じる事はなく、寒さも機械内部の燃料が凍結するほどの寒さでなければ感じる事はないのである。

 したがって、さすがにマイナス0度以下となると、体のどこかに入り込んだ水分によって燃料が凍結する恐れがあるので、少し寒さを感じるようになる。 逆に、この気温で凍えるほどの寒さを感じる事になれば、燃料に水分が混入して凍結しているという危険信号であり、早急な処置が必要になる。


 「――雪なんて見るのは初めてじゃのぅ! のぅ、ヒツジよ!」


 ライコウは目を輝かせながら、ヒツジを見るとヒツジは目を白く光らせてライコウに言った。


 「ライコウ、これは雪じゃなくて『凍結防止剤』だよ」


 「えっ、そうなのか?」


 ライコウが目を丸くしてキョトンとしていると、エンドルがライコウを小馬鹿にしたように言った。


 「馬鹿ねん、アンタ。 氷やら雪が器械にどれだけ悪影響を及ぼすか知ってるでしょん。 この凍結防止剤はね、ナ・リディリが研究に研究を重ねて作った凍結防止剤よん。 ……まあ、その研究費やら技術は全てマザーによって提供されたものだけど……そんな事はどうでも良くて、すごい技術なんだからん!」


 ライコウがデバイスで雪化粧(ゆきげしょう)を調べると、確かにそれは『雪』ではなく、塩化カルシウム等が含まれている薬剤であった。

 ライコウが薬剤で(おお)われた円錐状(えんすいじょう)の建物を眺めていると、ヒツジがエンドルの言葉を補うように言った。


 「これは、普通の凍結防止剤に微量なマナスを結合させたものさ。 だから、マイナス50度以下の気温でも凍結防止の効果がある。 しかも、本来、凍結防止剤は塩分が含まれているから器械にとっては良くない薬剤だけど、マナスによって無害な薬剤にもなるんだ」


 ライコウはヒツジの言葉を聞いて、腕を組んで感心したように(うなず)いた。


 「――ほう、ほう。 こんなモノにもマナスが利用されておるとはのぅ。 ワシ等やショル・アボルだけに利用されている訳では無いんじゃのう……」


 ――

 

 さて、度々出て来るこのマナスというモノは一体何なのであろうか? ヒツジの説明を聞くと、マナスというものは『真素』と呼ばれる物質であるとの事だ。 ライコウのデバイスでも時々表示される『真素』という言葉――これが、マナスを意味する言葉であった。

 マナスは器械やショル・アボルの稼働を維持する為の重要なエネルギーであり、体内に存在するマナスの量が器械やショル・アボルの出力に大きく影響を与えるのだ。


 マナスは素粒子(そりゅうし)よりも極小の物質であり、この星の大気中に空気と同じく普遍的に存在している。 マナスの特質すべき点は、他のあらゆる物質と結合し、全く異なる別の性質に変えてしまったり、物質の特性を強化することが出来る点である。 もちろん、大気中に(ただよ)っているマナスはそのままでは他の物質と結合する事は無い。 マナスを結合させるための橋渡し(ブリッジ)となる強力な別の物質が必要である。

 その物質は宇宙に漂っている『暗黒子(あんこくし)』と呼ばれる素粒子であり、その正体は不明である。 だが、マナスと他の物質を結合させる機能を持っており、この暗黒子によってマナスは他のあらゆる物質と結合させる事が出来るのだ。

 とは言え、暗黒子などという物質がこの星のどこにあるのか? まさか、宇宙まで行って採取する訳には行かないし、採取するほどの科学技術も無い。


 ではどうやって、この暗黒子を利用するのか?


 それは、この星にかつて存在していた『メカシェファ(魔女)』と呼ばれた者の核を利用するのだ。 いや、利用していたという方が正しい――と言うのは、すでにメカシェファは絶滅してしまっているからだ。

 マナスはメカシェファの核に含まれる暗黒子によって、他の物質と結合し、あらゆる物質を強化する事がする事が出来た。 だが、メカシェファはすでに絶滅しており、暗黒子は貴重な物質となっていた。 したがって、マナスと結合させる物質はマザーによってあらかじめ決められており、不要な物質をマナスと結合させる事は出来ないのである。


 マザーが地底都市『ナ・リディリ』を創ったとき、凍結による器械への影響が大きな問題となった。 そこで、マザーは従来の凍結防止剤を構成する物質に極微量のマナスを結合させて、器械に影響の無い物質に変化させ、かつ、凍結防止効果を強化した薬剤を開発した。 エンドルは『ナ・リディリ』が独自に開発したと誤解しているが、実はマザーによって開発され、それをナ・リディリに普及させただけに過ぎないのである。

 

 そして、そのマナスは前述したとおり、器械にも利用されている。 器械は『アニマ』という暗黒子を増幅させる装置によって、大量のマナスをアニマと結合させる事が出来る。 器械はアニマに結合したマナスによって、意思を持ち、感情を持つことが出来た。

 つまり、アニマはマナスを暗黒子と結合させるための(うつわ)なのであり、器械とはその()()()()()()()()であるという事である。


 アニマが器械を器械たらしめる装置である所以(ゆえん)はそこにあった。


 また、多くのマナスが暗黒子と結合するほど、器械の出力を大幅に向上させる事が出来る。さらには、体内の物質がマナスによって強化され、より強力な器械となれるのである。

 ゼルナーは一般の器械と比較してアニマが大きく、暗黒子が多いので、より多くのマナスを体内に保持する事が出来るのである。


 このように、マナスはこの星に生きる者達にとっては夢のような物質であるのだが、当然、その副作用もある。

 暗黒子によって物質と結合したマナスは、暗黒子の『結合させる力』が弱まれば、分離を始める。 暗黒子は凄まじいエネルギーによってマナスを結合させているので、マナスが分離する時もまた凄まじいエネルギーを放出するのだ。


 ――ライコウがハーブリムの道路でリクイと出会った時、リクイから「爆発が心配だ」と揶揄(からか)われた事を覚えているだろう。 リクイにしてみれば面白くもない冗談(じょうだん)を言ったつもりであったが、実際、器械の体内にあるアニマが破壊されると、結合していたマナスが分離し、爆発を起こすのである。

 ゼルナーではない一般の器械では、爆発の威力は小型の爆弾が炸裂するくらいの威力である。 だが、そんな威力でも建物は崩壊し、半径数メートルにいる器械は全て破壊される。 しかも、破壊された器械も爆発を起こして連鎖(れんさ)爆発も起きるので、器械達に最も恐れられているのだ。


 ナ・リディリで利用されている『凍結防止剤』も微量なマナスが含まれているので、理論上は使い方を誤るとマナスが分離して爆発を起こす。 しかし、含まれているマナスが極々微量なものなので、余程強い衝撃を加えなければ爆発を起こす事はない。

 もちろん、そんな極々微量なマナスを物質と結合させる技術を開発したのもマザーであった。


 ――


 ライコウとヒツジ、そしてエンドルはまだガラス張りのタイルの上に立ち、街の様子を眺めていた。


 「――それで、これはどうやって下に降りるんじゃ……」


 ライコウが街を見ながら呟くと、いきなり床がゆっくりと降下しだした。


 「――おゎゎ、何じゃこの床は!?」


 三人が立っている透明な床が一斉に落ちて行く――。

 徐々に大きくなっていく地上の黒い機械を見詰めながら、ライコウは思わずヒツジの手を握りしめた。

 ライコウが少し慌てたように見えたので、ヒツジは緑色の瞳をゆっくりと点滅させながらライコウを落ち着かせようとこの装置が何なのか説明をした。


 「――これは反磁性(はんじせい)を持つ床なんだ。 この地上には巨大な磁石が埋め込まれていて、磁力を制御する事で、この床を上げたり下げたりする事が出来るんだよ」


 二人とは少し離れたところで(しゃ)に構えていたエンドルは「うん、うん、そうよん……」などとヒツジの説明に目を閉じて相槌(あいづち)を打っていたが、内心ではライコウに自分の知識をひけらかしたかったと見えて、ヒツジに先を越されてしまったことが少し悔しかったようだ。


 しばらくすると透明な床が地上の巨大な黒い機械の表面に到着した。 黒い機械はちょうど透明の床がピッタリ収まるように表面が(へこ)んでおり、透明の床はその凹みに寸分の狂いもなく収まった。 すると、床一面から赤い光が湧き出て来て、機械全体から大きな警笛のようなブザーが鳴った。 赤い光が三人に照射されている間、床から何だか心地良い振動が発生して体中に響いた。


 「――今、消磁(しょうじ)処理を行っているから、少しこのまま待ってん」


 エンドルが「ふふん――」と顔を上げて、ライコウに言った。 ヒツジよりも先にライコウにアドバイスした事が内心嬉しかったようだ……。

 

 しばらくすると、黒い機械から発する光が緑色に変わり、今度は発車のベルのようなチャイムが鳴り響いた。

 

 「終わったわん! これで、街を自由に移動できるわん!」


 エンドルはそう言うと、建物の明かりがボンヤリと照らされている奥へと駆けだした。 エンドルが駆け出す姿を後ろから見ていた二人は、特にエンドルを追う様子もなくゆっくり歩き出す――。

 

 「……のう、ヒツジ。 あの駐車場みたいな高い場所まで移動する為に、何故わざわざこんな大それた装置を使うんじゃ? 建物の壁に戦車でも運べるどデカい昇降機でも設置して、それで登り降りすればよかろうに……」


 ライコウが素朴な疑問をヒツジにぶつける。


 「さぁ……。 何か面白い技術があれば、それを使いたがるのは人間の()()だと聞いているし、器械もそうなんじゃないの?」


 ヒツジも首をかしげて、良くわからない様子であった。


 「うーん。 そんなもんかのぅ……」


 ライコウもヒツジの答えにイマイチ納得がいかないようだった。 すると、ヒツジは目を黄色く点滅させたかと思うと、思い出したようにライコウの顔を見て叫ぶ――。


 「――あっ! でも、消磁処理を速やかに行える技術は『フル』との戦闘で役立っているんだよ!」


 フルはハーブリムから遥か東にある『デモニウム・グラキエス』と呼ばれる氷に包まれた山岳地帯を縄張りとしているマルアハである。 デモニウム・グラキエスでは強い磁場が発生しており、磁力によってレーザーや弾丸が使用できず、周囲の磁場を無効化できるこの技術はフルとの闘いでは非常に有効との事であった。 とはいえ、周囲の磁場を無効にしたところで、いまだかつて一度もフルとの戦闘で勝利した事は無く、フルには傷一つ付けることもできていないのが現状であった。


 ――ライコウとヒツジがそんな雑談をしながらゆっくり歩いていると、エンドルが怒りの様相を呈しながら走って戻ってきた。


 「――アンタ達! 何のんびりしてんのよん! 私の仲間をこれから紹介してあげるっていうのにん!」


 エンドルはそう言うと、また踵を返して今度はスタスタと早歩きをしだした……。


 「ほら、早く来てん! 仲間はこの先にある酒場で待っているわん」


 エンドルの様子に呆気に取られていたライコウとヒツジは、互いに顔を見合わせて肩を(すく)めた……。


 ――


 ヒツジの言う通り、都市は建物に塗布されている凍結防止剤が、街灯の光を反射して輝いて見えるだけであった。

 建物自体は黒い『ポリカーボネート』のような素材で造られており、無機質な外観で美しいとはいいがたい。 道路も建物と同じような素材で舗装されており、一見、上空から眺めると光り輝く街のように見えるのだが、地上を歩けば上空だけが光輝いているばっかりで、常に影のある薄暗い都市であった。

 また、この都市には民家が一軒も無かった。 その代わり、小さな宿屋や、学校のような兵舎、器械の影も見当たらない寂れた訓練所などが点々としており、道路を往来する器械も市民は一人もおらず、殆どがゼルナーか一般兵であった。

 だが、それも、この都市が『ダカツの霧沼』へと行くための拠点としてのみ利用されていると聞けば合点がいった。


 ……ところが、肝心の都市にいる兵士達はどうも気の抜けた顔ばかりしていた。 これから、あの恐るべきマルアハであるアラトロンと対峙(たいじ)しようという緊張感のある雰囲気には全く見えず、ステンレス製の酒缶を片手にフラフラと道路を渡っていたり、凍結防止剤に塗れて白くなって転がっていたり――挙句の果ては、暴走した戦車が建物に突っ込んでそのままの状態になっていたりと、まるでスラム街のような(そら)恐ろしい街並みであった。


 ――


 ライコウ達三人は、大通りから一本外れた薄暗い路地を歩いていた。 すると、突き当りに派手なネオンに囲まれた酒場が見えてきた。

 何も言わずにエンドルが、そのまま酒場のドアを開けて入って行く――ライコウとヒツジもエンドルに従って酒場の中へと入って行った。

 店内は意外と広く、カウンターでは数人の器械が大声で楽しそうに話をしていた。 彼らは全員一般兵のようで、鎖帷子(くさりかたびら)のような軽装の鎧や、ライコウが着ているような重装の鎧を装備していた。 店内を一見すると、カウンターだけでなくボックス席も同じような格好をした兵士しかおらず、この店には全員暑苦しい連中しかいないのではないかと思う程であった。

 

 エンドルが店内へ入ると、皆エンドルとなじみのある者達のようで「おぅ! 久しぶりだなぁ!」等と言いながらフラフラと近づいて来る器械や、モクモクと蒸気が立ち上っている怪しい飲み物をしきりに(すす)めて来る器械がエンドルの周りを取り囲んだ。

 すると、一人の鎖帷子を着た器械がライコウとヒツジに気が付いて、(かぶと)面頬(めんほお)を上げてライコウの顔に自身の顔を近づけて品定めをするようにジロジロと見た。

 

 「オメェ、見ネェ顔だなぁ……」

 

 ライコウの前に立ちふさがり()めるような視線で(つぶや)いた鎖帷子(くさりかたびら)に、ライコウは少し腹が立った。


 「なんじゃ、貴様は? 目障りじゃのぅ……」


 ライコウはそう言うと、いきなり鎖帷子の(ほお)を『ペチン』とはたいた。


 「――! なんだ、テメェは!」


 ライコウの暴挙に激昂(げきこう)した鎖帷子が叫ぶと、エンドルの周りを取り囲んでいた器械達も騒ぎを聞きつけて続々とライコウの前に集まってきた。


 「おぅ、おぅ――! ヘンチクリンな()()()()連れて、新参者があんまり俺たちをナメてんじゃねぇぞ!」


 周りを取り囲んできた兵士たちの中からヒツジを馬鹿にした声が聞こえてきた。

 ライコウにしてみれば、ちょっと降りかかった火の粉を払っただけで、それ以上の事はするつもりはなかった。 ところが、ヒツジを馬鹿にする言葉を吐かれた事でライコウの表情が一変した。

 ライコウは、初めに啖呵(たんか)を切って来た鎖帷子の(あご)を右手で(つか)み、そのまま上へ持ち上げた。 兵士は首のケーブルをライコウに塞がれたようで、苦しそうに宙に浮いた足をバタつかせた。


 「ぐっべべ――エンドル! タスケテ!」


 その兵士はエンドルと知り合いだったようで、苦しそうにエンドルに助けを求めた。

 周りの兵士達は皆、顔色が変わり、中には背中の(さや)に収まっていた剣を抜いて、ライコウに向けて構える者もいた。

 

 「なんじゃ、お前ら!」


 ライコウはそう言うと、いきなり顎を掴んでいた兵士をそのまま片手一本でカウンターの方へ投げつけた! 兵士は『ビュン――』という風切り音と共に、ものすごい勢いで後ろにいた兵士達の体を(かす)めて金属製のカウンターへ激突すると、カウンターは『ベコンッ』という(すさ)まじい音を立て、()()()に曲がってしまった……。


 「こら、こら、ライコウ――ダメだって!」


 ヒツジが赤色の目をチカチカさせながら、慌ててライコウを止める――。 周りの兵士達はライコウの出力に恐れをなして、皆一斉に静まり返ってしまった。


 「なに、大丈夫じゃ。 アニマは傷つけておらんから、ちょっと修理すればあ奴は元通りまた酒を飲めるじゃろ」


 ライコウは、自分が投げ飛ばした兵士を見ながら平然と言い放った。


 「――ちょっと! いきなりアンタ何してんのよん!」


 ライコウを囲む兵士達をかき分けて、エンドルがライコウの前へ出てきた。


 「何してるって……。 お主の『仲間』がヒツジを馬鹿にしおったのでお仕置きしただけじゃ!」


 ライコウはヒツジを馬鹿にした言葉を吐かれたので怒ったのだとエンドルに主張したが、ヒツジを馬鹿にしたのは投げ飛ばされた鎖帷子(くさりかたびら)ではなく、後にいた面長(おもなが)の器械である。

 その面長の器械は、仲間の鎖帷子が豪快に投げ飛ばされた瞬間に、神速の速さで兵士たちの後ろへと逃げ、ライコウが「ヒツジを馬鹿にされた」とエンドルに主張していた時には、まるで騒ぎを聞きつけて今来たかのような顔をして兵士達の間からバナナのような顔を(のぞ)かせていた。

 

 「――何? アンタ達、このゼルナーにそんな失礼な事言ったの?」


 エンドルがライコウの主張を確認しようと、周りの兵士に聞く――兵士達はまさかライコウがゼルナーだとは知らなかったようで、思わず身を(すく)めて一斉にブンブンと首を横に振った。 そして、カウンターに埋まっている兵士を指さして「――アイツが言ったんです」と(のたま)った。


 その様子を見たライコウは「はぁ……」と一つ溜息をついて、肩を竦めた。 


 「……まったく。 まぁ……もうええわい。 それより、エンドル――お主の仲間は残念ながらノビてしまったぞい」


 ライコウがそう言って、カウンターに埋まっている鎖帷子を一瞥(いちべつ)すると、エンドルは「――何言ってるのよん。 アイツはただの飲み仲間で、本当の仲間は2階にいるわん」と言って、鎖帷子の(そば)へと近づいて行った。 ライコウはてっきりエンドルが彼を助けようとして近づいたものかと思ったが、エンドルは倒れている鎖帷子の腹に「ちっ、ジャマよん!」とケリを入れ、ひしゃげたカウンターの後ろでしゃがみ込んでいた店主に声を掛けて、何やらお金のようなモノを渡していた。


 「――2階は宿屋になっているわん。 防音壁で1階の騒音が聞こえないから、心配しないでねん」


 エンドルはそう言うと、奥の階段へと足を向けた。 ライコウがエンドルについて行こうとすると、周りにいた兵士達はササっと横へずれ、ライコウご一行の為に道を空けた。


 ――


 『ゴン、ゴン……』


 エンドルが2階の一番奥の部屋の前に立ち、独房(どくぼう)のような鉄扉をノックした。


 『……ゴン、ゴン』


 すると、向こうからもノックの音が聞こえて来た。


 「あー、もう。 うざったいわねん!」


 エンドルは癇癪(かんしゃく)を起して、鉄の扉を豪快に蹴り開けた。


 すると、勢いよく開いた鉄の扉が部屋の中にいた器械に当たったようで、開いた扉の目の前にはドラム缶のような姿をした器械が手足をバタつかせながら倒れていた……。


 「おい、おい……アロン。 ダメだって……またエンドルをからかっちゃ」


 部屋の奥から穏やか雰囲気をした男の声が聞こえて来た。

 器械は手足をバタつかせたと思ったら、すぐにワイヤー状のアームのような手を伸ばして、床を押さえながら自力でピョンと起き上がった。


 「……うん。 だって、エンドル、すぐ怒るから面白いんだもん」


 悪びれもなく、奥の声に向かって答えるドラム缶の器械。 顔が暗闇で覆われており、容姿は分からなかったが、その声は少年のようであり、挙動から察するにライコウよりも幼く、ヒツジよりも年上のように思えた。

 エンドルは(ほお)(ふく)らませながらプンスカと再び少年を突き飛ばし、奥へと進んだ。 すると、エンドルに突き飛ばされて再びゴロンと転がった少年の手をライコウが掴み、手を引っ張って起き上がらせた。

 少年はライコウに「ありがとう!」と言いながら、ライコウの少し後ろで佇んでいたヒツジを見て、元気よく挨拶をした。


 「初めまして!」


 ヒツジは少年を見て、何故か少し恥ずかし気に「う……うん。 初めまして……」と言いながら、目に薄くピンクがかった光を点滅させた。

 

 奥の寝室まで続く鉄扉を開けようとしているエンドルの背後から、ライコウが苦言を吐いた。


 「まったく、お主は乱暴者じゃのぅ……」


 「はぁ? 何よん! アンタだって、さっき器械(ヒト)を投げ飛ばしてたくせに、よく言うわねん!」


 エンドルはライコウの言葉にいちいち反応しながら、扉を開けた。


 ――ライコウとヒツジが部屋に入った。 部屋は思った以上に広く、豪華であった。

 真っ白い壁紙が貼られてあり、天井にはお洒落なシャンデリアのような照明がぶら下がっているという、とてもあの雑然とした酒場の2階だとは思えないような部屋であった。 そして、部屋の奥には三基のカプセルのような機械が()え付けられていた。 恐らくそれが宿泊者のベッドだろう。

 ベッドの手前には小さな真鍮(しんちゅう)製のテーブルが置いてあった。 テーブルは天井の中央に煌々(こうこう)とついている明かりに反射して輝いている。

 テーブルに近くには、テーブルと同じ真鍮製のイスが幾つか置いてあり――ベッドの前のイスになんとも奇妙な姿の男性型器械が座っていた……。


 「――やぁ、やぁ、貴方がライコウ氏ですね! 初めまして、私『ソルテス』と申します」


 ソルテスと名乗る男はそう言うと、素早く立ち上がり、呆気にとられるライコウとヒツジに握手をして、イスへ座るように(うなが)した。 ところが、イスは四脚しかなく、エンドルとドラム缶の少年が座ると一脚足りない……。 そこで、ライコウの膝の上にヒツジがチョコンと座る事で落ち着いた。 すると、ソルテスはエンドルとドラム缶の少年もイスに座る様に促した。


 イスに座った五名は小さな丸テーブルを囲い、お互いの自己紹介を始めた――。


 ソルテスはまず、ドラム缶の少年に自己紹介をするように促した。 少年は背もたれの無い丸椅子に座っており、恐らくこの椅子は少年の為に用意した特注のイスのように思われた。

少年の名は『アロンθ(シータ)』と言った。 ソルテスとエンドルからは『アロン』と言われているとの事で、ライコウとヒツジも彼の名をアロンと呼ぶことにした。


 アロンは首から股の辺りまで、青銅(せいどう)色の図太いドラム缶を身に(まと)っていた。

 ドラム缶の上底にぴょこんと小さい頭が飛び出ており、頭はドラム缶と同色である青銅の兜を被っていた。 兜には一本の角状のトサカが生えており、額のあたりの眉庇(まびさし)と呼ばれる部分には格子状(こうしじょう)の金色のシールドが装着されていた。 顔は暗闇に(おお)われて素顔が分からず、目玉のような二つの赤いライトがピコピコと点滅していた。 一見すると、顔の無い『のっぺらぼう』のように見えるが、実は黒い面頬(めんほお)を装着しているだけであり、内側から光る瞳のような赤いライトはセンサーであるので、兜を脱ぐとちゃんと黒髪の少年の素顔を見る事が出来た。

 ドラム缶は両側の肩辺りがくりぬかれており、そこからワイヤーのような腕が伸びている。 腕は自在に伸縮可能であるようだ。 前腕には小さいドラム缶を模した腕輪をしている。 ソルテスの話では、両手はノズル、人間型の手、機関銃に換装可能であるとの事であった。

 足にもレガースの代わりに小さいドラム缶を身に着けており、この小さいドラム缶からぴょこんと足首が伸びて、板金(ばんきん)製のエンジニアブーツに(つな)がっていた。


 このような奇妙な外見であるアロンであったが、隣に座るソルテスもまた輪をかけて奇妙な外見であった。


 ソルテスの髪色はライコウのように金色であるが、髪型が奇妙であった。

 頭の両サイドは髪が無く、真ん中にだけトサカのように長い髪を突っ立てており、頭にまるで刃物が生えているような感じであった。 本人の説明ではこの髪型は『モヒカン』と言われており、人間達の間では()()()()()()()()だったそうだが、デバイスにはそんな情報は一つも出てこなかった。

 目は顕微鏡(けんびきょう)のようであり、レンズのような瞳がキラキラと輝いている。 (ほお)から(ひたい)にかけては炎のようなデザインの赤と黒の文様を刻んでおり、これは、かつて人間達の間で流行した『タトゥー』と呼ばれた文様を模したものらしい……。 口元はエンドルと同じく黒いカーボンのようなマスクをつけており、恐らくこのマスクはナ・リディリの建物と同じ素材で造られているようであった。

 そして、ソルテスは奇抜なジャケットを着ていた。 肩当てはトゲトゲがついており、天井の照明に照らされて鋭利な光を帯びていた。 ジャケットは恐らく極細のケーブルを編み込んでいると思われ、時々ボンヤリと赤いライトが点滅していた。

 腰にはベルトの代わりなのか、図太いチェーンを巻いており、フェイクレザーのウェストバックをぶら下げていた。


 ――このように、見れば見るほど奇妙な格好をしている二人の器械――ライコウも始めは呆気にとられて、黙って二人の姿をしげしげと眺めていたが、ふと、ソルテスの首に見たことのあるゴーグルが掛かっていたことに気が付いた。


 「――おっ! それは、ウサギの――!」


 ライコウが言葉を出すと、ソルテスは顕微鏡のような目を光らせた。


 「お判りになりましたか! このゴーグルはウサギ氏が開発した試作品の機械で『アイン・ネシェル』という名前なんです! どうです、クールな名前でしょう!」


 その名前がクールかどうかは分からないが、少なくともこの溶接用のゴーグルのような機械には似つかわしくない名前であった……。


 「……ま、まあ、そうじゃな……。 それより、お主は何故ウサギの事を知っておるんじゃ?」


 ライコウはどう反応していいのか分からず適当に返事をしてお茶を濁し、ソルテスが何故、ハーブリムにいるウサギの事を知っているのか聞いた。

 すると、ソルテスがライコウの質問に答える前に、ソルテスの隣に座っていたアロンが口を差し挟んだ。


 「――そりゃ、知っているも何も――オイラと()()()()()はハーブリム出身だから」


 それを聞いて、ヒツジが目を白黒に点滅させる。


 「アンちゃん?」

 

 ヒツジがアロンに聞くと、エンドルがヒツジの声に重ねて「私もハーブリム出身なんだからん!」と横やりを入れた。

 アロンはエンドルの横やりを無視して、ヒツジの問いに「うん」と言って頷いて言葉を続けた。


 「――オイラ達はオイルを分けた兄弟なんだ!」


 ――器械は当然金属で出来ており、その金属を潤滑(じゅんかつ)させるにはオイルが必須(ひっす)である。 オイルは経口摂取するか、直接体内に注入する事で補給できる。 製造時に同じオイルを使用して製造された器械は兄弟(きょうだい)姉妹(しまい)とされており、役所で登録すれば社会的にも家族として認められる。 また、製造後に同じオイルを分け合う事も出来る。 その場合、人間社会でいう「(さかずき)()わす」という意味合いがあり、義兄弟として社会的には兄弟としては認められていない。


 ソルテスとアロンは製造時にオイルを共有した純粋な兄弟であった。


 「――へぇ! 製造過程でオイルを分ける事は普通はやらないんだけどなぁ! 珍しいなぁ、いいなぁ!」


 ヒツジはそう言って、少し興奮気味に黄色い光を点滅させながら、ライコウの手を握っていた。


 ――この二人の兄弟は、もともとゼルナーになろうと言う考えはなく、アラトロンにも興味が無かった。

 ハーブリムで『ダカツの霧沼』の先にある『理想郷』の話を聞いて、自分たちの目で理想郷があるかどうか確かめに行くために冒険の旅に出て、ナ・リディリへ辿り着いたのであった。

 ところが、ダカツの霧沼を越える事がゼルナーですら不可能であると知り、自分たちの力だけでは無理だと悟って仲間を募っていたところ、エンドルに出会ったとの事であった。

 エンドルは理想郷などには全く興味なく、ただ自分がゼルナーになりたい為にアラトロンを捕らえようと考えていただけなので、当初、二人はエンドルではなく、別の仲間を探そうとした。 ところが、その性格の()()()()()から一人も仲間が見つからなかったエンドルが、二人を仲間にしようと『ダカツの霧沼を越える為には、いずれにせよ、アラトロンは無視できない』などと言って必死に説得してきたので、仕方なく二人はエンドルの話に乗って、一緒に行動するようになったとの事であった。


 さて、ソルテスとアロンの自己紹介が終わり、いよいよ五人はダカツの霧沼へ侵入する為の作戦会議に入った。


 「……作戦といっても、取り()えず行ってみるしかないんじゃないん?」


 身も(ふた)も無い事をエンドルが言うと、ライコウは呆れた様子で言い返した。


 「あのなぁ、お主……。 少なくとも、ダカツの霧沼に行った事のある者の話や、実際にアラトロンと対峙した者の話を聞いて、情報収集してからでも遅くないじゃろう。

 デバイスではアラトロンの情報は殆ど出て来ん――。 聞いたところによると、アラトロンは()()()()()()()、あの沼地を縄張りにしておるのじゃろう。

 ワシ等は言ってしまえば、彼奴(きゃつ)のホームグラウンドに乗り込む事になるのじゃ――」


 ライコウがつらつらと説教をしていると、エンドルはイライラしたように話を(さえぎ)った。


 「そんな事わかってるわん! けど、別に戦う訳じゃないからいいじゃないん! だって、目的はアラトロンを説得して、味方にすることよん!」


 エンドルが反論すると、今度はソルテスがエンドルに意見する――


 「君の言っている事は分かるけど、今までどんなゼルナーでも説得に応じなかった訳だし、私達がアラトロンに会って説得したところで、すぐに『はい、判りました。 アナタ達に従います』なんて言うとは思えないよ。 しかも、沼地に侵入した者を問答無用(もんどうむよう)で襲ってきたという噂もあるし、ライコウ氏の言う通り、下準備もせずにいきなり乗り込むのは危険だよ……」


 ライコウはソルテスの言葉に「うん、うん」と満足そうに頷いた。 膝の上ではヒツジがグラスに入ったオイルのような飲み物をストローで啜っていた。


 「お主は奇抜な格好をしている割には、良く分かっているのぅ」

 

 ライコウの褒めているんだか、(けな)しているんだか分からない言葉に、ソルテスは「……ははっ」と後ろ手で頭を掻いた。


 エンドルはライコウとソルテスの意見を聞きながら、ムスッとした表情を浮かべていたが、突然、何かに気が付いた様子でテーブルに両手をついて、ライコウに顔に自分の顔を近づけた……。


 「あっ、そうだわん! そう言えば、街はずれにアラトロンと戦ったというゼルナーが隔離されているから、ソイツに詳しい事を聞けば良いんじゃないん!?」


 ライコウはエンドルの顔が近すぎて、思わず()()り気味になった。

 

 「――ゼルナー? アラトロンにやられて逃げ帰ってでも来たのか?」


 ライコウが近すぎるエンドルの顔を押さえながら引き気味に聞くと、エンドルはテーブルに両手をついたまま、言葉を捲し立てた。


 「そうなのよん。 ソイツは遥々『エクイテス』からやって来たゼルナーでねん……。 かなり強いって有名だったのよん。 ところが、仲間五人で意気揚々(いきようよう)と沼に行ったのはいいけど、結局戻って来たのはソイツだけ。 しかも、ソイツ……アニマに傷を負って逃げて来ちゃったもんだから、皆大騒ぎになっちゃってん……」


 ようやく、自分の席に戻ったエンドルは、マスクを外し、テーブルに置いてあった真鍮製のマグカップを手に取って口に運んだ。


 「アニマに傷じゃと? そりゃ、皆心配じゃのう……。 それで、ソイツは街はずれの何処におるんじゃ?」


 ライコウの質問にエンドルはうまそうにマグカップに入っていたオイルをゴクゴクと飲みながら答える――


 「――北側の出入口のすぐ(そば)にある『サナトリウム』よん。 サナトリウムと言っても、治療する気なんてさらさらなくて、単に壊れた器械を収容する強制隔離施設だけどねん。 んで、ソイツはマナスの量も一般の器械の三倍あったから『都市に重大な損害を及ぼす危険がある』という事で、地下深くに隔離されているわん。 大爆発でも起こしたら大変な事だもんねん……」


 エンドルの話を聞いて、ライコウは少し心配になった。


 「そんな厳重に隔離されておる奴じゃ、ただ『会いたい』と言っても、そう簡単に会わせてくれんじゃろ……」


 ライコウが懸念を口にすると、エンドルは「確かにそうだけど――」と言いながら、ライコウの膝の上に乗っているヒツジに目を遣った。 ヒツジはピンク色の目をぼんやりと光らせながらウトウトと眠っていた。


 「――ヒツジがサナトリウムの守衛に言えば、たぶん会わせてくれるでしょ? だって、ヒツジはマザーに指図出来る大物なんだからん!」


 エンドルの言葉を聞いたソルテスとアロンは目を丸くして立ち上がった。


 「「エエエェ――!?」」


 そして、驚嘆の声を上げた二人は、ヒツジの顔をマジマジと見つめた。


 「……ん? 何見てるの?」


 叫び声を聞いて目が覚めたヒツジは二人に何故注目されているのか分からずに、緑色の瞳をチカチカと点滅させながら、ライコウの顔を見上げたのであった……。

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