0-1 おかしな夢
すべての始まりは私の10才の誕生日
その少し前からおかしな夢を見るようになったの
気がつくと、見たことも聞いたことも、それどころかどんな物語でも読んだことのない場所にいるの
ものすごく広い道、馬車が5台も10台も並んで走れるんじゃないのと思えるくらいのが、私の目の前左右に真っすぐに延びていて
しかもその道が石とか土じゃなくて、タールを流し固めたように真っ黒なの
道の両端を朝早くから歩く人たちは、みんな道と同じように真っ黒な格好をしていて、しかもみんな同じ方向に歩いていくんだけど
まるで感情がなくなってしまったみたいに、みんな表情がなくうつろな目をしているの
道の中側は大小の形さまざまな鉄のかたまりが数え切れないくらい行き交っていて
道の両脇には石碑みたいにただ真四角の、でも石じゃないものでできたとんでもなく大きくて天まで届くような塔がいくつも並んでいる
で、私もその塔のひとつに入っていくんだけど
中にあるだだっ広い部屋のひとつで、何かよくわからない機械だか道具だかを操作して
デカい声の男の人にひたすら怒鳴られるの
やがてまだ部屋の中が明るいのにみんな帰り始めるので、私も一緒に塔の外に出るんだけど
なぜか外は夜になっているの
表情がない人たちとまた一緒に、来た道を反対方向に歩いていって
今度は四角で横に細長い大きな鉄のかたまりがいくつも連なった乗り物に詰め込まれて運ばれていくの
乗り物から降りてしばらく歩くと、四角いけど塔よりはずっと小さな建物に着いて
その建物はたくさんの小さな部屋に分かれているんだけど
どうやらそのひとつが私の家
私の他にだれもいない家の中で
帰る途中にお店で買った「黄色い“しーる”が貼られた小ぶりでぺったんこな容器に入った食べ物」を夕食として食べて
“げーむ”とかいうのをひたすらやって
疲れたら眠る
そんな日々がひたすら続く
もう頭がおかしくなりそうで途中で叫び声を上げて目が覚めるの
でも私の10才の誕生日のことだった
私は部屋の窓から外の景色をボーッと眺めていたの
芝生が広がり、形良く整えられた木々が並んでいた
小鳥のさえずりが聞こえ、木々のところには手入れする職人たちの様子が見えた
ここからは木々に隠れて見えないけれど
向こうには噴水や
さらに先には少し小ぶりだけど池があって
私はその脇のベンチに座って
お母さまにご本を読んで頂くのが好きだった
何も考えず、私はただただそれらの様子を眺めていた
そうしたら、突然ある言葉が頭の中に降ってきたの