1-16 正門にて②
なのでこの辺りで反転攻勢といきますか
でも攻勢に出るにしても、あからさまに攻撃的なのはダメ
口にする言葉は慎重に選ばなくっちゃね
「だったら僕から君に提案があるんだけれど」
私の反応がオリバーには意外だったみたい
「な、なんなんだよ」
「理由がどうであれ、僕が急に入学することになったために君がちい兄さまと同室になれなかったのは事実だ。だからお詫びとして、僕に君をちい兄さまに紹介させてほしい」
「えっ……」
さっきまでの敵対的な雰囲気が一気に消えた
「い、いいのか?」
「もちろん」
「本当に、本当に、僕をシモン先輩に紹介してくれるのか」
私は大きく頷いてみせた
もちろん親切心からだよ。決して「めちゃくちゃ身近でBLを見れるかも」と思ったからじゃないよ
まあ、0じゃないと言えばウソになるけど
1も100もたいして変わらないからいいよねっ
そうしたら彼、途端に顔がぱあっと輝いて
突然、私の両手を掴んで胸の前で握りしめてきたの
「ありがとう。お前、いいやつだなあ」
はい。態度が180度変わりました
すかさずここでトドメのひと言
「そうかい。誤解が解けて僕も嬉しいよ。帰ったらちい兄さまに言っておくから。そのうち学園で、紹介する日を相談しようか」
「うんうん。ありがとう。恩に着るよ」
オリバーは私の両手を包み込むように握りしめながら、嬉しそうに前後にブンブンと振った
よし、問題は解決。ここで別れて、後はさっさと帰りましょう
なのになんで彼、私の手を放さないの?
そればかりじゃなく、なんか私の顔をじっと見つめてうっとりしているみたい
「どうだろう、ジャン君」
もうオリバーの顔は、私の目と鼻の先にあった
息がかかるほどに、そして
もしかしたら心臓の鼓動が聞こえるかも……
って。ちょっと! このセリフとシチュエーション、今日3回目なんですけど
いけない、いけない。この後のセリフ、聞きたくない
「僕はシモン先輩とだけじゃなく、君のことももっと知りたい気分なんだけれど」
途端に私の中で特大の鼓動がひとつ
同時に首から上全体の体温が一気に3℃は跳ね上が……
もうイヤッ!
アルバート会長や
エドモンド副会長に
留学生のフェリックス
そしていまは同級生のオリバー
なんでなんでなんで、この私が『麗しの君たちへ2』のメインキャラクターたちに攻略されないといけないの!
私はモブ。ここではモブ
メインキャラクターとは絡まない
絡まず彼らの絡みをうっとりと眺めるだけ
BLは愛でるもの、決してするものじゃない、というのが私のモットー
「はは、また今度ね。じゃあ」
適当に誤魔化して、私はそそくさとその場を後にした