0-11 面接②
(来た)
私は立ち上がって理事長を迎え入れる態勢を取った
「お初にお目にかかります、理事長閣下。ジャン=ポール・ド・モンテルミエであります。この度は私のために時間を割いてくださり、誠にありがとうございます」
口上はカンペキ。立ち居振る舞いも問題ないはず
だったのだけど
入って来られた方を見て、私は思わず「あっ」と口に出しそうになってしまったのよね
だってそうでしょ。入って来られた方は
すごく素敵な女性だったのだから
(えっえっえっ。理事長が女性? そんな話、聞いていないんだけど)
頭の中は大混乱。心臓はバクバク。たとえどんな事態になっても慌ている素振りを見せないように事前に徹底的に練習してきたつもりだったけど、さすがにこれは想定外
(落ち着け、落ち着け私。こんなところでボロを出しているようじゃダメ。何のためにこれまで努力したのか思い出して)
必死に頑張ったかいあって。なんとか悟られずに済んだみたい
その方は優しく暖かな口調でこう言ったの
「たったひとりで来られたとのこと。歓迎しますわ。私は現侯爵夫人のイザベル。お義父さまはお仕事がまだお済みにならないので少しばかり遅れますの。それまでの間、しばらく私とお話しいたしませんか」
ああびっくりした。そうだよね。女人禁制の学園の理事長が女性だなんて、あり得っこないはずだもの
それに何より助かったのは、この方の声や口調がすごく穏やかで心地よくて、心から安心できる雰囲気を作ってくださったこと
それからふたりでいろいろな話をしたわ。といっても話すのはほとんど私。侯爵夫人はもっぱら聞き役に徹してくださった。内容は私の生い立ちから普段の生活とか好きなものとか。出してくださったお茶とお菓子がこれまた美味しくて、もう時間を忘れて話し続けたの
やがて入り口のドアをノックする音が聞こえた
顔を出したのは執事
「奥方様、そろそろ」
「あら、もうこんな時間。ごめんなさいね。ちょっとお話しするだけのつもりだったのに。あまりに楽しくて、ついつい長居してしまったわ」
侯爵夫人が出ていかれて、それほど間を置かず、今度は私が呼ばれた
「ジャン=ポール様、こちらへ」
さあ、今度こそ本番。執事に案内されて、私は理事長が待つ部屋へ