離布 -hana-gire-
貴方が飛び立ったように
私も夜に背中を預けた
貴方が溶けていった景色に
私の吐いた息も溶けた
難しいこと全部ここに置いて
飲み込んだ涙は温かかった
世界に散らばるQ&A
ハテナを集めて今何時
『はい』 と 『いいえ』の間に挟まる
灰の遺影とグラデーション
果ての果ての 縦と横
疑問を繋いで機織った
出来上がり図も見ないまま
手当たり次第に糸をとる
縺れた凸凹すらも
いとおしくて
頑なに閉じた目も
拙く通した意地も
かすかに残るささくれも
全部全部包んだ
深い藍のクロス
貴方が書きなぐったように
私も音を紡いだ
貴方が泣いていた物語に
私の凪いだ心は欠けた
難しい言葉 レンズで焼いて
虫食いの本を抱いて眠った
無意識に散らかる有限の生
あてなど無いと言い捨てて
哀 と 輪廻の歯車に絡まる
深い後悔シミュレーション
行けと止まれの盾と矛
お手手繋いで旗持った
吹き抜けた風
翻る布
両手で押さえて目を瞑る
さらわれた髪
不恰好に背に戻り
熱奪われたうなじに
顔をしかめた
離した手は
寂しさを掴んだ
何も何も見ないまま
手当たり次第に糸をとる
ほつれた出来事すべて
息苦しくて
傍らに落ちたメモ
儚く遠い旅路の
僅か聞こえる衣擦れ音
拾い集め進んだ
不甲斐ないアポストロフ
途切れ途切れ
焼き切れた物語を片手に
夜を背にして歩く
撫でた表紙の凸凹が
指先を慰めた
飲み込んだ涙に良く似たそれは
藍に滲んで温かった
リハビリ