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『ド田舎』を中二変換すると『世界の果て』って言うらしいっすよ



「危険を少しでも感じたら逃げる。作戦は以上である」

 僕はきっぱりとポンさんとムーさん、ポンさんのお子さんのワイに作戦内容を伝えた。


「はぁ?」

 ポンさんが呆れた顔をしていた。


「うん」

 ムーさんはいつもの無表情であった。


「理解した」

 ワイはダンディーな声で返答した。


「ポンさん。緊張感が足りないね。

 確かにワイは強いかもしれない。

 しかしこの世界の脅威を舐めたらいけない。

 慢心も油断も絶対にしてはいけないんだ。

 命あっての物種。

 これは遠足じゃないんだ。

 僕が言い出した事だから、みんなに安全確認をしておいて欲しい。

 これは冒険。

 この世界にはどんな危険があるかわからない。

 とても恐ろしい魔物や魔獣の大群。

 領空侵犯を許さない恐るべき戦術兵器。

 武器を持つ戦士や冒険者達。

 凶悪で冷酷無比な犯罪者集団。

 そんな危険に我々は今、挑もうとしているんだ。

 気を引き締めなければ、即お陀仏だ。

 お陀仏っていうのは死ぬって意味ね

 」


「そんなものはいない。一息で終わりだ。一瞬で片が付く」

 ポンさんは肩をすくめた。


 はぁ~。

 この期に及んで強者気どり。

 ポンさんは強いかもしれない。

 それは亜人としての力を過信している。

 確かに巨漢の漢1人ぐらいなら倒せるだろう。

 それが3人、4人となれば別だ。

 そんな奴らが武器を持って一斉に掛かってきたら負けてしまうだろう。

 ポンさんは女性。

 だからこそ僕は真剣に話をしてるんだ。

 一切、これっぽちも、今回は中二病要素を入れてない。

 これは演技じゃないんだ。

 真面目と書いて本気、マジのガチだ。

 ホントに筋金入りの中二病って奴は仕方がない。


「ムーさんはこんなに素直……って、ムーさん何してるの?」


「私は眷属が居ないから。少しお昼寝セットを」

 ムーさんは巨大な荷物の中から枕を取り出していた。


「なにやってるの!? 僕は真剣なんだ」


「ごめん。よくわからない」

 ムーさんは漆黒の瞳で僕を見つめた。


 よくわからないのはこっちだ。

 なんだよ。

 みんな緊張感がない。


 頭が痛くなってきた。

 頭痛だ。調子を崩されながらも。

「じゃあ。行こう」

 と出発の音頭を取った。


 

 僕は他の子達に別れを告げず出発した。

 だって基本、街に行くのに反対派しか居ない。

 正直説得するのが面倒だ。

 『私も連れていけ』、なんて言われたら非常にまずい。

 彼女達は絶対に戦闘経験なんてないはずだ。


 ・

 ・

 ・


 眼下に広がるのは山と森。

 ワイの背に乗った僕は、『とりあえず遅めのスピードで頼む』とお願いした。

 上空200メートルぐらいだろうか。

 ここから自由落下したら死だ。

 僕の後ろに居るポンさんがしっかりと掴んでくれている。

 ワイの体に手綱を取り付けている。その手綱をポンさんがしっかりと握っているんだけど。

 これが命綱だ。

 現状取れる完璧なる采配……と思いたい。

 この異世界に安全装置がないのが口惜しい。

 今後の課題だな。

 身体に縄でも括り付けたかったが、万が一トップスピードなんか出されて首に縄が絡まったら。

 それも死。


 なので僕はポンさんに命を預けた。信頼してるよ。

「あの……さっきも言ったけど落ちないように。よ、よろしくね。ポンさん」


「うむ。案ずるな。お前が落ちる事はありえん」


「う、うん」


 確かに風当たりも予想より強くない。

 気温も地上と変わらない。

 なんでだ? ま、いっか。


 ・

 ・

 ・


 ワイの背中に乗って小一時間経った。

 小腹が空いたので、バッグの中に忍ばせた干し肉を齧りながら辺りを見渡した。

 空中飛行に慣れてきて僕は少し余裕が生まれていた。


「街が全然ないね」


 そうなのだ。見渡せど見渡せど、山、山、山。

 眼下に広がるのは鬱蒼と生い茂る森。

 地上は緑、天は青、視線の先には山脈の数々。

 手抜きしたコピペ風景が連なっていた。


「それはそうだろう。我々の住む領域は世界の果てだ」


「へぇ……」

 

 スーパード田舎なのは知っていた。

 薄々そんな気がした。

 ていうかわかってたよ。一年経っても人間を見かけなかった。

 もしかしたら森の中にお宅のある先住民の方々はいるのかもしれないけど、遭遇出来ないぐらいに秘境なのは知ってたよ。

 

 にしてもだ。

 ド田舎の事を世界の果てとは、中々ワードセンスがあるじゃないかポンさん。


 しょうがない。暇だし乗ってやるか。中二プレイに。

 ポンさんはたまにワードセンスが光るのだ。そんな彼女がキラーパスをくれたんだ。雑談がしたいのだろう。


「世界の果てから遂に僕らは羽ばたくんだ。この世界の在り方を見極めてからでも遅くはない。そう思わないかい」

 自分でも何を言ってるのかわからないけど、かっこいい風に言ってみる。 

 

 

 ポンさんは眉をひそめると。

「在り方を見極めるだと? ……なるほどな。お前の言わんとしてる意味がわかったような気がするよ。故に外に行きたいと言っていたのか。この世界が(まこと)に価値があるのか否かを」

 

「うむ。世界の真価を見極めるのさ」


 面白可笑しい……と思われる世界を観光したいんだ。

 もしヤバそうなら逃げますよ。引きこもって農耕生活しますよ。

 そんな心の声は出さないでいると。


「恐ろしい事を考えるのものだ」

 ポンさんは神妙な顔をしていた。

 

 中々いい演技じゃないか。

 僕も目を細め、真面目な顔を作るとしようか。

 

 僕の心を、

平定(へいてい)させにいくか」

 意味は知らないけど。

 かっこいい単語を思いついたので言いたくなった。


「なるほどな……この混沌とした世界を目を背けず我々に直視しろ、という事だな」


 僕はフッと笑い、邪悪な笑みを努めて作ってみる。

 暗黒微笑だ。

「そうだね。その通りだよ」

 引きこもり生活が長すぎると色々弊害が出るしね。


「いいだろう。人も神も魔も我々の天秤に掛ける機会を作ろうではないか」


 全く後半言ってる意味がわからなかったが。

「正解」

 何が正解なのかわからないが、とりあえず肯定しておいた。

 よくわからなくなったら肯定しておけばいいのだ。


「ん? 見て! あれは。海だ!」

 突然生い茂る森林群の先に、大海原を垣間見て僕は思わず声を上げた。


「チェリー湖」

 隣に座るムーさんは僕の言葉に、そう一言返答した。


 湖? 海じゃなくて? 対岸が全く見えないけど……

「今日はあそこをキャンプ地とする!」

 僕はみんなにそう宣言した。

 今日は海鮮バーベキューだ!





ありがたい事に感想を頂いたので、少しずつでも更新していきます。

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