表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

僕はドラゴン総司令官という設定でやらせて頂いてる。



「進軍を開始せよ!」

 玉座? に座る僕は、なんかかっこよさげに宣言した。

 とりあえず、こう言っておけばよいのだ。

 作戦? 

 んなもんないよ。

 だってこれは、単なるそういうポーズを取る事を皆に期待されてるからやってるだけだ。


「ハッ」

 赤毛で大きな角、トカゲのような尻尾の生えたメイドが跪いて意気軒昂に鷹揚に頷く。

 彼女は立ち上がり、振り返ると後ろに控えている6人のメイドに向かって。

「殲滅を開始せよ!」


「かしこまり」


「あいあいさー」


「委細承知!」


「直ちにぃ」


「皆殺しだぁ!」


「デストロイタイムですの」


 皆それぞれ角とトカゲの尻尾が生えている。

 彼女達はそれぞれ容姿が異なっている。

 高貴そうな奴、ギャル、武人みたいな奴、お色気お姉さん、幼女、お転婆。

 毛色が違いすぎてなんで彼女達は友人関係になっているのか不明だ。


 彼女たちはこの世界の最高戦力。

 

 ―――ドラゴン――――


 と、自分の事を思い込んでる可哀そうな娘達だ。

 


 僕はとても優しい男。

 なんなら中二病であるという自覚もある。

 この世界で最初に出来た可哀そうな脳みそを持った彼女達と中二病ごっこをしてるだけ。

 僕は単に玉座に座る総司令役。

 

 僕は、1人+7人のメイドで構成された弱小サークルを『円卓ラウンズ』というサークル名にした。

 

 恐る恐る僕が提案したその名称。

 みんな否定的意見を出さずに素直に受け入れてくれた。

 そこの点は感謝してる。

 中二病乙!

 と嘲笑されながら否定されたら恥ずかしくて心にダメージを負うだろうから。

 

 円卓。 


 みんな大好き円卓である。

 アーサー王伝説の円卓。

 中二病御用達だ。

 とはいっても。

 8人しかいないから零細企業みたいなもんだ。

 

「では、近隣の魔族を打ち滅ぼしてくる」

 ラウンズのリーダー役である赤い綺麗な髪をした彼女。【テュポーン】と僕が名付けた、通称ポンさん。

 とりあえず僕の知ってるドラゴンの名前を片っ端から名付けた最初の友人だ。

 彼女は聡明そうな顔をしてる美人だが、大真面目に中二病のおままごとに付き合ってくれるいい人である。

「征士郎。行って参る」


「うむ。よろしくね」

 今日は魔族を打ち滅ぼす設定らしい。

 

「では全員行くぞ!」

 ポンさんは全員にそう宣言すると部屋から出て行った。

 

 ・

 ・

 ・

 

 僕は全員が居なくなる気配を感じ取ると。

「よし。農作業でも開始するか」

 玉座から降り、独り言を呟いた。


 

 僕はクワを持って畑を耕した。

 そしてこの世界の日光を浴びながら。

「ここで暮らし始めて、ちょうど一年ぐらいか」


 ――――


 事の経緯は1年ほど前に遡るのだ。

 僕は異世界に飛ばされた。

 なぜ飛ばされたのか。

 

 最後に覚えているのは、会社からの帰路についていた所だ。

 凄く疲れていてフラフラだった。

 残業に次ぐ残業。

 記憶が朦朧としていて、信号を渡っていたとこだったと思う。

 そこから記憶がない。

 

 気づいたら。

 山奥で目が醒めた。

 そしてポンさんと出会ったのだ。

 マジで事の経緯はこれだけ。

 

 第一村人であったポンさんと適当に会話をした。

 彼女はその時ひどく驚いていたのだが。


『人間がなぜ私と会話できる!?』とか言っていた。

 いや、がっつり日本語じゃん。

 とはツッコまなかった。

 

 その時はここが日本だと思っていたから。

 あの時から中二病の素質は感じ取っていた。

 僕も学生だった時、同じ事をクラスメイトに言った事がある。 


 とりあえず、困ってる。

 最寄りの交番を教えてくれ。

 と頼んだが意味不明だと言われたのだ。

 そして幾ばくかの時間を過ごし、ここが現代日本ではないと判明。

 

 そんだけ。 

 

 ポンさんは、その時名前がなく、とりあえず不便なのであだ名をつけた。

 だって自分の事を『ドラゴンだ』と意味不明な事を言っていたから。

 『じゃあ、ドラゴンに変身してみせてよ』

 と言ってみても、『なぜだ……お前の前ではできない!?』と茶番を見せつけられた。


 あの時。


 僕は、この人本物だな。と思った。

 本当に自分の事をドラゴンと思っている。

 そんな設定で役を演じ続けてる変わった人なんだなと思った。

 マジもんの中二病だと思った。

 

 ポンさんは野宿生活をされていたようなので、ポンさんが勝手に縄張りにしてる場所に住まわして貰っている。 


 そしていつの間にかポンさんの友人とも友人になり山奥で中二病生活をしている。

 そんな経緯である。

 

 ―――

 

「そろそろ街に行ってみたいんだよなぁ」

 ここは秘境、魔境という設定らしく人間の住む街が歩いて行ける距離にないとの事。

「ここでの生活には不満はないけどさぁ」

 第一は生存が目標であるが、異世界に来たなら観光をしたいなぁ。と思い始めた。

「危険なのはわかってるけど」

 ポンさん曰く、外の世界には行かない方がいいと言っていた。

 

 きっと危険な世界なのだろう。

 冒険者なる狩りを専門にしてる中二病な職業があるらしい。

 この弱肉強食の異世界。

 僕は一般人の雑魚。

 異世界転移モノや異世界転生モノだったら、冒険だの魔王を倒すだの精力的に動くのだろうが。


「そんなのはまっぴらごめんだ」


 とりあえず最優先で生き残る事を考える。

 それでも1年も生き残れてるんだ、ほんの少し街に行ってみたい。

 物陰からでもいいから、こそッと確認してみたい。


「一体どんな世界なんだろう」


 ポンさん曰く、恐らく僕は『この世界の人間と言語が通じないかもしれない』と言っていたのだ。


 勘弁してくれよ。


 毎回英語は5段階評価中3ぐらいの成績だった。

 日常会話なんてできない。

 ターゲットとかシスタンとか日本語で解説のある英単語帳で必死に中高大と英語の勉強をした。

 それでも、英語の一つもマスターできなかった人間だ。

 この世界の人間とコミュニケーションを取る事など一生掛かっても不可能かもしれない。


「異世界言語の壁問題」

 あるんだよなぁ。

 懸念してた問題。

 ポンさんは、『私達と喋れるのはかなり特殊な事』とは言ってたけど。

 じゃあ、日本語の通じる国を教えてくれ。

 そこに行ってみたいよ。

「うん。今度頼んでみよう」

 そうしよう。



思いつきで書き始めたので不定期更新です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ